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ep48:地球人

 ハルキとミツキは、アレスレイによる爆風を浴びたのだろう。顔も服もすすだらけになっている。


「ど、どうして、ここにだって!? それはこっちのセリフだ!! ——それより、レクト! さっき見えた、白い光はなんだ? あの空に浮かんでる奴は、何なんだっ!?」


 ハルキがレクトを見据えて言う。ミツキは震えながら、ハルキの服を掴んでいる。


「や……奴ら……奴らは……」


「——奴らは何だっていうんだ、レクト?」


「……奴らは……ヴェルミラって星から来た宇宙人なんだ……」


「う、宇宙人!? どうして、そんな奴らとお前たちが一緒にいるんだ!? 分かるように説明しろ、レクト!」


「そ、それは……俺たちも……奴らと同じ、ヴェルミラって星の人間だからだ……」


 それを聞いたミツキは、驚いて目を見開いた。


「じょ、冗談だよね、レクトくん……?」


 レクトはミツキを見つめたまま、ゆっくりと首を左右に振る。


「――そっ、それで? 宇宙人のお前たちが、なんで地球にいる? 地球に来た目的は何だ!?」


 ハルキにそう言われたレクトは、堪らず目を逸らした。そんなレクトを見て不憫に思ったのか、アレンが口を開く。


「それは、こいつらの上官でもある俺が説明しよう。俺たちの母星ヴェルミラは、二百年後に消滅してしまうんだ。ヴェルミラの公転軌道に、クオルと呼ばれる彗星の軌道がぶつかってしまうらしい。我が星の量術全てをぶつけても、彗星の軌道は変えられないという話なんだ」


「ハ……ハルキさん、量術っていうのは、こちらの星でいう魔法のようなものです」


 リオがさりげなくアレンをフォローした。


「まほう……ああ、魔法か。サリアちゃんが鉄骨を消したり、レクトのマジックが凄かったのも、その量術ってやつを使ったんだな?」


 レクトと私は黙って頷いた。


「そこで、我々ヴェルミラ人は新たな住処として地球を選んだ。この三人がここに来たのは、ヴェルミラ人が地球で住むことが出来るかどうか、その調査の為だったんだ」


「——それは、侵略を前提とした話なのか?」


「……ああ、そうだ」


「ほっ、本当なの!? レクトくん!? リオくん!? ――サリアちゃんっ!?」


 ミツキは「信じられない……」と、目に涙を溢れさせた。


「――だけど、信じて欲しい。こいつらは、地球をヴェルミラから守ろうとしたんだ。俺が初めて地球に来たとき、『自分たちは地球で死んだことにしてくれ』と。『ヴェルミラ人は地球では生きられない』と伝えてくれって。本気で俺にそう言ってきたんだ」


「で、でも、そんな事をしたら、自分たちの星に帰れないんじゃないのか!?」


「ご、ごめんなさい……ハルキさんミツキさん、今まで黙っていて……お二人を、そして地球を救うには、そうするしか無かったんです。僕はお二人といる時間が本当に楽しかった。その反面、ずっと隠し事をしているという罪悪感で苦しかったんです……黙っていて、騙していて……本当に……本当にごめんなさい……」


 リオはそう言って頭を下げた。リオの頬から、ポタポタと地面に涙が落ちていく。


「リオ、顔を上げてくれ……ミツキはどう思うか分からんが、俺はお前たちを信じるよ。――すまんな、自分たちを犠牲にしてまで、俺たちを守ってくれて」


「わ、私は、まだ分からない……ご、ごめん、サリアちゃん……」


 私は静かに、首を横に振った。

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