発動と同時に現れた無数の氷の礫は、一斉にロックリザードたちへと襲い掛かっていった。
それに気づいたロックリザードたちは慌てて防御姿勢を取るが、礫はそんな彼らなどお構いなしにその身体を撃ち抜いていく。
それでも、ロックリザードは中層では手強い部類のモンスターだ。
身体に纏った硬い岩は氷の礫を砕きながら跳ね返し、地面はまるで雹が降ったように白く染まる。
結果として凛子の魔法は、防御の間に合わなかった2割ほどのロックリザードを倒すにとどまった。
「ちぇっ、あんまり減らせなかった」
「あれだけ倒せれば上出来でしょ。それじゃ、後は任せたわよ!」
不満げに唇を尖らせる凛子に答えながら、私は数の減ったロックリザードの間を縫うようにしてジュエルリザードの元へと疾走する。
途中で進行の邪魔になるロックリザードを片手間に吹き飛ばしながら一気にジュエルリザードへと肉薄すると、振り上げたメイスをその頭へ向かって力いっぱい振り下ろす。
叩きつけるように振り下ろされたメイスはジュエルリザードの額の宝石とぶつかり、ゴツッと鈍く重厚感のある音を響かせながら受け止められた。
それでも衝撃までは防げなかったらしく、殴られたジュエルリザードは前足でたたらを踏むようにして身体をふらつかせる。
「もらった!」
まずは1匹。
振り下ろした勢いのままもう一撃メイスを叩きつけようとする私だったが、横合いから思わぬ邪魔が入る。
まるで仲間を守るようにもう1匹のジュエルリザードが尻尾を振るい、その先端が私の身体を捉えた。
「ぐっ、うぅっ!?」
すんでのところでメイスで受け止めるが、そのすさまじい衝撃で私の身体は勢いよく吹き飛ばされる。
地面をバウンドするように受け身を取る私と、衝撃で半分に折れたメイス。
「穂花ちゃんっ!?」
「大丈夫よっ! あなたは、そっちに集中しなさい!」
心配そうに声を上げる凛子に答えながら、私は埃まみれになりながら立ち上がる。
折れたメイスの軽さを感じながら顔を上げれば、そこにはこちらを見つめながら大きく口を開ける2匹のジュエルリザードの姿があった。
「やばっ!?」
慌てて駆け出す私をあざ笑うように、2匹の口の奥が鈍く輝く。
同時に彼らの纏う宝石も淡く輝いたかと思えば、2匹の口からは真っ赤に燃える炎のブレスが放たれた。
線を描くようにまっすぐに私のもとへと放たれたブレスを避けることもできず、それは駆け出した私の身体を飲み込んで爆発を起こした。
もうもうと広がる黒煙を眺めながら勝利を確信した様子のジュエルリザードは、次の標的を探すように視線を巡らせる。
「……よそ見しちゃ駄目じゃない。ちゃんと、最後まで相手してよ」
その一瞬の隙をつくように、黒煙から飛び出した私は