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#4

 Connect ONE本部。

 新生長官が一人で笑顔を浮かべていた。


「ふ、ふふふ……」


 その様子を不審に思った時止主任は親友に問う。


「どうした継一……?」


 すると新生長官は振り向いて告げた。


「ようやく先に進んだ」


 笑顔でそう言う新生長官。

 何の意図があるのだろうか。


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 一方で変身を解いた快は愛里と共にロン本体の所へ向かった。

 すると獣医が悲しそうな表情をしている。


「ロン……」


 見せられたロンの体は既に冷たくなっておりこれ以上動く事はなかった。

 愛里は優しくその頭を撫でる。


「ありがとね、大好きだよ」


 そう伝えて愛犬を見送った。

 前に進む事を決意したのだ。


「(俺からもありがとう)」


 快も後ろでロンに感謝を想うのであった。

 ・

 ・

 ・

 目に見えない罪獣が消えて街の憂鬱な空気はすっかり無くなった。

 いや、罪獣ではなく愛里が希望を取り戻したからだろう。


「ただいま……」


 その足で愛里は快と共に自宅へ戻った。

 すると両親が涙ながらに迎えてくれたのだ。


「パパ、ママ……」


 初めて両親の愛に触れる愛里は二人に抱き締められながら自分からも抱き締め返した。

 その父親の手には愛里が描いた家族絵の切れ端が持たれていた。


「ねぇ、私お兄ちゃんにもっかい会ってくる」


「大丈夫なの?」


「うん、前に進むって決めたから。それに一人じゃない」


 そう言って両親に快を紹介する。

 快は少し照れくさそうにしながら改めて愛里の恋人だと挨拶した。

 ・

 ・

 ・

 そして愛里は快と二人で兄の入院する病院へやってきた。

 係りの者に案内され面会室へと向かう。


「大丈夫?」


「うん、もう怖くない」


 そして兄がやってきた。

 しかし愛里を見るや否やトラウマを思い出したようで。


「うぅっ、火ぃ点けた!!」


 パニックを起こしてしまう。

 しかし前回と違い愛里は冷静だった。


「お兄ちゃん、ごめんなさい」


 謝る言葉を聞いた兄は一瞬動きを止める。

 そのまま愛里は想いを伝えた。


「パパとママを独り占めしてるお兄ちゃんが羨ましかった、でもお兄ちゃんは悪くないもんね。私が愛に気付けなかったんだ」


 そしてしばらくの沈黙の後、兄は少し落ち着いたがまだ完全にパニックが収まった訳ではないようだ。


「うぅっ!ううぅ……!!」


 これ以上の面会は良くないと判断した医師によって戻される兄。

 その姿を最後まで見つめる愛里の後ろ姿に快は声をかけた。


「これで良かった……?」


 そして愛里は振り向いて少し寂しそうな笑顔を見せた。


「うん、言いたい事は言えたから」


 そのまま二人は病院を後にした。


 ___________________________________________


 病院で兄との面会を終えた愛里と快。

 帰るために外でバスを待っていた。

 今回の出来事で感じた事をお互いに伝えて行く。


「ごめんね、わざわざ付き合ってもらっちゃって」


「良いよ、お互い様って言ったじゃん」


 二人の心は以前より晴れていた。

 ほんの少しだけでも先に進む道が見えたのだから。


「俺たち二人ともまだまだ未熟だから二人三脚で進んで行かないと」


「うん……」


「そうすればお互いにとって最高のヒーローになれるはず!」


 力強く宣言する快。

 しかし愛里には新たな悩みが浮かんでいた。


「ねぇ、快くんの事……内緒にした方がいいよね?」


 愛里は今回の事で快がゼノメサイアであると理解した。

 それによりまた新たな悩みが生まれたのだ。


「うん、そうしてくれると有り難い」


 明るい未来を見つめるような快の瞳とは違い、愛里の瞳は過去を見つめているかのようだった。


「ヒーローとして戦うんだね……」


「うん、それが俺に出来る事なら」


 英美に言われた出来る事を見つけた快。

 そのために意気込んでいるが愛里は何か言いたそうにしていた。


「ねぇ快くん……!」


 そして快の名を呼び止めた。

 その時だった。


「ん……?」


 突然二人の目の前に大型の車両が止まったのだった。

 車体にはConnect ONEと書かれている。


「え、何……⁈」


 するとその車両から黒い軍服を着た男たちが四人ほど現れ快の腕を掴む。


「な、何ですか⁈」


 訳が分からず驚く快を他所に男の中の一人が無線機を使いどこかと連絡を取る。


「ゼノメサイア被疑者、確保完了しました」


 そのように報告すると快を車両に無理やり乗せて拉致するような形で走り去って行った。


「えっ、ちょ……!!」


 その場に取り残された愛里。

 何が起きたのか整理が出来ずしばらく立ち尽くしていた。


「う、そ……」


 時間が経過するにつれ何が起きたのか徐々に理解して行く。

 快が組織に拉致されてしまったのだ。


「快くんっ!!!」


 空虚なら叫びが辺り一帯に響いた。






 つづく

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