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第31話

「でも、例えば同じスキルを持ってる人が居たら真似されちゃうんじゃ?」

「真似できるなら、してもらう方が助かるわ。そうすれば強い探索者が増えて、結果的に私が楽できるから」

 自慢ではないけど、Sランク探索者というのはそこそこ頼られる存在だ。

 ダンジョンでイレギュラーなどの異変が感知されれば管理局から調査の依頼が来るし、時には政府から直々にドロップアイテム採取の依頼が来ることだってある。

 数の多くない高ランク探索者が持ち回りでそんな依頼をこなしていっても、人手が足りていないのが実情だ。

 まだ学生と言うことで控え目にしてもらえている私ですら大変なのだから、他の人たちはまさに猫の手でも借りたいといった状況だろう。

「もちろん断ることはできるけど、そうすると偉い人からの心象が悪くなっちゃうから……」

 そうなれば、必要な時に必要な支援を受けることが難しくなる場合だってある。

 結局のところ、こういうのは持ちつ持たれつってことだ。

「というわけで、私としては実力がある高ランク探索者が増えるのはむしろ大歓迎ってわけ。そのために私の技術が必要なら、喜んで教えるわ」

 私がとりあえず凛子の修行に付き合うつもりになったのも、半分はそういう思惑があったからだ。

 最初はそこそこの実力まで伸ばせればいいかなと思っていたけど、彼女のポテンシャルが予想よりだいぶ高かったのはまさに嬉しい誤算だ。

 私と探索者としての活動範囲が完全に被っている彼女が強く育ってくれれば、それだけ私に回ってくるはずだった依頼も分散されるはずだ。

「だから、私はあなたにも期待してるのよ。これからも協力するから、しっかり強くなってちょうだい」

「……うんっ! もちろんっ!!」

 満面の笑みを浮かべながら嬉しそうに頷く凛子に、私も微笑みとともに頷きを返す。


 ”リンホノてぇてぇ”

 ”ホノリンだろ。ふざけんな”

 ”どっちでもいいだろw すぐにカップリングするのやめろw”

 ”女の子同士の友情っていいな。おっさんの俺には眩しすぎるぜ”


「……そういえば、まだ配信してたのね。イレギュラーの後処理もあるし、今日はそろそろ終わりにしない?」

 なんだか一部が異様に盛り上がっているコメントを眺めながら提案すると、凛子も頷居ながら答える。

「そうだね、私もちょっと疲れちゃった。……というわけで、今日の配信はここまで! 次の配信はいつになるか分からないけど、近いうちに絶対するから見に来てね。それじゃ、おつリンリンッ!」


 ”おつリンリンー”

 ”次の配信も穂花ちゃんと一緒にお願いします!”

 ”今後のリンリンちゃんの成長に期待!”


 カメラに向かってしばらく手を振った後、凛子は配信を終えるとその電源を落とす。

 そのまま手元に戻ってきたカメラを持って、凛子は小さくため息を吐いて私に向き直った。

「ふぅ……。穂花ちゃん、今日はありがとう。おかげで、配信もすっごく盛り上がったよ!」

「どういたしまして。私も、凛子が居てくれたおかげで今日のイレギュラーは楽だったわ」

 ひとりであの数のモンスターを対処するのは、文字通り骨が折れる。

「それに、凛子の直すべきところも見つかったし。次からは、そこを重点的に鍛えていきましょう」

「次からって……。次も、付き合ってくれるの?」

 驚いたように目を丸くしながら、恐る恐るそう尋ねてくる凛子。

「当然でしょ。私はあなたに才能を感じたんだから。今さら嫌だって言っても、もう逃がしてあげないんだから」

 当たり前のようにそう答えた私の言葉に、凛子は今日一番とも言える笑顔を浮かべて頷いた。


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