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ep49:究極の二択

「ほう……アブソルヴェールとやらは、アレスレイさえも防ぐのか……避難所のあの話は、本当だったのだな。——ところで、そいつらは誰だ? 地球人なのか?」


 煙が消え、レヴァナントからこちらが見えるようなったのだろう、再びロウゲンの声が夜空に響いた。


「そっ、そうだ! 俺たちの大事な人たちだ!」


「なるほど。そんなくだらん理由で、お前たちはヴェルミラを裏切ったってことか。――じゃ、こんな攻撃をされたらどうだ? お前たちがどういう行動を取るのか、見せてもらおうか」


 ロウゲンの声が響くと、再びグリムの編隊が飛び出してきた。最初に出てきた数と変わらないところを見ると、相当数のグリムが空母に積載されているのだろう。


「ハルキさん、ミツキさん! とりあえず、ミレル先生……後ろのおばあさんの近くに移動してください!!」


「リ、リオ! 誰がばあさんだい! そこの二人! 私の側までおいで!!」


 ハルキとミツキは、何が何やら分からぬまま、ミレルの側まで走っていった。


「グリムよ。エルシア人と二人の地球人は後回しでいい。――まずは、近辺の街を焼き尽くせ」


 ロウゲンが言うと、グリムは一斉に機首を街の方へと向けた。


「さっ、させるかっ!!」


 レクトは両手を広げ叫ぶと、天にまで届きそうな巨大な白いドームを生成させた。『ゴォーーーーッ!』という低音とともに出現したそのドームは、レヴァナント艦と私たちをすっぽりと取り囲んでしまった。


「レ、レクトくんっ!?」


 ミツキは泣きそうな顔でレクトを見ている。その視線に気づいているはずであろうレクトは、顔をそらして広げた両手に力を入れた。


「フンっ、くだらん。そいつが使えるのは、ただのイメイジョンだ。ルクスで消し飛ばせ」


 ロウゲンの命令が下ると、グリムはドームの内壁に向けてルクスを一斉に発射した。レクトが生成したドームは振動したものの、生成時と同じ形を保っている。


「こっ……このドームはジェネヴィオンで生成しているというのか……おい……お前たち。どうして、それだけの力を今まで隠していた」


「お前たちは俺たちの力を知ったら、利用するか殺すかのどちらかだろう!! 好きにさせるかってんだ!!」


 レクトは叫んだ。


「チッ、小賢しい奴らめ……では、こんな風に攻めたら、どちらを守るんだろうな? 見せてみろ! エルシアの民たちよ」


 直後、新たなグリムの編隊がレヴァナント艦から飛び出した。先にいたグリムがドームを攻撃するなか、新たな編隊は私たちに向かって急降下してきた。


「レ、レクト!! アブソルヴェールに戻ってこい!!」


「じゃ、誰がドームを守るんだよ!! 俺しか出来ないだろうが!!」


 レクトは両手を広げて、ジェネヴィオンを唱え続けている。壁が破壊されるたび、ドームの壁を生成し続けているのだろう。そのレクトに向かって、降下してきたグリムが照準を合わせた。


「やっ、やめろーーー!!」


 リオは叫ぶと、レクトの前に立ちふさがりクライメアを乱射した。被弾したグリムは炎に包まれ、次々と落下していく。だが、クライメアをすり抜けたグリムが、リオにルクスレーザー量術を浴びせかけた。


「うあああっ!!」


「リ、リオっ!!!」


 ルクスが直撃したリオが地面に倒れ込む。アレンがすかさず、リオを助けに行ったが、そのアレンもルクスに撃ち抜かれた。


「お……お前たち、絶対に許さないっ!!」


 グリムが上昇反転する前に、私もアブソルヴェールから飛び出していた。眼の前に迫った八機にイレイズを放つ。しかし、その後ろに隠れていた機体が私の左足にルクスを直撃させた。

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