「お前がアレンか。エルシア人であるお前を、せっかくヴェルミラ統律院に入れてやったというのに。恩知らずな男だ」
「だっ、黙れ! どうせ俺たちの事は、使い捨てのコマくらいにしか思っていないくせに!!」
「ハハハ。なんだ、気づいていたのか。事前調査では、地球におけるヴェルミラ人の生存率は67%と出ていた。だが元気そうで良かった、人体実験としてお前たちはよくやってくれたよ」
私たちの任命時には、生存率は100%に限りなく近い99%と聞いていた。私たちはもちろん、アレンを地球に寄越したのも本来の生存率を知っていたからなのだろう。
「――で。後ろにいる年寄りの女が、アブソルヴェールの使い手なのか? 名はなんという?」
「ミレル……ミレル゠グランセリアだ。それと……」
「それと……?」
「年寄りは余計だよ」
「ハハハ、それは悪かった。ミレル゠グランセリアだな……ちょっと、待ってろ」
ロウゲンは艦内の人物と話をしているようだ。ミレルの身元確認をしているのだろう。
「……なるほど。アレンを育てた要注意人物として、マークされていた奴か。こちらには死んだと報告が上がっていたが……ヴェルミラ統律院にとっては、恥ずかしい話だな」
「そ、それで何の話をしにきたんだ」
「おお……アレン。お前がここに呼び寄せておいて、酷い言い草だな。まあ、率直に言おう。セレスタを消し去った、サリア……サリア゠ストラファードというのはお前だな?」
ロウゲンは私を見据えてそう言った。私は強張った声で「ああ」と返した。
「サリアと、後ろのミレル。お前たち、我が艦に乗らないか? あれほどのイレイズとアブソルヴェール使いを殺してしまうのはもったいないからな」
「ロウゲンとやら。訊くだけ訊いてみるが、残りの三人はどうするつもりだい?」
ロウゲンの問いに、ミレルは落ち着いてそう返した。
「んー……アレンの量術もかなりのものと聞いてはいるが、こいつは国家転覆を図った上に、ノクシアまで奪っていったからな。残り二人と一緒に処刑ってところだ」
「そういうことだ、アレン、リオ、レクト。こいつらは、お前たちのことをそれくらにしか考えていないってことだ。容赦は要らないよ」
「分かりました、先生」
リオはそう言うと、ホログラムのロウゲンが乗った浮遊体を一瞬で灰にした。
***
「馬鹿な奴らめ! 許しを請うなら、飼ってやってもよかったものを!!」
レヴァナント艦からの発信なのだろうか……ロウゲンの声が夜空に響いている。しかも、何故か日本語だ。
「侵略に来たということを、地球人にも知らせてるんだ! お前たち、私の元から離れるんじゃないよ!」
レヴァナント艦両サイドのハッチが開くと、
「さ、流石、アブソルヴェールですね! ビクともしません!」
「これでアブソルヴェールを震わせたリオの力が、どれだけのものか分かっただろう。さあ、奴らが反転したときがチャンスだよ!」
ルクスを撃ち終えたグリムは、一斉に反転して上昇体制に入った。私とリオ、そしてアレンはアブソルヴェールの外に出る。
「落ちろっ!!」
アレンは
「す、すまん! 俺は何をすればいいか分からなかった」
「気にするなレクト。お前の出番は必ず来る。どうすれば敵を倒せるか、イメージしておけ。あと、リオとサリアはよくやった。完璧だった」
グリムは再び攻撃してくるかと思ったが、レヴァナント艦内に舞い戻ってしまった。こちらの想定外の戦力に、作戦を立て直すつもりなのかもしれない。