目的地には地面が隆起して出来上がったような洞窟が口を開けていた。
これが毎日消えたり現れたりするという。
「はぇ〜すっごい……ほんとに今日できたのこれ?」
「どーいうこと?」
「迷宮って毎日構造も場所も変わるんだって。暮らしててわかんなかった?」
「そーいえばそうかも」
住んでる方はあんまり気にならないのね。
「さ、それじゃあ張り切っていきましょうか!」
「おー!」
洞窟に足を踏み入れる。
その瞬間背後から音がした。
「お、これが封印か」
「え? なに?」
「洞窟に入るとそれ以上誰も入れないように封印がされるんだって。まぁ中の私たちが望めば増援も呼べるみたいだけど」
「そうなの。なんでだろ」
「マルチしたくない人がいるからだとかなんとか……よくわかんないんだけどね」
「……ふぅん」
まぁ私にわかんないんだからリボンにはもっとわかんないか。
「とりあえず進もっか」
「気を付けていこうね」
今回のフィールドは……森だ。
見晴らしは良くないが、木はランダムに設置されているもの以外に壁に敷きつめられているようなものも多い。
これはネストと通路を区別するためのものらしくその向こう側はやはり見えない壁がある。迷いそうで迷わないようになっているのだ。
ひとまずは通路を進み、ネストへと向かう。
「あ……あれ」
早速リボンが何かを見つけたようだ。
「えっ、なになに?」
「あそこ……ツタが見える?」
ネストの入口だろうが、その入ってすぐのところに一本の太いツルが張ってある。
もしかしなくとも私がはじめてのネストで引っかかったリボンのツルと同じものだろう。
「……ってことは、ヴァイン・ヴァインがいる?」
「そうかも……」
「同族と戦うことになると思うんだけど……大丈夫?」
「大丈夫大丈夫! アタシ友達いないし!」
それはそれでかわいそうだけど……。
「じゃあ先制、いくよ。ストレイト・ファイア!」
ツルに向かって炎を飛ばす。それはしっかりとツルに命中し、導火線のように延焼していく。
「さぁ出てくるかな……」
しばらく見守っていると、広がった火がネストを包んでいく。煙の蔓延したネストの中央に、ドスンと何かが落ちてきた。
「か、火事だ! 燃えてる!」
騒ぎながら慌てているのは緑色の肌色のお姉さん……ヴァイン・ヴァインだろう。
「通っていい?」
私が声をかけると、驚いた顔でこちらを見る。
「ちょ、ちょっと! あんたがこれやったの? 信じらんないんだけど!!」
「だって罠多そうだったし……」
「それはそうね。誰も通しはしないわよ」
「じゃあ正解だったわけだ!」
「大人しく捕まってればよかったのよ!」
「そんなわけにいかないでしょ……」
「もう許さないんだから!」
そう言うとヴァイン・ヴァインはツタをこちらに伸ばしてくる。
「させない!」
すると後ろからリボンが飛び出してきてツタをツタで弾いた。
「なっ! あんた、同族じゃないの! 獲物の横取り? ここはアタシのナワバリなんだけど!」
「そんなの知らな〜い! アタシはニャコちゃんのともだちだもん!」
「ともだち……? ははっ! あんた、そんな子をパートナーに選んだの? 選ぶならそんなちっこいのじゃなくて強そうな子を選べばいいのに!」
「ニャコちゃんは強いよ?」
「小狡い炎で勝った気にならないでよ! あんたもまだガキみたいだし、そんなこともわかんないかなぁ」
「なによ!」
「炎に弱いんじゃないの?」
「甘いわねぇあなたも……アタシみたいなのが炎への対策してないわけないでしょ?」
「え、そうなの?」
「……もちろん」
間があったような……。
「よし! じゃあリボンちゃん! ここら一体火の海にするよ!」
「そうだね!」
「ちょーっと待った!」
スプレッド・ファイアを使おうとすると、ヴァイン・ヴァインはそれを止める。
「なに?」
「火の海は……やめておきなさい。あなたたちも無事に済まないでしょ?」
冷静な顔で言ってるが、冷や汗が頬を伝っている。
「大丈夫だよ。すぐこのネストから出れば」
「ねぇ〜」
「あ、悪魔! ひどいと思わないの!? 勝手に人のナワバリ荒らして!」
とうとうヴァイン・ヴァインは冷静を装うのをやめて喚き始める。
「そんなこと言われても……」
「ねぇあなたも同族でしょ? こんなのひどいと思わないの?」
「そう言われても……」
「もう! あんたらみたいなガキにはわからないのかしら!」
「それで、対策ってのは? それあれば大丈夫なんじゃないの?」
「はったりに決まってんでしょ!!」
「えぇ……」
「もう好きにしなさいよ! 通りたきゃ通りなさいよ!」
「そんな怒んないでよ……」
「怒るに決まってんでしょ! この時点でもアタシのナワバリめちゃくちゃよ!」
「それは仕方ないっていうかぁ……」
「うるっさいのよあんたも! 大人になってから来なさいよ! あんたなんか……ヴァイン・ヴァインじゃなくてツルン・ツルンじゃないの!」
「な、なんですってえぇぇ!」
リボンは煽りに乗ってヴァイン・ヴァインとケンカし始める。
「や、やめなって……確かに私たちも悪いし、行っちゃお」
「二度と来るなー!」
罵倒を後ろに受けながらそのネストを後にした。