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最強ソルジャー、異世界でも最強だった。〜チート能力?強力魔法?当たらなければどうという事はない!
最強ソルジャー、異世界でも最強だった。〜チート能力?強力魔法?当たらなければどうという事はない!
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異世界ファンタジー冒険・バトル
2025年02月24日
公開日
8.4万字
連載中
秘密組織『タワー』の人体実験部門“アイランド”から逃げ出した最強の強化ソルジャー・エイジ。故郷と思われる日本にて両親を探し求めながらアイランドからの刺客を返り討ちにする流浪の旅を続けていた。が、爆発に巻き込まれたエイジと、相棒の少女型スーパーAI・R.I.L.M(リリム)は目を覚ます。そこは異世界『ルプリス』だった。

第一章:最強戦士とスーパーAI、異世界へ

第1話:爆発したら、異世界だった。

「はあ、はあ…」


 疲れ切ったエイジはようやく、監視カメラなどのない田舎町に逃げ込む事に成功した。


「はあ…。ここまで来れば……」


 だが安心したのもつかの間だった。


「そこまでだよ、エイジ」


「……缶コーヒーを飲む時間すら与えてくれないのか」


「アラートレベル5。第一級ファーストソルジャーの可能性85%」


 神秘的な雰囲気を醸し出している美少女『R.I.L.Mリリム』が、即座に目の前に立った男の危険性を伝える。


「ふーん、キミがエイジか。私がここに来た理由はもう分かっているよね?」


 刹那、黒いスーツに身を包んでいた、一見ビジネスマン風の男の姿がかき消えた。


「遅い!」


 次の瞬間には男は、エイジの目の前に立っていた。


「!」


「やれやれ。もう少し私を楽しませて……」


 リリムが危険を知らせた通り、男の戦闘能力は第一級ソルジャーのそれにふさわしいものだった。

 だが───エイジは男の攻撃に反応して防御する。


「何っ!?」


 男は驚いた表情でエイジを見るが、次の瞬間には胸部がへこみ、口から血を流していた。


「『アイランド』も地に堕ちたもんだな。今はこの程度の男でも第一級ソルジャーになれるのか」


 エイジは吐き捨てるように呟くと、念の為死体を確認する。

 武器や現金など、役に立つ物を持っているかも知れないからだが。


「………お。結構武器を持ってんな」


 男のアタッシュケースの中には銃や爆弾など色々なものが入っていた。エイジはアタッシュケースごと戴くことにした。

 リリムも男の死体をスキャンニングした結果、驚愕の事実を知る事となる。


「………エイジッ!!」


「なんだ?」


 リリムが一度言葉を切ると、エイジに衝撃の事実を伝えるべく、その音声を最大音量で流す。


「この男の腹部に、機械反応があります!」


「……なに!?」


「しかもこの反応は……まさか!?」


 リリムが言葉を詰まらせたその時。男の死体が突如爆散した。


「くっ!?」


 エイジは咄嗟に防御態勢をとるが、爆風と破片は防ぎきれずに後方へと吹き飛ばされる。


(俺とした事が、こんな古典的な罠にっ!?)


 エイジはそのまま気を失った。


◇◇◇◇◇


「ん…ここは?」


 目を覚ましたエイジは驚いた。何故自分が森の中に倒れているのか?


「リリム…ここがどこか分かるか?」


「解りません。私のデータに無い森です。さらにここはネットワークから全て遮断された、不可解な場所です」


 オートマチック腕時計のように、振動がある限り半永久的な動力を得られるリリムは、常にネットワーク接続されているため、エイジが知りたい情報が瞬時に手に入る。

 しかし今いる場所は、リリムですら知らない場所らしい。


「エイジ……それにアナタの外見ですが」


「うん? 俺の外見がどうか……ん?」


 リリムの問いかけを遮るように、何かに気づいたのか、エイジは前方を見つめる。


「あれは……何かいる」


 “アイランド”にいた時から、特殊訓練と特殊ドーピングで常人を遥かに凌ぐ身体能力を持つエイジ。

 その聴覚は、人の悲鳴と怒鳴り声がハッキリと聞こえた。


「今の聞こえたか、リリム」


「はい。しかし……」


「なんだ?」


 リリムは言いにくそうにしながら、エイジに伝える。


「ここはネットワークから遮断された世界です」


「それはさっき聞いたよ。何か問題あるのか?」


「つまり……今の怒鳴り声は、ホモ・サピエンスのものではないと確率が大きいです。リスク的にも…」


 リリムの言うことも一理ある。そうでなくとも痕跡を残さぬよう、行く土地行く土地で偽造の身分証明を作っていたエイジだ。

 余計な事に首を突っ込まないように、トラブルには敢えて関わらないようにしていた。


「けど……聞こえるんだよ、悲鳴と。脅しているような怒鳴り声が」


「エイジ……」


 リリムはそれ以上何も言わなかった。

 “アイランド”にいた時からのエイジを知っているリリムには、分かっていたのだ。危機に瀕している人を、見過ごす事の出来ない性格だという事を。


「分かりました。データにない土地で地元の人間を助けるのは、あとで利益になる可能性もあります」


「ありがとう、相棒」


「いえ」


 そしてエイジとリリムは声の方向へと走り出した。


◇◆◇◆◇◆◇


(な、なんだ!?)


「貴様ら! 動くな!!」


 エイジ達が到着すると、そこには馬に乗った50人ほどの騎馬兵達、そして数人の幼い少年・少女を囲んでいる甲冑姿の兵士達がいた。

 だが少年や少女は手足を縛られているどころか、両足首には鉄球が付けられており逃げられないようにされていた。どうひいき目に見ても誘拐、もしくは拉致である。


「何をやってるんだ?」


「誰だ貴様は!? よそ者が口を出すな!」


「どうやら言語や会話によるコミュニケーションは可能のようですね」


 しかしリリムのアドバイスを他所に、エイジの中で“スイッチ”が入る。自分もこうしてアイランドに連れてこられたからだ。


「10秒だけ待ってやる。その子らを置いてさっさと失せろ」


 指をバキバキと鳴らしながら、エイジは騎馬兵たちを威嚇する。


「貴様ぁ! 我々に歯向かう気か!?」


 騎馬兵の一人が剣を抜こうとするが、その肘から先が逆方向に曲がっている。


「ぐあぁあ!」


 エイジは文字通りの目にも留まらぬ速さで男の腕を掴み、肘打ちで逆方向にへし折ったのだ。

 そしてそのまま続けて次の男に狙いを定める。だが───


「くたばれぇえ!!」


 一人がやられても他の兵士がいると言わんばかりに、馬上から槍を持ってエイジに向けて突撃する。


「挟み撃ちにして死角からの攻撃か。少しは頭を使うじゃないか」


 しかしエイジは騎馬兵の槍を難なくかわし、片手で掴んだ。


「な!?」


「ふんっ!」


 驚く騎馬兵に構わず、エイジはそのまま馬から引きずり下ろす。

 そしてそのまま兵士の頭を鷲掴みにして持ち上げた。


「ぐああ! は、離せ!!」


「離してあげましょう、エイジ。あなたならそのまま頭部を握りつぶしかねません。それにこの連中から情報を聞き出すのも、悪い選択ではないでしょう」


 リリムの助言と共に、エイジは掴んでいた兵士の頭を離した。


「けほっ! げほっ!」


 その場に崩れ落ちる兵士。


「お前に幾つか質問がある。正直に答えろ」

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