「こ、これは、こうやって両腕を広げてないとダメなんだな!?」
「ハっ、ハルキさん!? ダメだ、戻れ! 戻ってくれ!!」
いつの間にか、ハルキがレクトの後ろから両腕を支えていた。今にも倒れそうなレクトを見ていられなかったのだろう。
「ハルキ! レクトの言うとおりだ、戻れっ!!」
「ばっ、馬鹿野郎!! 俺はお前たちとは兄弟だって言っただろう! 弟を見捨てて、逃げる兄がどこにいるんだ!!」
ハルキは私にそう言い返してきた。ハルキはレクトの背中を守るかのように、レクトの両腕を支え続けている。一度でも被弾すると死ぬだろう、地球人の装備とその体で。
「レクトたちの正面は俺が守る! サリアは後方を見てくれ! リオはいったん、先生の元へ下がれ!!」
「ま、まだ、大丈夫です……ぼ、僕もまだ……まだ戦えます……」
リオは二度目の被弾を胸に受けていた。量術を放つどころか、立っているのがやっとに見える。
「リオ! 言うことを聞け!! ――くっ、来るぞ!!」
レクトへの集中攻撃と命令が出ているのだろう。レクトを守る私たちに向かって、再びグリムの編隊が迫ってきた。
アレンの方に5機、私の方に6機……
出来れば一度のイレイズで消し去りたい。さっきみたいに後ろに隠れている機体に気をつけなければ……
先頭の機体がルクスを放った瞬間、私もイレイズを放った。正面の4機はルクスとともに消し去ったが、両端にいた2機は左右に旋回し、レクトへと機首を向けた。
「レクト!! 左右から来る、逃げろっ!!」
アレンも慌ててこちらを向いたが、旋回した2機を視認出来ない。
右に旋回した機体はイレイズで消し去ったが、残る1機はレクトとハルキを射程圏内に捉えた。
……リ、リオ!?
いつの間にか、リオがレクトたちの側にまで来ている。
リオはレクトとハルキを庇うように前に立つと、弱々しく右腕を上げた。だが、クライメアが発動するより早く、グリムのルクスがリオに炸裂した。
「リオーーーっ!!!」
倒れ込んだリオを、レクトが抱きかかえようとする。だが、ジェネヴィオンを発動し続けていたレクトに、そんな力は残っていなかったのだろう。レクトもリオの隣でうつ伏せになって倒れてしまった。ジェネヴィオンが解かれてしまった壁は、パラパラと音を立て始める。
「だっ、誰か!! こいつらを助けてやってくれ!!」
2人の隣で叫ぶハルキの下へ、ミレルとミツキが駆けてきた。
「少し下がっておくれ……2人とも危ないな……特にリオは厳しいかもしれない……」
付いてきたミツキは、泣きながらリオとレクトの手を握っている。
「――とりあえずリオへの
ミレルがそう声をかけたとき、上空で爆発音がした。
レヴァナント攻撃空母から飛び出してきた戦闘機が、グリムを撃墜したのだ。