「ところで、春大会の方はどうなったの?」
『あ』
演劇部三年、ゆるふわ担当の
それはもう、演劇で言うところのストップモーションみたいな感じで。
(くっ! さすが旭雫先輩だ鋭い!)
(いやいや、当然のご指摘じゃない?)
(そう言いながら松戸、お前も人狼楽しんでいただろ)
(浩介! こういう時はお前が何とかしろ!)
(そうだそうだ!)
(なん……だと……!?)
二年生たちが責任を擦り付け合っている時、一年生たちは、
(あれ、そういえば何で人狼しているの?)
(凛ちゃんと柏先輩が戻ってくるまで暇つぶしにって成田先輩が)
(しまったぁぁぁぁぁぁぁ!! つい夢中になって忘れていたぁ!)
(お、落ち着いて希色ちゃん!)
(ちょっと男子。しっかりしてよ)
(だそうだ、木更津)
(俺か!? 俺が悪いのか!?)
(さっき、負けっぱなしは主義じゃないって言ってたじゃん)
混乱していた。
そして沈黙の状況が続く。
時間が過ぎてく中、みんな同じことを思っていた。
【先に動いたものが責任を問われる…………!】
「?」
返事がない。それどころかさっきまでの盛り上がりが嘘のように静かになった現状を不思議に思う旭。
膠着状態の中、動いた者がいた。
「お、俺は流山を迎えに行っていたから分からんが、そもそも何故人狼をしていたんだ?」
『っ!』
柏浩介が先手を取った。
この質問の意図をすぐに理解し、便乗する者が現れる。
「確かぁ、成田先輩がやりたいって言ってましたよぉ!」
(船橋希色ぉぉ!!!)
成田が一瞬、鬼の形相で船橋を睨む。
船橋は明後日の方向を向いて、目を合わせようともしない。
そう、この質問は言い出しっぺ誰だっけ? てかそいつの所為じゃね? を意味していたのだ。
しかし、成田もこのままではない。
「ぼ、僕は浩介たちが戻ってきた時点で止めようとしたんだがな! 後輩たちの盛り上がりがすごくてな!」
『!!』
突然のキラーパスに焦る一年生たち。
ただ一人、鎌ヶ谷は冷静に答える。
「木更津くんが盛り上がってた」
「な!」
そして周りもそれに合わせる。
「ちょっと男子。盛り上がり過ぎぃ」
「だそうだ木更津」
「はわわわ」
君津だけ流れに乗れていなかったが、それ以外は完全に呼吸を合わせていた。
これが本番で出来ればいいのに…………。
そして、それを聞いた旭が納得したように笑った。
「そっかー、一年生が盛り上がっていたならいいかー」
「そ、そうだぞ旭雫先輩! べつに何も問題ないぞ!」
「そうですよ! これから春大会の話をするところでして! なぁ柏!」
「あ、ああ。そうだな!」
二年生たちが必死に同調する。
「そうだよねー。まさか大切な春大会のこと忘れていたなんてことないよねー?」
「「「そんなまさか!」」」
一年生たちはなぜ二年生たちがゆるふわ担当の旭先輩に怯えているのか分からない様子だった。
しかし二年生たちは知っている。本当に怒らせてはいけない人がどういう人かを。
「そっか。良かった」
「「「はは、ははは……」」」
愛想笑いで誤魔化す二年生たち。
そんな時、教室の扉が開く音がした。
「何この空気?」
「あ、
みんながそちらの方を向くとそこには真面目担当の三年生、
我孫子は旭の方へと近づく。
「雫、何していたの?」
「何って、人狼してたんだよー」
「へぇ、この大会前の時期に?」
「そうだよー、すごい盛り上がったんだよ―」
「ふーん、どういうことか説明してもらおうかしら柏、松戸、成田」
冷たい視線を三人に向ける我孫子。
三人は状況を理解して、素直に怒られるのだった。