新生が捕まってすぐ今後の会議が開かれた。
現Connect ONEトップの二人と自衛隊のトップが集まるそこにはTWELVEと快の姿もあった。
「主な結論は"新生から残る仲間の情報を聞きつつ捜索に当たり罪獣など巨大生物が出現した際はいつも通り対応"との事で」
その会議を終えた後、TWELVE隊員と快は廊下を歩いていた。
「結局いつもと変わんねーな」
「でも敵がどんなヤツか分からないから用心しないと」
竜司と陽がそのようなやり取りをしているがどこか精神的に無理をしているように見える。
現に他の隊員たちは顔が下がってしまっている。
「ん……?」
すると目の前に時止主任が現れた。
そこで瀬川はある事を思い付く。
「時止さん、快の事なんですけど」
「ん、どうした?」
「いつもと変わらない配備になるなら快を一度帰してやっても良いんじゃないですか?このままずっと待機させるのも癪でしょ?」
快が帰れるように頼んだのだ。
「確かにそうだな、快くんも生活があるんだし」
そして許可を得た瀬川は快の肩を叩いた。
「なぁ快、帰って学校行ったりみう姉のサポートしてやれよ。そうだ、みう姉の仕事の問題あるからバイトでも探したらどうだ?」
「……いいの?」
「もちろんだよ、細かい事は俺らがやっとくからお前は緊急時に無線に出てくれれば良い!」
「ありがとう」
そして快は一度家に帰り学校へ向かう事を決めるのだった。
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『XenoMessiaN-ゼノメサイアN-』
第33界 ヒトノママ
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朝、快は目覚ましが鳴った瞬間に起きてアラームを止めた。
久々に学校に行くのだ、緊張はするがあれからどんな風に学校が変わっているか気になるのだ。
何より愛里に会いたい、その気持ちで快は支度をしアパートを後にした。
少し雪が積もった道で白い息を吐きながら小走りする。
駅の方に向かうと街全体の様子が少し見えてきた。
電車から見える街は既に復興を始め希望の兆しを見せている。
それが快にとっては街だけでなく人の心にもあるように感じたのだ。
そしてある駅で止まると彼女が乗り込んでくる。
「あ……」
それは愛里だった。
快の顔を見た瞬間、少し複雑そうな表情を浮かべるがすぐに明るく振舞った。
「おはよう、学校きて大丈夫なの?」
挨拶をしてくれるが快は咲希の事もあり少し複雑だった。
緊張していた理由の一つだ。
「おはよう、愛里も大丈夫……?」
そう問われた愛里はすぐに快が咲希の事で心配していると分かった。
「さっちゃんの事ね、確かにビックリしたけど快くんが赦したんでしょ……?」
この間学校で山口に言った事を踏まえた発言をしてくれた。
その事に快は少し喜びを感じる。
「うん、俺に出来る事をした。河島さんも自分に出来る事をするって」
「そう……」
その話を聞いた愛里は少し肩を震わせながらもすぐに笑顔を作った。
「なら良かった……っ!」
そして少し無理をしながらも電車が学校の最寄り駅に着いた途端に快の腕を引き外へ出たのだ。
「ホラ学校いこ!見せたいものがあるの!」
「見せたいもの?」
そう言われた快は不思議に思いながらも愛里が少しずつ元気になっていく姿に胸打たれていた。
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学校に着くと愛里はすぐに快を体育館に案内した。
そこで広がっていた光景を目にした快は驚き目を見開いた。
「えっ、何で……」
そこには良を始めとする障害を抱えた方々を支援している学校の生徒数名と教師の姿があった。
何故だろうか、支援は一度打ち切られ障害者たちも追い出されたと言うのに。
「快くんのお陰だよ、この間の言葉を聞いた人達が先生にお願いしたんだって。ホラ、委員長とか」
愛里がそう言うと快の存在に気付いた委員長がやって来た。
「創、やっと来たか」
「委員長もお願いしてくれたの……?」
快がそう言った事で二人が何を話していたのかを理解した委員長は例の出来事から何があったのか詳しく伝える。
「いやさ、俺も胸糞悪かったから……ちょうど創の言葉に感化されたって人が他にも居たからみんなで先生に言いに行ったんだ」
そう言って委員長は背後の他に手伝っている生徒たちを指差す。
彼らが同じく感化された人々なのだろう。
「でも俺は同じ感化された奴らと一緒になってようやく動き出せた、一人であんなこと言えたお前は凄いよ」
少し照れ臭く感じる快だがまだ心配は残っている。
「いやそんな事は……でも大丈夫なの?またここでデモが起こったりとか心配だけど……」
「え、ニュース見てないのか?」
「あ、最近色々あったし今朝も急いでて見てない……」
すると愛里が嬉しそうにそのニュースの内容を伝えてくれる。
「ようやく復興し始めた政府がデモだったりを厳重に取り締まるんだって。襲撃とか実害を加えた人もしっかり処罰するって」
「本当に?それなら安心できるけど……」
しかし快には新たな不安が生まれた。
それは愛里に関する事。
「愛里のお母さん、逮捕されちゃうのかな……?」
山口の家に報復との形で攻撃をした愛里の母も処罰の対象になってしまうだろう。
愛里はまだまだ辛い事を背負わなければならない。
「仕方ないよ、やっちゃったんだから……でも大事なのは反省する事。お母さんはそれなら出来てるから」
「そっか……」
少し空気が重たくなってしまうが愛里が何とか明るさを取り戻そうとある話題を出す。
「ねぇ、快くんのお姉さんはここの事知ってるの?もし良かったらここで一緒に手伝ってくれないかな?そしたら元気も取り戻せるかも……」
両親を殺害した犯人からの手紙で苦しんでいる美宇。
ここでなら明るさを取り戻せるかも知れない。
「そっか、確かにみう姉もここでなら……!」
そして快はスマホを取り出し姉に電話を掛けた。
「みう姉、聞いてよ……!」
そして姉が来るのを待ったのだ。
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しばらくして学校にやって来た美宇と昌高。
まだ姉の顔は少しゲッソリしている。
元気を取り戻してくれると良いが。
「みう姉、彼らと関わってあげて」
「うん……」
まだ少し元気がない美宇はもどかしそうに良の所へ歩いて行く。
すると良も美宇の存在に気付いた。
「みう姉だ!みてみてー!」
良は早速描いたばかりの絵を美宇に見せていく。
そこには綺麗な街で手を繋ぐ人々が描かれていた。
「うん、上手だね」
そんな事を言っていると近くの別の子供が飲み物を溢してしまった。
美宇は体が勝手に反応して近くのペーパーを取り出す。
「あちゃー、滑るから離れて」
気がつくといつものように皆んなの世話をしていた。
その感覚に忘れていた感情を取り戻していく。
するとそこへ同じ施設で働いていた女性がやって来た。
ここにもボランティアに来ていたらしい。
「創さん、ありがとね」
「あ……」
周囲を見渡すといつもの光景が広がっていた。
支援が必要な大変な人達も理解ある人達に囲まれ幸せを感じられる。
笑顔からそれが事実だと知り美宇の心は少しずつ満たされて行った。
「こっちこそ本当にっ……」
少しずつ涙が溢れて来る。
心配した良たちが駆け寄って来るが美宇は感謝を続けた。
「良かった、やっと笑ってくれた」
快も遠くから愛里とその様子を見ており心が満たされていた。
「じゃあ俺も出来る事やるか」
「何するの?」
「みう姉は今仕事がない、まだ施設とかは完全には復興してないから」
すると昌高は答えた。
「うん、だから今は貯金を少しずつ崩して生活してるよ。もうすぐ国から安定するまで支援貰えるけど……」
「うん、その中から俺の仕送りまでしてもらう訳には行かない」
そして快は決意を固めて口にするのだった。
「俺、バイトするよ。難しいかも知れないけど何とか探してみる」
確かに今の世の中で障害者である快を雇ってくれる所は少ないかも知れない。
しかし出来る事をするのだ、そうすれば道は拓けると学んだのだから。
つづく