「やはり毎週一回は優菜とのデートをするべきね!」
「珍しく気が合いますね!」
夕食時。なにやら意気投合しているアルーとミワだった。まぁこの二人はケンカばかりしているけど、ケンカするほど仲がいい系なので……。
しかし、毎週二人とデートねぇ?
もちろん、私には学校があるので土日ということになるし、二人一緒にやると不機嫌になるので土日それぞれが潰れてしまうのだ。
「やだよ面倒くさい」
休日とは休むためにあるのだ。決して、ポンコツエルフのお守りをする日ではない。
「言いぐさが酷くない!?」
酷くない。事実を掲示しただけ。
「アルーさんはともかく私のどこがポンコツなんですか!? アルーさんはともかく!」
そういうところかな?
「そもそも! 私みたいな美人エルフとデートできるのに! 何が不満なの!?」
そういうところかな?
「そうですよ! 私みたいな美人ダークエルフとのデート! 一体どこが不満ですの!?」
そういうところかな?
やーれやれと肩をすくめる私。
「二人には日本のありがたいことわざを教えてあげましょう。――美人は三日で飽きる」
「うわぁ、クズ」
「女たらしは言うことが違いますわぁ」
ひそひそと顔を寄せ合うアルーとミワだった。やっぱりケンカするほど仲がいい系だよね。
「まぁいいけど。とりあえず、ストーカーには気をつけてね?」
私がそう注意すると、二人はまったく同じタイミングで立ち上がった。
「任せて! 優菜をストーカーする命知らずには私が引導を渡してやりましょう!」
私じゃないって。アルーだって。何で本人に自覚がないのか……。
あと、エルフが『引導を渡す』って言葉を使うのはどうなの?
「そうですね! 優菜さんをストーキングするなどいい度胸! 八大地獄に叩き落としてやりましょう!」
いやダークエルフが『八大地獄』って。もう日本人でも知っている人少ないのでは?
ちなみに八大地獄とは殺生やら盗みやらをした者が落ちる地獄だ。いや今はそんなことどうでもいいんだけど。
「とにかく。アルーは注意するように。やり過ぎてストーカーを消し炭にするとか、南極に転移させちゃうとか、トラウマを植え付けて廃人にするとかやっちゃ駄目だからね?」
「やったことないわよ!? 優菜は私のことを何だと思っているの!?」
残念すぎてさっき言ったことを『てへっ』とやらかしかねない、残念なエルフさんかな。
◇
学園内のダンジョンにて。
毎日お昼寝していると睡眠時間が足りすぎるのか、今日は眠くなかったのでユリィさんと雑談に興じている私だ。
「まぁ、アルーとミワとお出かけするのは別にいいですし、デートと主張したいならそうすればいいと思うんですよ」
「うんうん」
「でも、毎週末一緒に出かけろとかキャパオーバーじゃないですか? そもそも私ってインドア派ですし。どう思いますかユリィさん?」
「とりあえず、優菜は爆発四散した方がいいんじゃないかな?」
「なぜに?」
「あのねぇ優菜。アルーさんは仕事ができそうなキャリアウーマン。ミワさんは温和で優しげなお姉さん。しかも二人とも尋常じゃない美人さん。そんな二人から言い寄られて喜ばないのは優菜くらいじゃないのかな?」
「…………」
仕事ができそうなキャリアウーマン?
温和で優しげなお姉さん?
はて、一体誰のことだろうかと真剣に悩んでしまう私だった。いや答えは分かりきっているのだけど、素直には認めたくない系。こう、豆腐の代用肉をお肉とは認めたくないというか……。
「ふっ、ユリィさんはまだまだあの二人の本性を知らないみたいですね」
「本性を知るのはボクじゃなくて、恋人の役割じゃないかな?」
「? 恋人?」
「アルーさんとミワさんの恋人。優菜君」
「なんでさ?」
思わず変な口調になってしまう私だった。
まぁそれはいいとして。ちょっと重要な話をしておかないと。
「なんかアルーがストーカーに狙われている疑惑があるので、ユリィさんも気をつけてくださいね? 色んな意味で目立つんですから」
「あぁ、うんそれは気をつけるけど……。アルーさんが、ストーカーに? 優菜じゃなくて?」
「私? あぁ、たしかにアルーなら私をストーカーしそうですけど。というか校内ダンジョンまで付いてきましたし」
「いやそうじゃなくて。優菜もストーカーに狙われないよう気をつけてね?」
「? なんで私が狙われるんです?」
「美少女だからかな」
サラッと口説き文句を口にするユリィさんだった。やれやれこれだから王子様系女たらしは。
「女たらしって、優菜にだけは言われたくはないかな?」
なぜ……?