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ep21:真相

「もうハルキたちは知ってるのかな……事故のこと」


「ああ。帰宅中のトラックで、ラジオからニュースが流れたからな。近所で起きた事故だし、家についてからミツキさんにも言ってると思う」


「ラジオでも言ってた? ――鉄骨が消えたって?」


「言ってたな……凄い不思議なことが起きたって……」


 レクトはそう言うと、テーブルで指をトントンと叩いた。レクトが困った時によくする仕草だ。


「でも……私がやったなんて思わないよね……?」


「思わないよ、普通は。だけどさ、そのニュースを聞いた時「あれ?」って言ったんだよ、ハルキさん。それがちょっと気になってさ」


「見てください、これ」


 リオはノートパソコンを広げ、ニュースサイトの動画を再生した。


「この動画には、角度的にサリアさんが映っていません。他の動画も見たのですが、今のところサリアさんが確認出来たのは、レクトくんが見せてくれた動画だけでした。――えーと、この動画ですね」


 リオはレクトが見せてくれた動画を、改めてノートパソコンで再生した。


「幸いなことに、後方からの撮影なので顔は映っていません。レクトくんがすぐに気づいたように、ハルキさんやミツキさんなら、髪型や服装で分かっちゃうとは思いますが……」


「――でも、右手を上げてるだけだ。普通ならこれで鉄骨を消し去ったなんて誰も思わないさ。俺たちは何度もイレイズを見てるから分かるけど」


 そうだ、きっとハルキもミツキも気づかない。イレイズを使えるのなんて、ヴェルミラでさえ片手ほどしかいないのだから。



***



 夕方の六時を過ぎた頃、「晩ごはんがまだならウチで食べない?」と、ミツキからLINEが入った。


「どうする? まだ味噌汁しか作ってないけど」


「ハルキさんがどんな感じなのか、知りたい気もするな。俺たちの取り越し苦労だったんだって、安心したい気持ちもある」


「そうですね、じゃ皆んなでお邪魔しましょうか」


 私たちは鍋に入った味噌汁とともに、鳥居家を訪れた。



「いらっしゃい! 今日はお好み焼きだ、俺が作るお好み焼きは美味いぞ!!」


 あ。いつものハルキだ。私は思わず笑みをこぼしてしまった。


「ハハハッ、なんだサリアちゃんはお好み焼き好きなのか? よーし待ってろ、一枚目はサリアちゃんだ」


「えー! ハルキさん、俺超腹ペコなんだけど!」


「レクトたちは焼けるまでビールでも飲んでおいてくれ。――あ、リオは飲んでもほどほどにな!」


 大きくもなく綺麗でもない、鳥居家のリビングに笑い声が響く。


 ああ、私はこの人たちが本当に大好きだ――

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