「お、おい……どういう事だ……」
上空を見上げ、アレンが呟いた。
敵方の戦闘機がグリムを撃墜したのだ、驚くのも無理はない。無人機であるグリムは、味方機を迎撃出来ないようプログラムされているのか、面白いように撃ち落とされていった。
「だっ、誰だ!! ゼルクに乗っているのは!?」
ロウゲンの怒りに満ちた声が響く。確か、ゼルクという戦闘機は有人機のはずだ。全てのグリムを撃ち落とすと、こちらに向かって降下してきた。
「アレン! 聞こえるか!? ドレイクだ! 私は味方だ、攻撃してくるな!!」
「ド、ドレイク大佐!? サリア! イレイズは放つな!!」
ドレイク大佐……
ああ、そういえば一度、すれ違いざまに声をかけられたことがある。こんな一兵卒にまで声をかけてくれるのかと、驚いたことを憶えている。
ドレイクは私たちの近くに着陸すると、攻撃はしないという意思表明なのか、両手を上げてこちらに歩いてきた。
「念の為、アブソルヴェールを張る……みんな、気を抜くんじゃないよ……」
ミレルはドレイクを敵と見ているのだろう。リオへの
「アレン、私は敵じゃない。お前たちの味方だ、構えを解いてくれ。――そして、ミレルさん。私の声に聞き覚えはありませんか?」
ん……? エルシア
「その声……もしかしてエリオンかい……? ――私とどこで会ったか、言うことは出来るかい?」
エリオン……? ドレイクという名前は本名ではない……? 確かにドレイクの声は、一度聞いたら忘れそうにない特徴的な声質をしていた。
「もちろんです。アストリスの避難所で共に過ごしました。今の貴方のように、子どもたちをソルフィスで治療しながら。――信じてもらえるなら、私はあなたたちを救いたい。特に、その彼が手遅れにならないように」
「ほ、本当にエリオンなんだね! じゃ、この子……リオにソルフィスをお願い、私はレクトにソルフィスをかける」
ドレイク……いや、エリオンはリオの胸に手を当て、ソルフィスを発動させた。疲れ切っているミレルより、明らかに強いソルフィスを放っているように見える。
「ド、ドレイク大佐! い、一体、どういう事なんですか!?」
「アレン、これからはドレイクではなく、エリオンと呼んでくれ。それと、詳しい説明は後にしよう。――現状について、先に報告をする。レヴァナント攻撃空母は地球に至るまでの度重なるワープと、
「た、叩くといっても、どうやって……あ! 別のゼルクが出てきました。……3……6……9機です!」
「9機か。これでレヴァナントに搭載されている戦闘機は、無人有人合わせて全て出てきたことになる。まずは、こいつらを始末しよう。お前たちだけで、なんとか出来そうか?」
9機だけなら、私とアレンがいればなんとかなりそうだ。だが、ゼルクは一向に降下してこない。
「ドレ……いや、エリオンさん……ゼルクが攻撃してきません。何かの作戦なんでしょうか……?」
「いや……きっと作戦なんかじゃない。他人を傷つける事を恐れるエルシア人とは反対に、ヴァルムートの人間は自分自身が傷つくことを酷く恐れる。今までお前たちの量術を見ていたから、向かってこれないのだろう」
エリオンはリオにソルフィスを施しながら続けた。
「ところで……対人相手に量術を使うのは初めてだろう。どうだ、やれそうか?」
アレンと私は、「はい!」と声を張り上げた。