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ep23:デート

 あの事故から三日が経った。


 今日は以前から約束していた、ミツキと街に出る日だ。集合場所はミツキの家の前。ミツキは、集合時間の七時三十分ちょうどに玄関から出てきた。


「あっ!! 着てくれてる、私のリクエストした服! めーっちゃ似合ってるサリアちゃん!!」


 早朝にも関わらず、ミツキは目一杯褒めてくれた。なんでも、酔った勢いで買ってしまった服らしく、一度も着ていないとのことだ。


「お酒飲みながらネットショッピングすると、ろくなこと無いね。女性っぽい服、一度は着てみようかなって思ったんだけど、全然似合わなくて」


 ミツキがくれたこの服は、体のラインがハッキリと出る、タイトなミニ丈のワンピース。ミツキは似合わないなんて言っているが、絶対にそんな事はないはずだ。


「ホントは、着るのが恥ずかしかっただけでしょ。私も勇気いったよ、これ着るの」


 ミツキは「アハハ、バレちゃった」と舌を出した。



***



「レクトくんたちは、まだ寝てるの?」


「うん、まだこの時間は寝てる」


 ミツキが行きたいカフェは朝からやっているとのことで、街へ向けてトラックを走らせている。ミツキ曰く、今日は私とのデートらしい。


「凄いねミツキ。トラックも運転出来ちゃうんだ」


 ハルキが仕事で使っているトラックをミツキが運転している。器用にギアをクンクンと入れ、速度を上げていく。


「本当は普通の車が欲しいんだけどね。――あ、そうそう。私、大型バイクの免許も持ってるんだよ」


「へー、凄い。ミツキのそういうギャップあるとこ、カッコいいと思う」


「ギャップ? 私が? それを言うならサリアちゃんでしょ。見た目クールなのにカフェオレ好きだし」


「ミツキ、他でそういう事言っちゃダメだよ。カフェオレ好きさんを敵に回すぞ」


 ミツキは「そう?」と首を傾げた。



 目的のカフェに着くと、すでに行列が出来ていた。


「まだこんな時間なのに凄いね。人が沢山」


「昼頃になると、この辺りは人で溢れかえるよ。――私も何ヶ月ぶりだろ? この街に来るの」


 そういえば、今日ミツキが着ている服は初めて見た。もしかして、とっておきの服なんだろうか。ミツキに似合っているし、とても可愛い。


「いいね、ミツキ。その服」


「――え! サリアちゃんが服褒めてくれるなんて! 嬉しすぎるんだけど!」


 ミツキは人前にも関わらず、私にハグをしてきた。そっか、私も褒められたら嬉しいもの。もっと気付ける人になっていかないと。



 その後はウィンドウショッピングを中心に、色々と街を見て回った。


 全てがキラキラしている……本当に、楽しい……


 こんなトキメキ、ヴェルミラでは感じたことが無かった。


「――ねえ、ミツキ。さっきから、すれ違う男たちが凄く見てくるんだけど」


「そりゃ、スタイル良しの美人さんが歩いていたら見ちゃうでしょ。きっと私でも見ちゃうもの」


「いや、私だけじゃないよ。ミツキも見られてる」


「……んー。じゃあ、そういう事なんじゃない?」


 ミツキはそう言って、歩きながら「うーん」と伸びをした。


 ん? そういう事ってなんだ?


「そうそう。夕方からレクトくんのマジックショーが始まるから、そろそろ帰らないとだね。――っと、その前に寄りたいところがあるの、急ごう!」


 ミツキは私の手を引いて、ある場所へと向かった。

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