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ep17:私たちが選ばれた理由

「で? もったいぶらずに聞かせてくれよ。合格者の下から三人をピックアップしたら、俺たち三人だったってだけだろ? 他に理由あんのか?」


 チッチッチと、リオは人差し指を左右に振った。どうやら、違う理由があるらしい。


「試験を受けた時点で、この任務は僕たちに就かせるつもりだったと思うんです。もしかすると、本来の試験結果はもっと上だったかもしれないし、逆に落ちていたかもしれません。この任務に就かせるため、合格者ギリギリのラインに三人を押し込んだものと思っています。――ところで、僕たち三人には二つの共通点があります。何か分かりますか?」


「一つはアレだね、私たちの量術には攻撃力がない」


「そうですサリアさん。僕たちの量術は、他人の量術や他人の体を傷つけることが出来ません。他の合格者と大きく違うところです」


 私たちはオルマーシャ孤児院で、ミレルという先生のもとで量術を習った。彼女は攻撃性のある量術をひどく嫌い、なにかのミスで人を傷つけるような事があれば、烈火の如く私たちを叱った。彼女の元から巣立った者で、対人量術を使えるのはリオの兄、アレンだけだと思う。


「一時は俺も、対人量術が使えたらなって思ったことはあるよ。でもさ、今となってはこれで良かったと思ってる。――俺のイメイジョン、ミレル先生はよく褒めてくれたっけ」


 ミレルの口癖は、「人を幸せにする量術を使えるようになりなさい」だった。そのミレル先生はもう、この世にはいない。


「あ……そっか……もう一つは、オルマーシャ孤児院の出身者は俺たちだけだ。そういうことか?」


 レクトが言うと、リオは無言で深く頷いた。


 オルマーシャ以外の孤児院からも、数名ではあるが合格者は出ていた。ただ一つ、他の孤児院とオルマーシャ孤児院では大きく違う点がある。それは、オルマーシャ孤児院は、『戦争で敗北した側』の孤児を扱っていた場所ということだ。


「も、もしかして、私たちは死んでしまっても大丈夫だと思われていたってこと?」


「残念ながら、そうじゃないかと思っています。最初は僕も、攻撃力の無い量術使いだから、調査の担当になったものだと思っていました。だけど、いくら無人機で大気調査を済ませたとはいえ、何があるか分かったものじゃありません。しかも、地球の人間に襲われないとは限りませんし。驚くほどスムーズに進んでいるのは、本当は奇跡なのかもしれません」


 リオのセリフに、私たちはしばし無言になった。


 オルマーシャ孤児院を出たものは、人を信用しすぎるとよく言われている。こんな私でさえ、一番のしっかり者と言われていたくらいなのだから。

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