ゴブリンから始まり、スライム、コボルト、ロックリザードと、次から次へと押し寄せてくる多種多様のモンスターたちを千切っては投げ千切っては投げしながらダンジョンを進んでいく私たち。
そうやって戦い続けていると、やがて後ろの方から大勢の人の気配を感じられた。
「あら。どうやら増援が来たみたいよ」
メイスで目の前のモンスターをなぎ倒しながら振り返ると、ちょうどその通路の先から権藤がこちらへと駆け寄ってきていた。
「すまない! メンバーを集めるのに少し時間がかかってしまった!」
「別にかまわないわよ。まだそれほど強力なモンスターも現れていないし、スタンピードの本番はこれからだから」
実際、今のところ現れているのはせいぜい中層までに出現するようなモンスターばかりだ。
この程度であれば、何匹現れようが私と凛子のふたりだけでも十分に対処できる。
とはいえ、せっかく来てくれたのだからしっかり働いてもらおう。
「だけど、ちょっと疲れたわね。少し休むから、前線を交代してもらってもいいかしら?」
「ああ、任せてくれ! 君たちが前線を押し上げてくれたおかげで、かなり余裕ができたからな。君たちはゆっくり休んでくれ」
「ありがとう。それじゃ遠慮なく、そうさせてもらうわ。大物が出たら交代するから。ほら、凛子ちょっと休憩するわよ」
権藤と話している間も強大な魔法を撃ちまくってなんだか少しハイになっている凛子に声をかけて、その腕を掴んで無理やり前線から引き離す。
「えぇー。私はまだやれるよ?」
「いいから、休憩なさい。魔力だって無限にあるわけじゃないんだから、撃ちすぎるとここぞって場面でガス欠になるわよ。それに、せっかく来た探索者たちにも働いてもらわないと悪いでしょ」
そこまで言うと、凛子は少しだけ頬を膨らませながらも素直に頷いて肩の力を抜いていく。
「まぁ、そう言うことなら分かった。……なんか落ち着いたら、ちょっと疲れてきちゃったかも」
さっきまでのやる気満々な姿はどこへやら、休憩を始めたかと思えば凛子はそう言ってそのまま地面に勢いよく座り込んだ。
「ちょっと! 地べたに直接座らないの! ハンカチ敷いてあげるから、一回立ちなさい!」
腕を引っ張って無理やり立ち上がらせると、汚れてしまった彼女のお尻を叩いて土やほこりを払う。
「きゃっ!? もう、穂花ちゃんのえっちぃー」
「やかましいわね。……ほら、ハンカチ敷いたからここに座って休んでなさい」
そのまま再び彼女をハンカチの上に座らせると、私もその隣で壁に背中を預ける。
「背中、汚れるよ?」
「私はいいのよ、別に。ほら、そんなことよりこれ飲んでおきなさい」
取り出した魔力ポーションを凛子に投げ渡しながら、私はぼんやりと近くで行われている戦闘の音に耳を傾けた。