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6.透視された側の気分

 家に帰ってきたらさっきまでのことが夢のように思えてくる。

 普段のように何らかの理由があって声をかけたのではなく、手伝いを申し出て受け入れてもらえた。

 好きなことについて話して返事をもらえたのはすごく嬉しい。

 そうだ、魔法について情報を集めて次回の話題に出来るようにしないと。


 すぐにスマホを起動して魔法について情報を集める。

 とりあえず話題になっているのは消費MP15未満の魔法ばかりだ。

 検証のしやすさと効果の高さのバランスでそれぐらいになるんだろう。


 [炎]がそうだったようにどの国の人が作った魔法でも使えるらしい。

 まあ名前や説明文も自動翻訳されているのでどの国の人とか全然意識しないけど。

 ぶっちゃけその自動翻訳の魔法が欲しい。


「そういえば作る時に消費MP見れるって言ってたな」


 翔から聞いた話だと魔法の効果を設定すると自動で消費MPが設定されるらしい。

 試しに世界書を出して理の作成ページを開く。


「まずは魔法の効果の入力か」


 会話の自動翻訳と入れて決定する。

 すると名称の入力画面に移った。


「はぁ!? 高すぎだろ」


 希望通り自動翻訳になっているけど消費MPが10000になっている。

 こんなのいつになったら使えるんだよ。


「あ、効果時間が一日になってる」


 何も入力しないと勝手に効果時間が設定されるのか。

 もしかして短くすれば消費MPも少なくなる?

 普通に考えればその可能性は高いし試しにやってみよう。


「おお、かなり減ったぞ」


 効果を一時間にすると消費MPが2000まで落ちた。

 単純に比例するわけじゃないけど相関はあるって感じだな。


「ならもっと短くすればどうなるかな?」


 効果を一分にすると消費MP1000まで落ちた。

 これ以上短くしても変化がないのでこれが最低値らしい。


 さすがに一分だと短すぎるし一時間が理想かな。

 ただどういう風に自動翻訳されるんだろう?

 理想はリアルタイムに母国語変換される感じだけど直訳みたいな変換だったり世界書に文字で出たりするのかもしれない。


「効果の欄にリアルタイムで母国語に変換って追加してみるか」


 結果は消費MP変わらずで、少なくても世界書に文字で出るタイプではないらしい。

 直訳みたいな変換かどうかは使ってみないと分からないのでどうしようもない。


「あ、英語と日本語とかの変換とかで指定したらどうだろう?」


 結果は消費MPが900になった。

 消費MPは下がるものの使い勝手は悪くなる。


「アバウトに設定してもいいし細かく設定してもいいってのは素晴らしいな」


 それぞれにメリット・デメリットがあるので設定のしがいがある。

 アバウトすぎると消費MPが上がりすぎるし細かく入力しすぎると使い勝手が悪い。

 好みを選んで設定できるってのが面白いよな。


「想像するだけで楽しいなぁ」

「お兄ちゃん、さっきから独り言がうるさいんだけど?」

「ああ、ごめん」

「面白い魔法出来たら教えて」

「けっこう詳しく聞いてるな!?」


 隣の部屋との壁は薄いのでだいたい丸聞こえだ。

 いつか彼女が出来て部屋に呼んだときは聞き耳立てられる気がする。

 いや陽菜の場合は乗り込んでくるか。


 彼女……彼女かぁ。

 ちょっと気になったのでネットで調べてみる。


「うわっ、いっぱい出てくる」


 惚れさせる魔法とか他人を洗脳する魔法が大量に出てきた。

 上手くいったとかいろいろ書き込みがあるけど本当なんだろうか。


 もし本当ならたしかに彼女は作れるだろう。

 魔法なんだから犯罪に問われることもないけどある程度節度というものがあると思う。

 俺だってエロいことはしたいけど嫌がる子に無理やりとかは嫌だ。

 エロいことしたら怒られたとかビンタされたとかで終わる程度が限界だと思う。


「特に洗脳はちょっとな……」

「お兄ちゃん、そういうのは駄目だよ」

「まだ聞いてたのかよ!?」

「せめて冗談で許せる範囲にしなよ」


 エロいことに比較的寛容な陽菜も同じ考えだったらしい。

 ただ冗談か。

 透視の魔法は冗談で済む範囲だと思ってたけど、もしかして違うのだろうか?


「じゃあさ、例えば透視する魔法で体を見られるのは冗談で済むよな?」

「相手によるよ」

「え、なら嫌いな相手だったら?」

「許さない」

「無関心な相手だったら?」

「許さない」

「怖っ、無関心でも駄目なのかよ!?」


 下着を見られるのはそこまでまずいことだったのか。

 もっと軽いことかと思ってたぞ……。


「そういうのは気づかせたら駄目なんだよ、お兄ちゃん」

「どういうこと?」

「私の裸を想像するのは自由、でも誰かに伝えたら許さない」

「想像と実際に見るのは別じゃないか?」

「誰にも伝えないなら想像と一緒だよ」


 なるほど、言われてみればたしかに区別がつかない。

 本人に確信があるかどうかだけの違いだ。


「だからやるなら気づかせないようにして一人で楽しみなよ、お兄ちゃん」

「なんでやること前提なんだよ!?」


 こういう時、陽菜は察しが良い。

 ただ既に俺が透視の魔法を使ったとまでは想像できなかったようだ。


「で、誰に使うの?」

「そんな相手いないんだけど!?」


 実際は存在するんだけど妹に言うことじゃないので誤魔化しておく。

 でも妹にはお見通しだったようだ。


「その反応や声色の変化から見て実際は存在するんだね」

「兄の理解度の高さが怖すぎる」

「生まれた時から見てるからね」

「おかしいな、見てるって言葉がホラーにしか聞こえないぞ」


 あなたの全てを把握していますって意味に聞こえる。

 それだけ察することが出来るならむしろ放っておいてくれたらいいのに。


「放っておくと好き放題するから駄目」

「そんなに好き放題しないだろ!?」

「うーん、お兄ちゃんが言いたくない相手……誰だろ?」


 俺の発言ガン無視で考え始めた。

 ただいくら察しが良いといってもさすがに顔も名前も知らない相手は特定できないだろう。


「はっ!? まさか私!?」

「なんでやねん」


思わずツッコミを入れてしまった。

何がどうなったら妹の下着を透視しようという考えになるんだよ。


「そうだね、お兄ちゃんになら魔法なしで見せてあげてもいいかな」

「そもそも風呂上がりに下着でうろついてるのに何を透視するんだよ」


 まったく隠すことなく堂々としているのでエロさの欠片もない。

 まあうちの家は全員そんな感じだけど。

 小さいころ翔の家に泊まりに行った時、風呂上りに全裸で脱衣所から出たら怒られたのが衝撃だった。

 うちの父さんと母さんなんて全裸で脱衣所から出てくるどころか、全裸でリビングに来るんだよな。


「なるほど、お兄ちゃんの想像する透視は下着までと」

「え、あ」

「普通は裸を想像するんだよ」

「兄に裸見せようとするんじゃないよ!?」

「あははー」


 陽菜と話しているといろいろ脱線してしまう。

 ただやっぱり藤田さんに透視のことは言わないほうが良いな。

 やるだけやっておいて事後に謝ればいいというものではない気がする。

 それに二度とやりませんと言えるならともかく、俺の自制心はそこまで強くない。

 よさげな魔法を見つけたら絶対我慢できずに使うと思う。

 全年齢ハーレムアニメの主人公じゃあるまいし男子高校生が性欲を我慢できるわけがない。

 まあもちろん最低限超えてはいけないラインは守るけどね。


 この後はいろいろ調べて情報を集めたけど、どうしてもみんなに使ってもらえるような魔法が思いつかない。

 知名度0の状態で使ってもらうのってかなりきついな。

 一度人気になれば多少ましなんだろうけど。


 結局寝る寸前まで考えても何も浮かばなかった。

 さて寝る前に【対抗呪文】っと。

 あ、効果時間が上書きされるのか。

 ならまとめて使っておくとかは出来ないな。

 毎日使うとか面倒だけどしょうがない。


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