「ほんっと凄かったね、レクトくんたちのマジック! ねえねえ、天井に届きそうな大きなボールはどうやって出したの?」
「ハハハ、やだなあミツキさん。マジックはタネが分からないから面白いんだよ。そうだよね、ハルキさん」
「あ、ああ……にしても、お前ら本当に凄かったな。想像を遥かに超えてたよ」
マジックショーは想像以上の大盛りあがりで、最後は想定外のアンコールまで飛び出した。アンコールはネタが無かったのか、右手で冷風、左手で温風を出すという、リオの量術に頼ったマジックだった。
今は、マジックショーからの帰り道。月明かりが照らす夜道に、虫の音と私たちの靴音だけが静かに響く。
前を歩いているミツキとレクト、そしてリオの三人は、相変わらずマジックショーの話題で盛り上がっている。ミツキの一言に、リオが口を大きく開けて笑った。リオってあんなに笑うタイプだっただろうか。
ヴェルミラにいた頃に比べ、みんな少しずつ変わってきている。
それはもちろん、私も――
「あのさ、サリアちゃん。あの……
「明後日? もちろん。私はいつだってヒマだよ」
「アハハ、そうか。ちょっと話したいことがあるんだ。――昼の一時頃、迎えに行っても大丈夫かな?」
「――なに? 今は話せないこと?」
「ああ、そうだな……渡したいものもあるし」
「――そっか。オッケー、分かった」
ハルキはこれを伝えたくて、ミツキたちと少し距離を取っていたのかもしれない。
ハルキの話したいこと……一体、なんだろうか。
***
「ええーっ!? ハルキさんに誘われたって? そ、それはデートってことか?」
「――うーん、そんな感じじゃないっぽい」
「じゃ、なんて? 一緒に飯でも食おうって?」
「いや、昼の一時待ち合わせだから、そうじゃない。夜ご飯までは長すぎるし」
「――何の話をされてるんですか?」
二階でパジャマに着替えていたリオが、リビングに降りてきた。
「サリアがさ、話があるってハルキさんに誘われたんだってさ」
「また、ゴミ屋敷掃除の話ですかね」
「なんでだよ。そんな話なら、俺たちと一緒の時でいいじゃねえか」
リオは「はて?」と言わんばかりに天井を見上げている。
「俺はね……サリアに告白するんじゃないかと思ってる」
「こ、告白っ!? ハルキさんがサリアさんにですか? ハ、ハルキさんは好きなんですか? サリアさんのことを……?」
「お前さあ……頭良いのに、こういう事に関しては本当にポンコツだなあ。――おい、サリア! 笑ってるけど、お前も一緒だぞ!」
レクトは笑う私に、ビシッと人差し指を向けた。