地球に降り立って十日が経った。今日は仕事の相談があるとのことで、ハルキとミツキの家にお邪魔している。
「最近、仕事が沢山舞い込んできてな。色々とお願いしたいことがあるんだ」
ハルキは筆記用具を取り出し、ノートを広げた。乱雑に書かれたノートには、何が書かれているのかさっぱり分からない。
「一番ヤバい日があってだな。来週の水曜日なんだが、ゴミ屋敷清掃と引っ越しが被ってしまって。先日急病だったバイトさんも就職が決まっちゃってさ、全く人手が足りんのよ」
「それなら、ゴミ屋敷は私一人でやるよ。他のみんなで引越をやればいい」
「バッ、バカ言うな……って言いたいけど、サリアちゃんなら本当に一人でやりきっちゃいそうだからな……本当に大丈夫なのか?」
私は片肘をつきながら、OKサインを返しておいた。
「あ、その日は私も空いてる! サリアちゃんについて行っちゃおうかな私」
「ダメダメ。私は一人の方が仕事がやりやすいから」
私が言うと、ミツキはプーッと頬を膨らませた。出会った頃はこんなミツキが好きじゃなかったが、今では可愛く見えるから不思議だ。
「あ、あの……その引っ越しは、もちろん僕も手伝わせてもらいますけど、他にもありますか? 僕にもできそうな仕事って」
「……ん? そうだな……ミツキ、パソコン教室の先生代わってもらうか? リオはそういうの得意そうだし」
「え、本当に!? それ、凄く助かる!」
近所のホールで週に一度、シニア層を相手にパソコンの使い方を教えているらしい。ミツキはパソコンに詳しくないのに、教本片手に先生として立っているようだ。
「私の場合、生徒さんに教えられることも結構あったからね……優しい生徒さんばかりだから、大丈夫だと思うよ」
「ほ、本当ですか……? それってミツキさんだから許されてるとかじゃないですよね?」
リオが聞くと、ミツキは頬に人差し指をあててしばし考えた。
「うーん……リオくんなら、きっと大丈夫!」
ミツキのその一言で、リオはパソコン教室の先生になることが決まった。
「……ハルキさん、二十一日の欄って「マジックショー」って書いてる?」
「ど、どう見たってマジックショーだろ! レクトはマジック出来るのか?」
町のイベントで児童向けのマジックショーが毎年あるらしい。同じネタしか持っていないハルキは、子どもたちから毎年ネタバレをされる屈辱を味わっているとのことだ。
「ハハハ、ネタバレされるのはキツイな! 今年は俺が、そいつらをギャフンと言わせてやるよ!」
どうやら、レクトは本気でマジックショーをやるらしい。レクトが繰り出すイメイジョンに、タネなんてものはない。きっと、本職が見たら腰を抜かすことだろう。