”腕が治った!?”
”ちょっと待って! 今なにしたの!?”
”もしかして、回復系のスキル持ってる?”
”それにしたって、あの速度で回復するのは異常だろ”
「うわぁ、だいぶ盛り上がってるわね」
「そ、それはそうだよっ! いったい、なにが起こったのか説明して!」
ざわつくコメントたちを眺めていると、我に返った凛子まで私へと詰め寄ってくる。
「ちょっ、ちょっと! 近いって……! ちゃんと説明するから、まずは落ち着きなさい」
勢い余ったように鼻と鼻が触れ合ってしまいそうなほど顔を近づけてきた凛子に、私は思わず身体をのけぞらせる。
「あっ、ごめん……」
頬を染めながら申し訳なさそうな顔をしながら慌てて離れていく凛子に、私はドキドキと高鳴る胸を隠しながら頷いた。
”てぇてぇ”
”美少女が仲良くしてる姿だけでご飯3杯はいける”
”もっとイチャイチャしてもろて”
「うるさいわねっ! 別にイチャイチャなんてしてないから!」
なぜか急に色めき立つコメントたちを一喝して、私は大きくため息を吐く。
「はぁ……、コメントを相手にしてたらいつまで経っても話が進まないわね。しばらく無視するから、そのつもりで」
”堂々と無視宣言してて草”
”見捨てないで;;”
「はいはい。質問は後で受け付けるから、まずは説明をさせなさい。あなたたちだって、私のスキルについてとか興味あるでしょ?」
”それはそう”
”前置きはいいから、早く説明して!”
”気になって夜しか寝られません!”
相変わらず勝手に盛り上がっていくコメントたちはスルーして、私はひとつ咳ばらいをして口を開く。
「さっきの腕が直ったのは、当然だけど私のスキルよ。ついでに言えばケガや服を直したのも、戦闘中に折れたり曲がったりしたメイスが直ってたのもそのスキルの効果ね」
「あ、やっぱりあれって本当に折れてたんだ。目を離したらすぐに元通りだったから、見間違いなのかと思ってた」
「まぁ、そう思うのも無理はないかもね。実際、私もできるだけそう思わせるように振舞ってるし」
スキルは探索者にとって大事な飯のタネ。
人によっては、むやみやたらに言いふらすのを良しとしない人だって居るくらいだ。
「でも、だったら配信で公開するのはまずいんじゃ……。あれだったら、無理に言う必要はないんだよ?」
「ふふ、気を使ってくれてありがとう。だけど大丈夫よ。別に知られたところで、どうってことない程度のスキルだから」
それに、高ランク探索者になれば嫌でもある程度のスキルは把握されてしまうものだ。
現に私だって知り合いの探索者のスキルはざっくり把握しているし、逆に相手も私のスキルを知っている。
「むしろこのまま、『もの凄いスキルを隠し持ってる』なんて噂が独り歩きする方が面倒だわ」
それが、私がスキルを公開しようと思った理由のひとつでもある。
なにより他の強スキルを持っている人たちと違って、知られたところでデメリットなどない。
私のスキルとその使い方を知ったところで簡単に真似できるはずもないし、むしろできるというならそれはそれで強い探索者が増えて私が楽をできる。
「それで、肝心なスキルの正体なんだけど……」
そこで一度言葉を切ると、真剣な表情で私を見つめる凛子に微笑みかけながら私は再び口を開いた。
「私のスキル、それは『