「あぁ、しんど……。こういう戦いはしばらく遠慮したいわ……」
黒影の頭を叩き潰してトドメを刺した私は、ふぅっと一息ついて身体から力を抜く。
そうすれば私の身体を覆っていた魔力も、空気に溶けるように霧散していった。
「穂花ちゃーんっ!!」
そんな私の元へ向かって、大声で名前を呼びながら凛子が大急ぎで駆け寄ってくる。
そのままの勢いで私に抱きついてきた彼女は、ぎゅっと私の身体を強く抱きしめながらワンワンと泣き始めてしまった。
「ふえぇぇ。穂花ちゃん、死んじゃったかと思って心配したよぉっ!! 生きてて良かったあぁっ!!」
「ふふっ、大丈夫よ。私はあの程度で死んだりしないから」
正直言って、自分でもどうやれば死ぬのか分からないくらい、私の修復スキルはいろいろと規格外だという自覚はある。
たぶん心臓と脳を一瞬のズレもなく同時に潰されれば死ぬんだと思うけど、それだって試したことはないから分からない。
まぁ、試したくもないんだけど。
「私のことなんかより、凛子の方も凄いじゃない。まさか私より先に勝負がつくとは思ってなかったわ。成長したわね」
負けることはないと思っていたけど、私が想像していたよりも凛子はずっと強くなっていたみたいだ。
素直な賞賛とともに彼女の頭を撫でると、いまだ私に抱きついたままの凛子は嬉しそうな表情を浮かべながら笑う。
「えへへ、褒められちゃった。まぁ、私だって常に成長してるからね!」
やっと私から離れてえっへんと胸を張った凛子は、だけどその視線を私の身体に向けるとすぐに焦ったような表情を浮かべる。
「って、穂花ちゃん!? 服っ! 服着てないよっ!!」
「服? あぁ、そう言えば忘れてたわ」
ともかく再生スピードを重視したせいで、服まで再生させるのをすっかり忘れていた。
「まぁ、別に見られて困るようなものじゃないし大丈夫でしょ。ここに居るのは凛子だけだし」
「そっかぁ、私だけだし大丈夫かぁ……。って、なるわけないでしょ! せめて隠して!!」
「はいはい、分かったわよ。凛子ってば、小春さんみたいなこと言うんだから」
「この状況だったら、誰だって同じこと言うに決まってるよぉ……」
呆れたような困惑したような凛子に苦笑を浮かべながら、私はその辺に落ちている制服の切れ端を拾いあげる。
そのままぱぱっと修復スキルで服を作り直すと、これ以上凛子が怒らないうちにさっと着替えてしまう。
「……下着はないけど、まぁ別に問題ないか。見えない見えない」
「問題だらけだってば……」
結局そのあと、凛子のお小言を散々に食らいながら下着まで一式を修復することになるのだった。