「アレン、ヴェルミラ統律院はどのくらいの艦隊で来るんだ?」
夜空を見上げながら、レクトが聞く。
「攻撃に特化しつつ、ここまでワープ出来るものは、ヴァルザーク型が三艦。そしてレヴァナント攻撃空母が一艦だな。俺が先生とヴェルミラを飛び立つ頃には、奴らの準備は整いつつあった」
「じゃ、じゃあ、合計でも四艦だけなのか」
「ああ、そうだ。俺が乗ってきたノクシア型やセレスタ型なんかも合わせたら相当な数にはなるがな。ただ、やつらを連れてきたとしても、足手まといになるだけだろう」
「そ、そういや、兄さん。よくノクシアを乗っ取ることが出来ましたね」
「俺をオペレーター任務につけた事を、今頃後悔してるだろうよ。パスワード系は全て、俺が掌握していたからな」
アレンはそう言うと得意げにフンと鼻を鳴らした。
「それならいっそのこと、俺たちとの通話記録もどうにかしてくれたら良かったのに」
「それは言うな、レクト。フライトレコーダーだけはどうにも出来んのだ」
私がセレスタを消し去った時の会話記録のことだ。フライトレコーダーをチェックされたのは、エルシア人
「で、でも……たった四艦だけで地球を制圧出来るって、ヴェルミラ統律院は思ってるってことだよね?」
「そういうことだ、サリア。一説によれば、ある国の軍事施設を破壊すると、防衛システムが働いて互いにミサイルを撃ち合うそうだ。まずは、そこを攻撃するという話も出ていた。『なんて馬鹿な星だ』と、俺たちは笑っていたもんだよ」
ハルキやミツキを見ているだけでは分からない、地球にも存在する闇の世界。彼らだけを見ていると、戦争とは無縁の星に思えるのに。
「みんな、お話はそこまでだ。来るよ――」
ミレルが空を見上げて言う。私には満天の星空しか見えないが――
そう思った直後だった。
ヴーン――
重低音を響かせながら、巨大な空母が現れた。燦々と輝く空母の光が、満天の星空を暗黒へと変えていく。
「レ、レヴァナント攻撃空母……も、もしかして、単独で来たのか……!?」
地球の上空に現れたのは、レヴァナント攻撃空母一艦のみ。だが、その超弩級の大きさに、私たちは呆然と空を見上げるだけだった。
***
「なっ、なにか、一機こちらに向かってきます!」
レヴァナント艦の下部ハッチが開き、そこから小型の浮遊体が向かってきた。見た目はドローンのようで、攻撃力は無いように見える。
「ド、ドローン型演説台だ。攻撃はするな! 多分、俺たちと話をするためだろう」
アレンの言う通り、私たちの近くで静止すると、浮遊体の上にホログラムの人物が浮かび上がった。
「ヴェルミラ統律院最高司令官、ロウゲンだ。直々に挨拶に来てやった。感謝するがいい」
ロウゲン゠ド゠レイフォス。
ヴェルミラ統律院入隊式の日、壇上で見た男だ。