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限界

「きゃあああっ!!!」


 私は左足を押さえて倒れ込んだ。ヴェルミラ製の服でなければ、左足が吹き飛んでいたかもしれない。そんな私を、後ろから誰かが担ぎ上げた。


「ハっ、ハルキ!?」


 ハルキは私を抱きかかえ、アブソルヴェールの中へと運び込んでいく。


「む、無茶をするな、ハルキ! 地球の服なんかで被弾したら、即死するぞ!!」


「そんなこと知るか! 痛がってるお前を黙って見てられるわけねーだろーが!! 先生、ミレル先生とやら! 俺たちに出来ることはないのか!!」


「ハルキさんといったね……残念ながら、あなたたちに出来ることはない。サリアが言ったように、敵の攻撃が当たったら死ぬかもしれない。この子たちのことを想うなら、私の側にいてくれないか」


 ミレルに言われたハルキは、くやしそうに地面を叩いた。ミツキはさっきからずっと泣き続けている。


「リオ! アレン! お前たちもこちらにおいで。奴らが来る前に少しでも回復させよう」


 リオとアレンはよろめきながらミレルの側へとやってきた。ミレルはアブソルヴェールを解き、ソルフィス回復量術をリオとアレン、そして私に向けて放つ。


 だが、そんな時もつかの間、グリムは再び私たちに向けて降下してきた。


「まっ、また来ます! せ、先生、アブソルヴェールを!!」


 リオは殆ど治療が済んでいない体を引きずり、レクトの元へと戻っていく。


「もっ、もうやめて!! こんなことになるなら、地球の半分をあげたっていい!! 半分でダメなら全部あげてもいいからっ!!」


 ミツキが泣きながら、大声で叫ぶ。


「ありがとう、ミツキ。ま、まだ、頑張れるから私たち」


 痛む左足を引きずって、私もアブソルヴェールの外に出た。



「正面からくるやつは俺に任せろ!! 左方はリオ!! 右方はサリアだ!!」


 アレンは左腕を撃たれていたのか、左腕を右手で押さえながら私たちに指示を出した。


 上空で壁を攻撃し続けているグリムに対し、レクトはずっとジェネヴィオンを放ち続けている。そしてとうとう限界が近づいたのか、レクトはガクンと地面に片膝をついた。


「レ、レクトっ!!」


「ア、アレン……俺のことを気にしてくれるなら、敵を残らず撃ち落としてくれ……」


 再びグリムの編隊が襲ってくる。私たちはそれぞれの量術を放ち、グリムを消し去っていく。だが、数で劣る私たちは、リオが二度目の被弾、そしてとうとうレクトも餌食になってしまった。


「うあああっ!!!」


 レクトは前のめりになりながらも、両手を広げてジェネヴィオンを放ち続ける。だが、レクトが生成を続ける壁も、ボロボロと破片が落下し始めていた。


 本当の限界は、もう目の前まで迫っているのかもしれない。

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