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雉四郎編08 水洗の魔女

 前回、キジシロッティは無事にコリッティの心を鷲掴みに成功してフレンディとなったのであーーった!


 しかし、万事順調に思われた時にこそ、罠っていうのはピョッコリハンと生じるもの!!


(この弁当をどうやって食べさせればいいのかしら…)


 悲劇! まさに悲劇!! まさしく悲劇!!!


 そうである!


 キジシロッティが丹精込めて作り上げた弁当であるが、例のゾンビビス・エキスなんちゅうヤベー代物を混ぜ込んでしまったがゆえ、湿度の高い真夏の蒸し風呂状態のポリバケツに溜まった生ゴミの汁と、発酵食品を食いまくって出た排泄物に、ビールと焼酎のチャンポンと〆にニンニクマシマシラーメンと餃子をしこたま食ったオッサンの吐瀉物を合わせて三乗したような、シュールストレミングを超えるようなとんでもない異臭破壊兵器と化していたのであーーる!


 ましてやコリッティは元犬畜生だ。嗅覚だけはすこぶる良すぎる。弁当を出した瞬間、その中に入っているヤベェー具合に気づいて食わないに違いない!


「どうしたの? キジシロッティ様?」


 授業中だというのに、コリッティは小首を傾げて話しかけてくる。


 ご都合主義よろしく同じクラスだったのだ!


 授業中なのにこんなことができるのは、畜生には学業なんていらないからだ!


 ならなんで学園に来るんだと疑問に思われるかもしれないが、そもそも学園系の物語で、まともに授業風景がでてくるようなものがあった試しなんてあるまい!


 なんか冒頭に教師が難しそうな数式書いてみたり、英文をこれみよがしにそらんじてみたりしているが、いかにもやってます風なのはとってもよくないと思う!


 かといってそんなのを真面目にやったら誰も読まない。退屈だからだ!


 しかーし、我々が学生だった頃合い、1日に何時間も座って授業を受け、学園物にありがちなウフフ、アハハみたいな青酸っぱい経験などほんの数コンマ秒の出来事であーーる!!


 ましてや、こんな小説を読んでいる諸兄らは陰キャに違いないが故に、きっとフォークダンスで、好きな女の子の手に触れるか触れないか程度のつまらない青春しか送っていないであろうことは想像に難くない!


 ですけれども! そんな思いを抱きつつも、先に進まねばならないのが、小説の悲しいところよね。


 ということで、作者の独白はここらへんで割愛させていただく!!


(とりあえずは、まずは話題作りからよね)


 畜生の鳥類らしく、小さな脳味噌をフル回転させてキジシロッティはそう結論づけた。


「う、うぬは好きな人とかいるの?」


 なにがどうなって、世紀末覇者みたいな口調でそんなことを問うのか。


「好きな人…もちろんいますわ」


「そ、それは…」


「もちろん、イヌジロッティ様…」


 ギリリィと歯茎から血が噴き出す。


「キジシロッティ様?」


「な、なんでもないわ。急性歯槽膿漏になっただけよ!」


「そうですか。急性なら仕方ありませんよね」


 そんなわけないだろうという読者の総ツッコミをスルーしつつ、コリッティはレースのハンケチを差し出す。


「ありが……ん!」


 キジシロッティのサクランボの種より小さい脳味噌に電流が走る!


 そうだ! このハンケチのお礼に弁当差し出せば食うんじゃね? 


 ……と、そんなことねぇーだろうと普通ならば考えつくのだが、そこら辺は畜生の為せる業であーーる!!


「ねぇ、コリッティ」


「なぁに?」


「早弁しない?」


「しませんわ。お嬢様ですもの」


 お嬢様じゃなくてもしねぇよと思わなくもないのだが!


「でも、お嬢様でもお腹はすくでしょう?」


「それはそうですわね」


「腹が減っては恋愛はできぬと言うわよ。だから早弁という制度ができたの」


「そうでしたの」


 嘘八百を並べ立てて、キジシロッティは心の中でほくそ笑む。


「ちょうど、アナタの分もあるのよ!」


 キジシロッティはセカンドバッグから、例の危険な弁当を取り出す!


 んでもって、蓋を開けた!


 ぶっちゃけ開けたってより、なんかヘンテコなガスが溜まりに溜まって、容器が膨張してすでに溢れ出てしまっていた!


 包んでいたランチョンマットがドドメ色に染まっている! つまり液漏れしてるのだ!!


 それはまさに開けてはならぬと言われていたパンドラの箱の如く!!


 プゥ〜ィ〜ン! と、漂う地獄からの臭いが漂うッ!


「「「ウッ!!」」」


 クラスメイトたちが思わず顔を背け、さしものお嬢様中のお嬢様たるコリッティも青い顔をする。


(もう、腐ってるってレベルじゃねーぞ、オイ!)


 キジシロッティは吐き気を催しつつランチョンマットを開く!


 そんなことをすればどうなるか! 賢明なる読者諸君ならばもうお気づきだろう!


 そう!


 臭いが拡がるのだ!!


 拡散するのであーーる!!


 例えるならば、へべれけになった脂ギッシュなオッサンが顔面を近づけてきて、「なんか気持ち悪りぃぞ」って言いつつ、眼の前で嘔吐さるる様な圧倒的不快感!!


 ……不愉快!


 不愉快ここに極まれり!!


「そ、そんなもの水洗便所に流してこい!」


「呪いでもかけるつもりか! 魔女め! フレンディ・マーキュリーの魔女め!」


 まあここでようやくサブタイトルの回収が成されたわけであーーる! 作者もひと安心!


 しかーし! もちろん、キジシロッティはそんな野次に耳を貸すわけがない! なぜなら畜生であるが故に!!


「さ、さあ、食べ…」


「危なーい!!」


「あれま!」


 玉杓子ですくって、泥沼から生み出されたようなリゾットを口の中に注ぎ込んでやろうと試みたキジシロッティであったが、なぜかトチ狂ったかのようなコリッティの張り手を受けて、暗黒物質をすくいあげた玉杓子は弧を描くように、クラス中にゾンビビス・エキス・リゾットを撒き散らしたのであーーった!!


「なにすんのよ!」


「いけません! キジシロッティ様! あのようなキング・オブ・汚物を口にいれるなど淑女の嗜みではありません!」


 淑女が力士ばりの張り手をぶちかますかとキジシロッティは疑問に思いはしたが、どうにもこうにも彼女は自分を助けたい一心でやろうとしたことらしい。


 ってか、コリッティに食べさせようとしたのにそこら辺に気づいていないのはお嬢様故か畜生故なのかは読者の想像にお委ねしたい!


「あ、アンタ…」


「キジシロッティ様♡」


 見つめ合う雌雉と雌犬……誰得な展開だが、昨今は百合展開が持て囃されていると聞き、敢えてそんな描写を加えてみる!


「「「ウ、ウウウウッ!」」」


「は!?」「なにごと!?」


 しかし問屋はそうは卸さない! 


 そう! 先程バラ撒かれたゾンビビス入りリゾットは、これまたそんなことあるかい的なご都合主義よろしく、キジシロッティとコリッティを除くすべてのクラスメイトの口腔内へと放り込まれていたのであーーった!


 ここまでは賢明なる読者様の予測通り! お嬢様的テンプレでまっこと申し訳なーい!


 つまり従って、キジシロッティとコリッティはゾンビビスと化したクラスメイトに囲まれて大ピンチとなったのであーーった!!


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