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第91話

「え!? できるのっ!?」

 私の発言に、凛子は驚いたような表情を浮かべながら声を上げる。

「そりゃあまぁ、やろうと思えばできるわよ。と言っても、私の場合は本当にただ垂れ流してるだけになっちゃうけど」

 そもそも、修復スキルにだって魔力を使用しているのだ。

 つまり私の中にもしっかりと魔力は存在していて、そして物を修復するためにスキル使用時には魔力をしっかりと外に放出しているというわけだ。

「だけど、修復スキルを使っていない時の奴は本当にただ純粋な魔力よ。魔法を使うどころか、別の性質に変換することすらできないんだから」

 そんなものが、いったいなんの役に立つというのだろうか。

 ずっとそう考えていたのだけど、どうやら凛子の考えはわたしとは違うみたいだ。

「でも、魔力は魔力でしょ。たとえ他の性質に変換できなかったとしても、それを攻撃に応用すれば、物理が効かない相手にも有効打を与えられるんじゃないかな?」

「……それは、考えたこともなかったわね」

 どうせ使えないんだからって、そこで最初から考えることを放棄してしまっていたかもしれない。

 だけど凛子の言う通り、使えるものはなんでも使ってみるべきだろう。

「物は試しだし、早速やってみましょう!」

 まだまだ自分には未体験の技術がある。

 そう考えると無意識のうちにテンションが上がってしまい、ワクワクとした気持ちを抑えきれなくなった私は思わず声を弾ませる。

 そのまま意識を集中させると、その瞬間すさまじい勢いで私の身体から魔力が噴出する。

「ちょっ!? 穂花ちゃんっ!? もうちょっと抑えて!」

「ごっ、ごめんなさいっ!」

 爆発的に溢れだした魔力は病室内の空気を揺らし、その魔力の衝撃は窓ガラスや扉をビリビリと激しく揺らす。

「大丈夫ですか!? なにか、すごい音と揺れでしたが、なにか問題でも!?」

「いえ、なんでもないです! ちょっとやりすぎちゃっただけというか……。ともかく、なにも問題は起こってませんから!!」

 そうすれば当然のように警備の人が慌てて病室へと駆け込んできて、そんな彼の様子に申し訳なくなりながら慌てて誤魔化す私たち。

「そうですか? いや、でも……」

 なんだか納得いっていなさそうな彼だけど、それでもしらを切り続ける私たちに根負けして微妙な表情のまま病室から出ていってくれた。

「ふぅ……、危なかったわ。もうちょっとで怒られちゃうところだった」

「もう、穂花ちゃん! いきなりあんな風に魔力を放出したら駄目だよ! 周りの迷惑になっちゃうし、それに一気に魔力を使ったら具合だって悪くなっちゃうよ」

「いや、魔力自体はそれほど減ってないし大丈夫なんだけど。……でも、周りの迷惑は考えないとね」

 少なくとも、病室で試してみるようなことではなかった。

 今回は大丈夫だったけど、下手をすれば大惨事に発展していたかもしれない。

「とりあえず、練習はダンジョンでやってみることにするわ。というわけで、あんな腹立つ奴の話はこれでおしまい! あとは、楽しい話でもしましょう!」

 反省した私はそうやって話題を変えると、面会時間が終わるギリギリまで凛子と雑談をしながら過ごすのだった。


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