◇
看護師の資格を持ち、秋田県にある
そこで巫女でもしているのかと尋ねると、神社の娘イコール巫女なんて方程式は今すぐ頭から消せと叱られた。聞いただけだろ。
そもそも神霊庁の職員の形態すら知らないのだが、聞けば晴太は東北支部正職員、そして沖田は特別注視職員とまた不名誉な肩書を付けられている。
祈曰く、神霊庁の登録名簿にはあの忌み名で登録されているらしく、沖田は首を後ろに勢いよく倒して絶叫した。
「なんで沖田じゃないんだよ!」
「あら、私は沖田って名前は一度も聞いてないわよ?」
「沖田洋! アタシは沖田なんだよ! あの邪神のせいで免許証も保険証も全部の名前変わってんだぞ! この呪いやめろ、マジ!」
祈は呪いの事を詳しく聞いていないのか、何言ってんだコイツと言いたそうに引いている。
晴太が説明しようかと耳打ちして来たが、どうせ説明したところでこちらが厨二病だなんだと引かれて終わりだ。
恐らく祈は一般的な感覚の持ち主だろう。
「しかし呪われてるのに随分元気ね。普通ならもっと落ち込んだりするものじゃない?」
「一応忠告しておくが、沖田が泣くと地震が起きるぞ」
「そうそう。洋の呪いは複雑だからね。それに洋は運命は否定しない主義みたいだし」
「そんなことありえる?」
祈は半信半疑、目を細めて沖田を見る。沖田は包帯の中が痒いと壁に体を擦り付けて、いつの間にか話から抜けていた。
俺と晴太には超マイペースな沖田は当たり前なのだが、祈には得体のしれない宇宙人のように見えるらしい。
アレの世話をするのかと思うと頭が痛いと、額を右手で押さえながら皮椅子に寄りかかった。
「言っておくけどなぁ、アタシはアンタの世話になんかならないかんな! 自分のことは自分で出来るんだ! 誰かも知らないヤツの助けなんかいらないんだよ!」
出来てないけど、と俺と晴太がツッコむ。沖田は余計な事言うなと表情で訴えてきたが、嘘はつけない。
飯だって放っておけば、コンビニ飯だお菓子だと不摂生極まりない食生活を送る。
おまけに風呂に入るのはいいが超がつくほど長風呂で、声がけしなければ湯船で寝ているんだから危なっかしい。
そんな奴のどこが自立出来てるって言うんだ。寝言は寝て言え。
「まぁいいわ。今日から住み込みでお世話させてもらうから。それが私の仕事、いい?」
祈は呆れっぱなしで嫌々仕事をさせられていると言った様子だ。何か金が必要な理由があるから短期職員なのかもしれないが、沖田が喚いても祈は仕事をするだけだと突っぱねるだけ。
嫌々いいながらもしっかり手当を受け直されている姿は滑稽だった。
体の痛みはなんとかしてもらいたい、それが本音だろう。
例え祈が初対面の他人でも、医療知識のある神霊庁の職員で沖田と同性ならば俺達としても心強い。
別に沖田の世話が負担とは言わない。しかし、大学、アルバイト、沖田の世話となれば体にもいつか限界が来る。頼れる人間がいるだけでだいぶ違うのだが、沖田の他人への興味の無さと言ったら病的だ。
「土方! この秋田人なんとかしろ!」
「何動いてんのよ! 傷口に塩塗るわよ!」
まあ、目の前の人間をコイツの呼ばわりしないだけまだマシか。
きっとそれは、祈が「