「私のもうひとつのスキル。それは『死中に活』っていうユニークスキルよ」
そのスキルの名前を聞いても、凛子はピンと来ていない様子だった。
それは視聴者たちも同じだったようで、コメントにはクエスチョンマークが飛び交っていた。
”マジで聞いたことないスキルだ”
”Sランクが持ってるんだからかなり強いスキルなのは間違いないだろ”
”でも、さっきハズレって言ってなかった?”
「ええ、たぶん普通の探索者にとっては、ハズレに近いスキルね。このスキルの効果で、私は死にかければ死にかけるほど強くなるの」
それが
常時発動型のいわゆるパッシブスキルであるこれは、普通に生活しているぶんにはなんの効果もない。
だけど大ケガをしたりなんかで死にかけたりすれば、回復した時にスキル保持者の身体能力を向上させる効果があるのだ。
そしてそれは、死が近ければ近いほど効果も上がる。
だからこのスキルで強くなろうと思ったら、何度も大ケガをして死にかけなければならないのだ。
”なにそのクソ効果……”
”いったいどこの惑星の戦闘民族だよ……”
コメントのざわつきに合わせるように、凛子も心配そうな表情を浮かべて口を開く。
「それって、危なくないの? 普通に考えれば、条件が難しすぎる気がするけど……」
「まぁ、否定はしないわ。実際、最初の頃は本当に死んじゃうかと思ったことだって何度もあったし。だけどそれでも私は強くなりたかったから」
だから頑張った。
時にはひとりで、時には知り合いを頼り。
何度も死にかけながら、何度も痛みに意識を飛ばしながら、私はただひたすらに強さを求めて戦い続けた。
「そのうち痛みにも慣れて、ちょっとやそっとじゃ気絶しなくなったわ。たぶん、スキルの効果で精神的にも強化されたのね」
私のこれまでの歩みを聞いてなんとも言えない表情を浮かべている凛子に、私は努めて明るく声を掛ける。
「これで私の秘密はだいたい話したわ。なにか、質問はあるかしら?」
「質問って言うか……。まだ話を飲み込めてないっていうか……」
混乱した様子の凛子だったけど、それでも小さく首を振りながら声を上げる。
「とりあえず、本当に配信でここまでスキルを明かして大丈夫なの? 隠しておきたかったんじゃ?」
「別に、問題ないわ。さっきも言ったかもしれないけど、知られたところでデメリットなんてほとんどないから。私の力はシンプルで、だからこそ対策しようがないのよ」
もしも私を害そうと思うような者が現れても、修復術がある限りちょっとやそっとじゃ私は死なない。
そして殺しそこなえば、私はさらに強くなって反撃することができる。
つまり私としては、即死せずに修復術を使えさえすればそれで勝ちなのだ。
「だからむしろ、公開するなら全部言っちゃった方が危険が少ないの」
私のそんな答えに、凛子はなんとなく納得したように小さく頷いた。