目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第21話 青鸞驚愕!いつのまにか僕が李家の花婿候補?!

 その時、重いうなり音を立てて振り下ろされた貞永娘娘の大槌は哪吒太子の火尖槍かせんそうが防いだ。


「大丈夫か、青鸞」


「は、はい、哪吒兄様」


 任務明けで疲れているのだろうに、哪吒太子は火尖槍で貞永娘娘の大槌を防いで押し返し、青鸞童子を抱きかかえて飛び下がり、素早く距離を取る。


「貞永、青鸞は巨鳥、らんの子だ。いずれ番(つがい)となる雌の和を探しにいかねばならない。貞永の花婿にはなれないよ」


「あら、そんなのわかりませんわ!私だって成長したら媽媽おかあさまみたいな美しく立派な淑女になりますもの。きっと青鸞さまも私を選んでくださいますわ。ね、青鸞様」


「いや、僕は……」


 おままごとの話じゃなかったのか、と青鸞童子は混乱した。


 哪吒太子はため息をついてやれやれと頭を掻いている。


「とにかく今それを決める必要はないだろう。まだ青鸞は雛鳥のようなものだ」


 貞永娘娘から青鸞童子を庇うように立ち、哪吒太子が言う。


「三哥(おにいさま)も青鸞様を狙っていますのね……ならば勝負ですわ!」


「いや狙うとかそう言うことではなくだな貞永……」


「いいですわ。三哥おにいさまは青鸞様と組んでくださいまし。私は爸爸おとうさまと組みますから」


「いや貞永、組むとかじゃなくて……」


 どうして自宅の庭で戦闘が始まっているんだと哪吒太子は青鸞童子に尋ねるが、青鸞童子にも意味がわからないまま始まったので首を振るしかない。


「ちょうどいい。哪吒、苦戦した先の戦闘での反省会と行こうじゃないか。覚悟せよ」


「あ?偉そうにクソ親父が!あれはてめえが俺の邪魔したからだろうが!テメェの邪魔がなければ俺の火尖槍であんな雑魚悪鬼ざこあっき速攻で消し炭にできたんだよ!」


 父親に対しては導火線が極端に短い哪吒太子は声を荒らげる。


哪哪なたちゃん、ちゃんと爸爸パパと呼びなさい。あとワシは普通に偉いしクソではない。その性根、蓮の精となっても変わらぬか。叩き直してくれるわ!」


「るせぇボケが!ちゃんつけて呼ぶんじゃねえよ!あと口がクッセェんだよ!」


「臭くない!爸爸はちゃんと歯磨きの後歯間清掃してその上で洗口もしてるもん!」


「加齢臭ってしってる?あークッセェクッセェ!」


 哪吒太子は鼻を摘んで手を振る。


哪哪なたちゃん、もう、爸爸パパ怒るよ!」


「るせぇボケ、黙れクソが!」


「もう、三哥おにいさまったらお言葉が過ぎますわ!爸爸おとうさまが可哀想……」


貞貞ていちゃん爸爸パパ臭くないよね?いい匂いだよね?」


 顔を近づけて尋ねる托塔李天王に、思わず貞永娘娘は顔を背ける。


「……ええ、大丈夫ですわ!」


貞貞ていちゃん、その間は何?なんでこっち向かないの?!」


「ほーらやっぱりクセェんだ!貞永も臭いって言ってんぞクソ親父〜」


三哥おにいさま何を……私はくさいだなんて言っていませんわ!」


「態度に出てるんだよ!爸爸パパクサーイやめて〜近寄らないで〜って」


 哪吒太子は鼻を摘んで手をひらひらと揺らしながら言う。


「だから、言っていませんわ!三哥おにいさまひどいです!」


「もう、爸爸パパ怒った!哪哪なたちゃん爸爸パパ許さないんだからね!」


 右足をダンっと踏み鳴らし托塔李天王は玲瓏塔を開く。


「えええ、何で……?」


 哪吒太子がこの戦いを止めてくれると思っていた青鸞童子は、すがるように吉祥仙女を見た。


 青鸞童子の視線に気づいた吉祥仙女はにっこり笑った。


「あぁ青鸞殿、ご安心ください。怪我をしても大丈夫ですよ。私が如意宝珠で薬を作りますからね」


「と、止めてくださらないのですかっ!?」


「あらそうね、危ないわね。哪吒、火はダメよ火は」


「そうじゃなくて……!」


 草花が燃えてしまうからね、という吉祥仙女に、青鸞童子は白目を剥く。


「わかっていますよ、母上……!」


 母親には素直に従う哪吒太子は火尖槍かせんそうをしまい、金の腕輪うでわを外した。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?