あの日から二日後の夕方。私たちは最後の手段に出た。
「物が消えるシーン、上手く撮影できましたね。先日の鉄骨事故のニュース動画と合わせれば、サリアさんのイレイズも信じてもらえるでしょう」
私たちは世間に、ヴェルミラから来た宇宙人ということを告白することにした。もちろん、地球が侵略の危機にさらされていると伝えるためだ。私たちだけでは良い案が浮かばなかったため、全世界の人にアイデアを出してもらおうという事になったのだ。
「――あとは、アップする動画を見てもらえるかどうかだな」
「それは問題ないと思います。サリアさんを追っているというネットグループに送れば、嫌でも広めてくれるでしょう」
出来ることなら、この案を使いたくは無かった。万が一にもヴェルミラが撤退してくれた場合、私たちは異星人として暮らしていかなくてはならない。否が応でも、好奇の目で見られながら生きていくことになる。
「あらかじめ撮っておいた、三人の挨拶をエンディングに入れてと……ふう、これで完成です。――あとは、動画をアップする前の大仕事ですね」
最後の大仕事。世間に動画をアップする前に、ハルキとミツキには先に伝えようと決めていた。それが、彼らへの礼儀だと思ったからだ。今日はタイミングよく、ハルキたちの家でご馳走になることになっていた。
***
「おう、いらっしゃい! 今日は手巻き寿司にしたぞ! 家でやったことあるか?」
「い、いや、手巻き寿司はやったことないな。お、俺たちでもちゃんと作れるかな?」
「カンタンカンタン! さあ、上がって上がって!」
アレンのことがあって以来、ハルキたちに会うのはこれが初めてだ。流石のレクトも緊張しているように見える。
「みんな、いらっしゃい! ――ほんっと、サリアちゃんの髪色ステキ。私も染めちゃおうかな」
リビングに入ると、髪色を変えた私をミツキが褒めてくれた。ハルキに帽子をもらった翌日、家庭用のヘアカラーで明るく染めたのだ。
テーブルには既に、酢飯と海苔、そして色鮮やかな魚の切り身が並べられている。
「さあさあ、もう始めちゃっていいぞ。――っていうか、お前ら今日は元気ないな。もしかして肉系じゃなかったから、ガッカリしたか?」
ハルキはそう言って、ハハハと笑った。
「――いや、ハルキさん。今日は食べる前に、話しておきたいことがあって……」
レクトは神妙な面持ちでそう言った。いつもとは雰囲気の違うレクトに気付いたのか、ハルキの顔からは笑みが消え、ミツキは姿勢を正した。
「ど、どうしたの、レクトくん……?」
レクトはなかなか言い出せない。もし、リオや私だったとしても同じだっただろう。そして……レクトが口を開こうとした瞬間、玄関のチャイムが鳴った。
ピンポーン
「――誰だろうな? ちょっと待っててくれ、レクト。玄関まで見てくる」
ハルキが席を立ち、玄関へと向かう。レクトは「ふぅー……」と大きく一息ついた。
「おーい、リオ! お前の兄さんが来てくれてるぞ!」
ア……アレン!?
私たちは急いで玄関へと向かった。