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第8話 これはおかしい!!!

 入学式初っ端から盛大に遅刻をぶちかましたレイゼルと私だったけれども、どうやら私達の担任の先生らしき人からは「つ、次からは気を付けてくださ~い……」くらいにしか言われなくて、結構私達は安心した。


 ……まぁ、多分それがテケテケから逃げろ的なホラーゲームに出てきそうなチビデブが、顔を紅潮させながら私の後ろでアヘ顔をしていたからだろうけど。


 だって先生の顔、ものすごく引き攣ってたもん……女性だったから嫌悪感半端ないだろうな。


 私も嫌悪感で半端ないけど。



 ただ、クラス分けの発表ではかなりの一悶着があった。






「はぁ~~~!?? おいどういう事だよこれっ!! 先生どうなってんの!?」


「と、私に言われましても~……実は学校側の決定なんですよ~」






 というのも、クラスがなんとレイゼル以外、み~んな女の子しか居ないからだ。各国の王女様や貴族の令嬢、大富豪の娘……完全に選り取りみどり。


 これが分かったのは教室に着いた後で、次々と女の子ばかりしか教室にやって来ないから「何で!?」と聞き出したレイゼルに担任の先生も「ですよね~、そう思いますよね~……」と言って、実はレイゼル以外みんな女の子であるということを言ったら、さっきのような反応をしたという訳だ。


 でも先生まで女性に統一しなくても……うーん、ゲロ以下な国が介入した匂いがプンプンするなぁ。



「それで先生、もしかしてだけど独身だったりしない?」



 レイゼルもどうやらそう思っていたようで、ちょっと聞いてみたら先生は「へっ!? あっ、はい。実はそうなんですよ~? も、もしかして私を狙ってますか~? ダメですよ~、私は教師でレイゼル君は私の大切な生徒(以下略)」と答える。


 まぁ要するにこういう事だよね……。





 先生含むクラス全員の女とヤッちゃいなYO☆






 っていう御膳立てだよね、完全に膳をフルコースで並べられてるよね。大丈夫なのそれ、いくら勉強しに来たから最初からそういう目的じゃないとはいえ、同級生の男子達が血涙するよ。



「だとしてもこれはやりすぎだし、おかしいって!」




 バンッ! 




「そうだ!! 何故そやつで僕様じゃないんだ!? おかしいだろう!!」



 そう言い、ドアを勢いよく開けるとチビデブ……いやオリバス殿下がイミフな事を言って入ってきた。



「そ、そう言われましても~」


「それに、それにっ!! 


















 何故僕様のノエル嬢と離れ離れにしたんだっ!! しかもその勇者の隣にだッ!! 羨゛ま゛じい゛っ!!!」



 ……お前が血涙するのか。



「(ノエルと隣になれる)お前の席(は絶対に)ねぇから!! 



 お前なんかがノエルの傍に居られるとかおこがましいんだよ! というかお前何ノエルにさりげなく自分の物扱いしてんだよ、ノエルは俺のでお前のじゃねぇぞポークビッツ野郎!!」



 ダウト、私はどちらの物でもありません。あとレイゼル、チビでデブな気持ち悪い王子だからといって、両手で中指を立ててそれを向けるんじゃありません。周りの女の子達が悲鳴を上げてるでしょうが。先生に至っては涙目だぞ、先生たぶんまだ新人なんだろうな。


だって「あ、あのぉ~、やめてくださ~いレイゼル君! ダ、ダメですよぉ~……」って言ってて言い方がかなり優しいし。



「ぼ、僕様に向かって……!!」


「きっ、貴様ッ!! よく言ったッ!!!」



 護衛騎士(総勢30人)の隊長だと思われる人が一瞬だけ窓からひょっこりと現れると、何故かそれだけを言い残して、みんながそっちを向く前にサッと隠れる。



「今よく言ったって言った奴は誰だ?! そやつも僕様の事を侮辱したなっ!? 僕様は、僕様はこの国の王子なんだぞっ……!!」



 プルプルしながら全く可愛くない涙目で泣きそうになっているチビデブ。おそらく甘やかされて育ったから、今までそうやって酷い言葉を言われた事がないんだろう。私は大丈夫だけど、他の人からは相当嫌だったらしい。


 ……面倒、というかあまり気は進まないけど仕方ない。



















「……たぶんカラスの鳴き声だと思いますよ、カラスって頭良いので」


「僕様もそうだと思ったんだ、ノエル嬢は博識なのだなっ♡」



 泣き出したら色々と面倒だと思い、私はそう言うとチビデブはそれに食らいつく。おい一瞬で機嫌取り戻したぞ、チョロくないかこの王子。するとこのチョロ王子は何かに悟ったかのような顔をして話始める。







「はっ……!? 










 もしや、ノエル嬢も僕様と同じ気持ちなのだろう? 


 やはりそうだ、ノエル嬢も僕様と本当は離れ離れになるのが嫌で嫌で仕方がないんだ! 意外とノエル嬢はそういう所が素直ではないのだなっ♡


 ノエル嬢、僕様は絶対に王族の権力を使って何としてでも行使し、ノエル嬢と同じクラスになって"父上みたく"なってみせる!! 


 そ、そしてッ! 僕様はノエル嬢のクッションやペットとして……♡ ふ、ふふ、ぶひっ♡♡」


「うわきっつ、きっしょ…………」



 調子に乗ったチビデブの台詞にその場の空気が見事に凍りつき、あまりにも気持ち悪い&この国の未来をいつか担う者として最低過ぎる発言の王子に、周りの令嬢達全員が養豚場の豚の糞を見るような目で見つめる。たぶんみんな私が言ったことと同じ事考えてると思う。


 一方王子は私のつい口から出てきたセリフで身悶えていて、格○けチェックだったら一発で映す価値なしの状態になっていた。


 というかこの空気どうしてくれる、ガイダンスまだ始まってすらないんだけど。これはまずい、そう思い私は先生に「えっと、ガイダンスの説明お願いします」と言うと、先生は私からの救いの一言に「はい~! では説明しますね~!」と笑顔で答えた。



「では改めまして……このクラスの担任として受け持つ事になったクレアです。


 このクラスは勇者であるレイゼル君の為だけに、学校によって特別に用意されたクラスです。選ばれた人だけがこのクラスに入れ、お互いに学業を通して仲良くなる事(意味深)がこのクラスの存在意義ですので、皆さん卒業まで健やかな学校性活を送りましょう! 


 ではこちらの時間割を配布しますね」



 そして私とレイゼル、それから他の令嬢達全員チビデブの存在は心の中で消し去り、存在が消えたチビデブは「僕様を無視するなっ!!」と地団駄を踏んでいた。いや、いつまで居るつもりだお前は。



「あー、午前中はやっぱ座学なんだな」


「1時間目 歴史、2~3時間目 魔法化学。意外と、普通そ…………う!? 」



 けれども4時間目に書いてあった内容にでっかく"保健 実技"と書いてあり、そこから嫌な予感がした。



「……あの、何で4時間目は全部保健なんですか? 2~3時間目は魔法の実技とか込で2時間使うのは分かるんですけど……1時間目とかは色々バリエーションあるのに」


「えっ……あ、それは~……」



 するとクレア先生は顔を一気に赤くさせる。あ、この人初心……処女か。というか、今ので察しちゃったよ!! するとレイゼルの目がキラッキラに輝く。



「えっ!? 






















 つまりノエルと1時間ずっとセッ○スしていいって事!??」


「1人だけはダメですよ~!?」



「何で!? 俺、ノエルじゃないと勃たないし、ノエルとしかセッ○スしたくないんだけど! ノエルとしか、セッ○ス、したくないんだけど!! 嫌だ俺ノエルと1時間濃厚で濃密なセッ○スしてたい!! いっぱい中出しセッ○スして午後の専攻授業受けたい!! ノエルだけといちゃラブセッ──」


「その単語を連呼すんな!!!」



 私は流石に人前なのでレイゼルの足を思いっきり踏むと、ミシッという音を立てる。レイゼルの様子は……うん、シアワセソウダナーという感じ。だけどこの事を知ったチビデブは「嘘だッ!!!!」と、ひぐらしが鳴きそうな感じのセリフと迫力で言っていた。



「何故こんな男の為だけに、そんな男の夢を叶えるような羨ましい授業をッ!! こんな事、あってはならない!!! ノエル嬢に全てを暴かれて犯されるのはこの僕様ただ一人──」


「黙れ豚そこで這いつくばっていろ、その汚い口を縫い付けられたいのか?」



 思わず私はお父さんと同じ感じに言ってしまうと、チビデブは「ブヒィィイッ♡」と醜い豚になって喜んでいた。


 ……どうしよう、こういう変態にはこういう事を言うと逆効果なのに!! つい、口からこんな言葉が!! 私の方こそ自分で自分の口を縫い付けたい!!! 



「……えー、あの…………じゃあ、4時間目はレイゼル君の意向で、ノエルさんだけがレイゼル君と授業(意味深)を受けることとします。では次に自己紹介を──」



 本人が私以外とその気にならないのなら仕方ない。まぁ、私にとっては何も仕方ないじゃ済まないんだけど。するとその言葉を聞いた令嬢達は騒ぎ始めた。



「何ですって!?」


「横暴ですわ!!」


「私は勇者様と子作りをする為にこの学校に入ったのですよ!?」


「そこの男爵イモ風情が私を差し置いて勇者様と子作りだなんて、よくもおこがましい事が言えますわね?」


「勇者様もどうしてそんな女性としての象徴が控えめな方を選ぶのですか!?」



 捻り潰すぞ、令嬢共。


 私の右手がぷるぷると「やれ」とヤクザの頭が指示を出すかのように私の心に訴えてくる。だけど駄目だ、我慢我慢……相手は女の子、相手は女の子だぞ……顔が命なんだから。女の子でよかったな、そうじゃなかったら顔を変形させてた所だぞ!! そう思っていると、騒ぎ始める令嬢を静かにさせる美しい声が辺りに通った。



「そう騒ぎ立てていても仕方がない事でしょう? レイゼル様本人がノエル様以外はありえない、生理的にもできないのだとハッキリこの場で仰っているのですから。もっと上流階級の女性として相応しい振る舞いをしましょう?」



 4時間目の授業になる度に、絶対に今みたいに無様に虚しく騒いだりすんなよ? うるせぇから。


 そんな意味にも捉えられる言葉が聞こえた方に、私とレイゼルは顔を向けると……私たちの真後ろには茶髪の美人が居た。



「今は自己紹介の時間でしたね。ノエル様は私とは初対面ですが、もう私達の間では有名な方ですし、今更自己紹介をする必要も時間も無いので私から手短に……」


「あぁ、はい……」



 私もそっちの方ではわりと有名人だったんだな……というか、本当に綺麗な人。思わずレイゼルと私は絵画とか美しい彫像などの美術品を見ている気持ちになってじっと見つめる。だけどなんか、思わず見蕩れてしまうような不思議な力を感じるな……。あ、もしかしてこの人って魅了のスキルを持ってる? たぶんそうっぽい。


 でもそれはそれとして何となく嫌でレイゼルの足をグリグリした。



「あっ……♡ なぁノエル、今嫉妬した? したよな?? 可愛いなぁ♡ でも俺の一番はノエルだからっ♡♡ さっきのは美術館の展示物を見てる感じに近かっただけで、特にそれ以上の気持ちは無いし! ほら、裸の彫像とかを見てもエロい気持ちになったりはしないだろ? あれと同じだって!」



 どうだかな!! 世の中には2次元のキャラのフィギュアを手に入れては邪な気持ちで眺めているオタクだって居るんだぞ!! ……あ、でもそれは最初からえっちものだと思って見てるからそうなのかもしれない。


 というか、嫉妬してはいない!! 絶対に!!! 


 それにしてもこの人、見た事ある気が……。











わたくしはこの国の王女、そして……あちらで豚になっている王位継承権第一位(笑)オリバスお兄様の妹であるヘレンと申します。以後お見知りおきを」


「あっ……は、初めまして、よろしくお願いします!」








 そ、そうだ!! 


 この人、あの王様の娘だ!! 前にレイゼルのお見合いの写真とか、新聞とかで見た事ある!! 


 で、そう! 王族といえばまさにこんな感じの優雅で高貴感溢れる感じよ!! やっぱりあのデブ二体は王族じゃなかったんだ! きっとそうだ! というか本当にあのクズデブの血入ってる?! 全く似てない!! いや、似てるのは……ある意味胸と腰と太ももとかが、ふくよかでいらっしゃる事か。



「いやぁ、久しぶりだなヘレン! また綺麗になったんじゃないか?」


「ふふ、レイゼル様こそまた体が成長なさって男性の殿方らしくなりましたね。それとあまりお世辞を私に言っては、ノエル様が嫉妬してしまいますよ」



「えー、そう? これも全部ノエルとノエルの家族を守る為……それとついでに世界の為だからな! それとノエルの嫉妬は10回くらい抜ける」



 おい、世界をついでにすんな。あと誰が嫉妬だって?



「相変わらずですね、実は私……初めて会った時の事を会う度に思い出すんですよ。



 あのノエル様語りを」


「えっ」



「初対面の時は世間話でもと思ったのですが、ずっと最初から最後までノエル様の事ばかりで……気が付けば半日がノエル様の布教で消し飛ん──過ぎていました」


「ほんと、うちの変態がすみません……」


「えへ……だってぇ~! ノエルが可愛いんだぞ!? 男にノエルの可愛さを知られるのは嫌だけど、それでもずっとノエルの可愛さを誰かに言いたかったんだぞ!? 仕方ないじゃんかぁ~~!」



「ここで予め言っておきますが、私はレイゼル様とこれ以上の関係になるつもりも、なりたくもありませんからノエル様は安心してください。それにレイゼル様のお話はとても興味深く、どれも面白かったですよ」


「そ、そうなんですね……」



 本当は惚気話をずっと誰かに話したかったと、だからそれが王女様に向かってしまったんだ。村には私の事を話せそうな歳の近い異性は居ないし。それでたぶん王女様は王様に言われてレイゼルを落とそうとしたんだろうけど、心が折れたんだな……。


 って、何で私に安心しろと言ったんですか王女様。というか、結構ズバッと言いますね。



「ただ会う度にノエル様のことを時間になるまで永遠に話だけを知らされていたので、ノエル様がどんな方なのかが気になっていたのです」


「えっ……そ、それはちょっと、恐れ多いんですが」



「そして今回ノエル様に会ってみて私は思いました」



 も、もしかして期待を裏切られたとかそういう話!? だってこの世界の女の子ってみんな可愛いけど、チュートリアル用ヒロインだから他のヒロインに比べたらそこまで可愛くないですよ!? あっ、いや推し(今や自分だけど)は世界一可愛いけれど、服の豪華さっていうか!!


 ソシャゲとかのSSRが最高だったとして、私はRですが!? 言っちゃえばウ○娘のサポートカードのRくらいですよ!?? 豪華じゃなくてつまらない感じのイラストというか、まぁ、そんな感じですよ!?


























「結婚式は何時頃挙げますか? 


 その時には私にお知らせ下さい、私が立派な式場ラブホをご用意しておきますので! あと御祝儀はどれくらい払えば……あっ、私の個人で持っているダイヤモンド鉱山をお付けしましょうか? まだまだ足りなければ言ってください、この推しCPの尊さの前では全く価値がありませんから!!」



 んん?! 


 ちょっ、王女様!? 急になんか王女様の様子がおかしくなったぞ!?? 



「おそらくお2人の晴れ舞台を邪魔する、間に挟まったりNTRをしようとする愚かな人達、特に一生慕いたくないお兄様チビデブがやって来るとは思いますが、そこは私にお任せ下さい。


 絶対にこのヘレン・ミシュド・ロルバーグの名にかけてお2人の愛の営みを邪魔させません!! ……ところでお2人はレイゼル様が話してくださった時よりもどこまで関係が進んだのでしょうか? 


 も、もしやもうあんなこといちゃラブセッ○スこんなことア○ルセッ○スをされた仲だったり……!?」


「じ、実はその…………まだキスすらしてないんだよな……ほ、ほら? ハジメテは大切にしたいしさ……」



「きゃーっ! 焦れったい!! (いつかお2人に100回絶頂しないと出れないお題部屋を作って)いやらしい雰囲気にして差し上げましょうか!??」


「マジで!? でもちゃんと一回目はノエルが俺の事求めてくれた時がいいから、二回からな!」



「待ってくださいレイゼル様、そんな事を仰っては私の筆が捗ってしまうではありませんか!! 私の薄い本のページが増えて厚い本になってしまうではないですか!!!」



 …………王女様ッ!?? いや、王女!????? 


 まさかの初対面で王女様オタクだった事が判明したんだが!? 驚きすぎて、ちょっと放心してたんだけど!! 


 ん? 待て、もしかして大学形式のこの教室で一番端の窓側+私達の後ろってことは……この席順、仕組んだなっ!? 



「はっ!? …………ノエル様、言うのが遅くなってしまいましたが、私達……立場など関係無く、とても良い友人関係になれると思うのです。というか友人にさせて、後ろから見守らせてください。損はさせません、もしそのポジションを得る為にお金ソールが必要とあれば、いくらでも課金致します!!」


「アッ、ハイ……よろしくお願いします、王女様」

「ヘレンとお呼びください、敬語も結構ですよ」



 凄く食い気味に言われたな……。










「えっと……じゃあ、ヘレン………………ちゃ、ま」



 あっ、ちゃんと様が混じってしまった。
















「ウグァ────ッ!! 持ってけ泥棒!! これを貰ってくださいませ!!」



 そして私は円札ならぬ、金貨をこの国の王女によって制服の中へ入れられた。



「へ、ヘレンちゃん、それはちょっと困るんだけど!?」


「ノエル様が私の名前をッ!! 推しから構成される推しCPに認知され、隣で見守る事ができるのにここまで幸福感を感じることができるとは思いませんでしたッ!!!」



「だから私の服の中に金貨ソール入れないで!?」


「じゃあ俺が全部貰っとくからさ!」



「そう言いながら服の中に手を入れるな、絶対触りたいだけでしょ!! ちょっ、レイゼル何処触って……♡」


「あ、もう気持ちよくなってる、ほんとにノエルはむっつりスケベでエロいなぁ♡ 可愛い♡♡」


「良いッ!! お2人とも!! 最高です!!! 」















「ブヒィッ、ブヒィィイィィッ!! (僕様を無視して、ノエル嬢にそんな羨ましい事をするなぁぁぁぁぁあああッ!!!)」



「は、はわわ……皆さん、私達の存在忘れちゃダメですよ~!!」



 あっ、そうだった。

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