「さて、最後はサリアだね。こちらにおいで」
「良かったなサリア。お前だけそのままだと、可愛そうだなって思ってたところだ」
レクトは変なところで優しい。私はフッと笑ってしまった。
「最初に言っておくが、サリア。お前の量術は開放しても、レクトのように大きな変化はないし、面白みもない。――ただ、使い方によってはお前の量術が一番危険なものになる。それでも構わないね?」
私の量術が一番危険なものになる……
でも、先生が開放してくれるんだ。きっと必要なものに違いない。
「大丈夫。どうなるのか、なんとなく想像はついてる」
私はそう言って目を閉じた。
頭の上を、ミレルの手がすべってゆく。ああ、なんだろう……私の中を全て覗かれているような、この感じ……
息を止めてという、ミレルの言葉の直後、私の中で何かが解き放たれた。
「お、終わったんですね? 先生、サリアさんもレクトくんのように新しい量術を得たんですか?」
「いや、サリアのイレイズは、イレイズのままだよ。――ただ、今日からのサリアは消せないものがなくなった。他人の量術でも、人の命でさえも」
やはり、そうか……
幼い頃から、人に向けてイレイズを放てば、消えてしまうイメージを鮮明に思い浮かべることが出来た。本能的に、自分の力に気付いていたのかもしれない。
「と、とんでもないな……セレスタを消し去っただけでも、驚異的な力だったのに……先生がこいつらに鍵をかけていた理由がよく分かる……」
「そ、そういえば兄さんは? 兄さんには鍵はかけていなかったんですか?」
「アレンはオルマーシャ孤児院に入った時、すでに六歳になっていたからね。鍵をかけるには大きくなりすぎていたんだ」
そうか……だからアレンだけは、幼い頃から才能が飛び抜けていたんだ。
「先生……私たちに鍵をかけていたのは、私たちが力をつけすぎると殺されるかもしれないから?」
ミレルは「そうだよ」と微笑んだ。