さて、キジシロッティが夜なべをして拵えたゾンビビス弁当(中身は日の丸弁当に、あの黒くて生臭い液体をぶっかけただけのもの)であったが、これをいきなり渡して「食ってくれ!」ってのは、無理だろうというのは、鳥類の3歩進んですべてを忘れる脳味噌でもよく理解できた。
「そう。まずは仲良くなる必要があるわよね」
キジシロッティは、ドドリアッティとザボボンッティの、鼻紙よりも使い捨てて惜しくない手下2体を見やる。
「コリッティを始末するわ。そのために泥を被ってくれる人を探してるの」
キジシロッティがそう言うが、2体は首を横に振る。
「法を犯すマネは…ザマス」
「ねぇ…なのね」
貴様らの顔がすでに法律違反だとキジシロッティは思ったが、そもそも知性のカケラもなさそうな鳥類に任せられるわけがない。ダチョウなんて自分の家族すら記憶できないくらいだ(毎朝、ドドリアッティには自己紹介から始まる)。
「仕方ない。アタシがやるしかないわね。いい。こういうものには作戦や段取りといったものが必要なのよ。アタシの言う通りに動きなさい。『フレディ計画』実行よ!!」
★★★
「さあ! ジャンプしてみるザンス!」
「ひぃぃ…」
「はやくするのね!」
「あひぃぃ…」
まるでヒールレスラーのような化粧と衣装をしたドドリアッティとザボボンッティに凄まれ、コリッティは半泣きで縮こまる。
なにをやってるのかと問われれば、賢明なる読者諸君はすでにお気づきであろうが、昭和の風物詩、カツアゲであーーる!!
「さあさあさあ! 早くするザンス! できないのなら、させてやるザンス!」
「了解なのよ!」
「や、やめてぇ!!」
両者はコリッティの股ぐらに腕を入れて、脚を支えながら肩に担ぎ、高く持ち上げる!
これはそのまま後頭部を床に叩きつけるという、ツープラトン・パワーボムの体勢だ!
畜生は話が通じないくせに、誰かに危害を加える時には、抜群のコミュニケーション能力を発揮するのであーる!
「「タヒにさらせぇ!!」」
「誰がそこまでやれって言ったのよ!!」
助走をつけて走ってきたキジシロッティのドロップキックが、ドドリアッティとザボボンッティの後頭部に炸裂する!!
スタッと綺麗に着地を決め、落ちてくるコリッティを華麗に抱きとめる。
確かに本当はこのままコンクリ打ちっぱなしの床に叩きつけてやりたいところだったが、ここは計画がなによりも優先させられるのだ。
「大丈夫?」
キジシロッティはコリッティを床におろすが、腰が抜けてしまっているらしくその場にペタンと座り込んでしまった。
「あ、ありがとうございます。貴女様は命の恩人ですぅ」
涙目に感謝を口にするコリッティ。
所詮は彼女も畜生なので、この一連の出来事を行った黒幕がキジシロッティ本人なのだとは露程も思わないのであーーった!
(よしよし。計画成功ね)
ほくそ笑むキジシロッティは、まさに悪役令嬢そのものだった。
「あの2体はこの学園の平和を乱す極悪非道で有名な不良令嬢なのよ」
ドドリアッティとザボボンッティの尻を蹴り、キジシロッティはそんなことをのたまう。
2体は「そりゃないよ〜」と言う場面だろうが、幸いなことに気絶していて夢の世界だった。
「そ、そうだったんですか…。いきなり『拝観料払え』なんて絡んできて怖かったんですぅ」
コリッティのブリブリブリっ娘ぶりに、キジシロッティは強い動悸、息切れ、嘔気、目眩を覚える。
「まあコイツらは見た目通り、濃いめマシマシでシツコイから……こうやって守ってあげられる人が必要よ!」
「そ、そうですね……。でも私にはそんな強い味方は…」
キジシロッティは自分を親指で示す。眉毛が太くなり、顎が角張った昭和劇画タッチで今にも「オレがいるやろがい!」と言いそうなアネゴ雰囲気を醸し出していた!
「え?」
「ここで会ったのも何かのゴッデム縁よ。アンタのフレンディになってあげるわ」
「フレンディ……マーキュリー?」
「どこの超有名世界的なボーカリストよ!? ……ともかく! アタシはキジシロッティ。アンタは?」
キジシロッティは手を差し出す。
「こ、コリッティですぅ…///」
赤面するコリッティは、キジシロッティの手を握り返したのであーーった!!
こうしてキジシロッティの目論見通り、『フレンディ計画』は相成ったのであーーる!!!