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第20話 デートではないですね


「早速デートしたんですか!?」


「女たらし! すけこまし!」


 装備屋さんから直帰して。いつものようにアルーとミワと夕飯を食べていると……なぜか二人から責め立てられてしまう私だった。


「デートじゃないって。防具を買いに行っただけだって」


「それをデートと言うのよ!」


「完全にデートじゃないですか!」


「デートじゃないですね……」


 なんでこの二人は四六時中オールタイムで頭ピンク色なのか……。私が呆れつつもお鍋をつついていると、アルーが勢いよく立ち上がった。


「優菜! デートしましょう!」


「あー! ズルいですよ! 優菜さん! 私ともデートしましょう!」


「デートねぇ……?」


 わざわざそんな変な言い方をしないで、普通にお出かけしたいって言えばいいのになぁと考える私だった。もぐもぐ。それならいつもやっているのに。もぐもぐ。


「そうと決まれば!」


 いやまだ返事はしてないけど?


「どちらが先にデートをするか! 決めなければなりませんね!」


 どっちともお出かけするんだから、どっちが先でも大して変わらないのでは? 直近だと土曜と日曜だろうから、一日違いでしかない。

 というかアルーが休める日に合わせればいいだけでは?


「いざ!」


「尋常に!」


 戦いを始めようとするアルーとミワ。それはまだいいとして、室内の魔力がなぁ。激しく動き始めたんだよなぁ。


 こやつら、室内で魔法を使う気満々だ。ただのお出かけの順番決めに。


「――はいはい。暴れないの」


 私が『パンパン』と手を打ち鳴らして仲介すると、激しく動いていた魔力は霧散した。


「どっちが先でもいいから、平和的に決めてね?」


「「はぁーい」」


 仲良く手を上げて返事をした二人は、次の瞬間には『キッ』と睨み合い――いざ、尋常に、ジャンケンで勝敗を決することにしたようだ。


 ちなみに見た目だけなら普通のジャンケンだけど、その裏では未来予測やら認識阻害やらの魔法が飛び交っている。もちろんジャンケンなんかに使っていい魔法ではない。真面目な魔法使いが見たら卒倒するんじゃないだろうか?





 とても盛大で下らない戦いの結果、アルーが勝者となったようだ。まぁ魔法の器用さではアルーの方が一枚上手なのかな。破壊力だけなら断然ミワなんだけど。


「というわけで、お出かけすることになったんですよ」


 翌日のダンジョンで。ブルーシートに寝っ転がりながらユリィさんに報告する私だった。


「えーっと……なんか、ごめんね? ボクが誘ったせいで?」


 疑問を浮かべつつ謝ってくるユリィさんだった。真面目だ。その真面目さの一割でもアルーとミワに分けて上げて欲しい。


「それじゃあ優菜はあの二人とデートするんだ? あんな美人さん二人と? やるねぇ」


「デートじゃないと思いますけど……」


「いやデートだよ。完全にデートだよ。認識してあげなよ可哀想だから」


 なぜかお説教(?)されてしまう私だった。


「……デートと言えば」


 お? なんか雰囲気が一気にどろっとしたものになったぞぉ?


「あの女とお母さん、今度お休みが一緒の日にお出かけすることになったって」


「あの女って」


 ララートさんのことだよね?


「……それはデートなのでは?」


「デートではないですね」


 即座に否定するユリィさんだった。なぜか敬語で。


「ま、まぁまぁ、ユニーさんにもユニーさんの人生がありますし」


「……それはそうだけど……」


「あと、ララートさんも一応は身元確かな人ですから。変な人ではないですから」


 あ、いや、性格は変な人かもしれないけど。身分としてはちゃんとしているのだ。


「……優菜、あの女のこと知っているの?」


 いやだからあの女って……。言い方ぁ……。


「国家保安省のお偉いさんで、アルーの上司ですね」


「うわ、エリートじゃん。超エリートじゃん。むしろなんでお母さんと知り合いなの?」


「いや私に聞かれましても……。あっちの世界からこっちに移住してきたなら、ゲート管理部とは接触があるのでは?」


「なるほど職権乱用でお母さんを口説いていると」


 ちょっとララートさん、ユリィからの好感度低すぎません? もしかして何かやらかしました?


 ここまで敵意(?)剥き出しだと伝えにくいけど……一応教えておいた方がいいよね?


「あと、ララートさんは私の保護者というか、未成年後見人という存在でして。養子にならないかとも誘われているんですよね」


「――まさか優菜にまで手を出しているだなんて!?」


「なんでやねん」


 思わず関西弁で突っ込んでしまう私だった。



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