「エルフと人間は、別々に……」
「そうよ。当たり前でしょう?」
「…………」
私から離れても付いてくるんだよなぁ。それこそ
「それはやはりエルフと人間の寿命が違うから?」
あっちの世界でも物語の定番だ。寿命が異なり、一人残されると知りながら。それでも人間を愛してしまうエルフというのは。
「当然よ。人間からしたら犬や猫相手に本気になるようなものなんだから」
「犬猫って……」
犬猫扱いされた側としては怒るべきかな?
「そもそもお姉様は甘すぎるのよ。人間なんてすぐに死ぬって分かっているはずなのに対等に付き合って。老いていく姿を見て傷ついて。必然の別れを経験して。何度も、何度も……。だから、人間。さっさとお姉様から離れなさい」
睨み付けてくるアミーさん。そんな彼女を前にして……私は微笑ましい気持ちになってしまった。
「アミーさんって、優しいんですね?」
「はぁ?」
「だって……アルーが傷つかないよう、人間から距離を離させようとしているんでしょう? 自分が悪役になってまで。それだけの腕前なら人間なんて痕跡も残さず『消して』しまえばいいのに……。うんうん、やはり優しいですね」
「――ふざけるのもいい加減にしてっ!」
突如としてアミーさんの身体から魔力が吹き上がった。本来なら実体のないはずの魔力風で髪が揺れるほどの、濃密な魔力。この世界の人間ならそれだけで魔力酔いをしてしまうはずだ。
これだけ濃い魔力を出してしまうと魔物が寄ってくる――いや、逆に逃げ出すかな? よほど強力な魔物じゃない限り……。
そんなことを考えていると、アミーさんが眉間に皺を寄せた。せっかくの美人さんなのに勿体ない。
「……気味が悪い」
「
悪いのはだいたいの場合においてアルーとミワなんだけど……。そんなことを考えていると、アミーさんがどこからか取り出した『魔法の杖』を私に突きつけてきた。
アミーさんレベルの魔法使いなら、無詠唱で中級攻撃魔法も放てるかもしれない。普通の人間なら何かを言う前に蒸発してしまうはず。
でも、私は慌てない。
アミーさんは私を消し炭になんてしないと信じているから――というのも、少しあるけど。やはり余裕があるのは
こんな時でも余裕を崩さない。
そんな私が心底不気味だったのか、アミーさんが思わず一歩引いたところで、
『――ガァアアァアアァアアッ!』
大地が震えたかのような咆吼だった。
この前、このダンジョンで遭遇したアース・ドラゴンよりも遥かに大きく、物理的な破壊力すらありそうな鳴き声。
「あー……」
これは、