あの事故から三日が経った。
今日は以前から約束していた、ミツキと街に出る日だ。集合場所はミツキの家の前。ミツキは、集合時間の七時三十分ちょうどに玄関から出てきた。
「あっ!! 着てくれてる、私のリクエストした服! めーっちゃ似合ってるサリアちゃん!!」
早朝にも関わらず、ミツキは目一杯褒めてくれた。なんでも、酔った勢いで買ってしまった服らしく、一度も着ていないとのことだ。
「お酒飲みながらネットショッピングすると、ろくなこと無いね。女性っぽい服、一度は着てみようかなって思ったんだけど、全然似合わなくて」
ミツキがくれたこの服は、体のラインがハッキリと出る、タイトなミニ丈のワンピース。ミツキは似合わないなんて言っているが、絶対にそんな事はないはずだ。
「ホントは、着るのが恥ずかしかっただけでしょ。私も勇気いったよ、これ着るの」
ミツキは「アハハ、バレちゃった」と舌を出した。
***
「レクトくんたちは、まだ寝てるの?」
「うん、まだこの時間は寝てる」
ミツキが行きたいカフェは朝からやっているとのことで、街へ向けてトラックを走らせている。ミツキ曰く、今日は私とのデートらしい。
「凄いねミツキ。トラックも運転出来ちゃうんだ」
ハルキが仕事で使っているトラックをミツキが運転している。器用にギアをクンクンと入れ、速度を上げていく。
「本当は普通の車が欲しいんだけどね。――あ、そうそう。私、大型バイクの免許も持ってるんだよ」
「へー、凄い。ミツキのそういうギャップあるとこ、カッコいいと思う」
「ギャップ? 私が? それを言うならサリアちゃんでしょ。見た目クールなのにカフェオレ好きだし」
「ミツキ、他でそういう事言っちゃダメだよ。カフェオレ好きさんを敵に回すぞ」
ミツキは「そう?」と首を傾げた。
目的のカフェに着くと、すでに行列が出来ていた。
「まだこんな時間なのに凄いね。人が沢山」
「昼頃になると、この辺りは人で溢れかえるよ。――私も何ヶ月ぶりだろ? この街に来るの」
そういえば、今日ミツキが着ている服は初めて見た。もしかして、とっておきの服なんだろうか。ミツキに似合っているし、とても可愛い。
「いいね、ミツキ。その服」
「――え! サリアちゃんが服褒めてくれるなんて! 嬉しすぎるんだけど!」
ミツキは人前にも関わらず、私にハグをしてきた。そっか、私も褒められたら嬉しいもの。もっと気付ける人になっていかないと。
その後はウィンドウショッピングを中心に、色々と街を見て回った。
全てがキラキラしている……本当に、楽しい……
こんなトキメキ、ヴェルミラでは感じたことが無かった。
「――ねえ、ミツキ。さっきから、すれ違う男たちが凄く見てくるんだけど」
「そりゃ、スタイル良しの美人さんが歩いていたら見ちゃうでしょ。きっと私でも見ちゃうもの」
「いや、私だけじゃないよ。ミツキも見られてる」
「……んー。じゃあ、そういう事なんじゃない?」
ミツキはそう言って、歩きながら「うーん」と伸びをした。
ん? そういう事ってなんだ?
「そうそう。夕方からレクトくんのマジックショーが始まるから、そろそろ帰らないとだね。――っと、その前に寄りたいところがあるの、急ごう!」
ミツキは私の手を引いて、ある場所へと向かった。