それに加えて聞こえてくるこの騒音。
ガチャガチャと金属が触れ合う音が
「いったい何なのだこれは!やかましいな……!」
人間や神仙にとって涼やかな錫杖の音色だが、魔の存在にとってこの上なく不快な音色なのだろう。
「隙あり!」
そんな
耳を塞いでいた両手を縛られ、上へと上げた状態で拘束される。
「ぐあああっ!」
抑えがなくなり耳をつんざく金属音に、
あまりの苦しさに両目両耳からどす黒い血を流すほどだ。
「おのれ……!」
金属音に混じって途切れ途切れに聞こえてくる、あの宿敵にも似た
(あの猿が何かしたのか?
「そりゃ!」
「くっ!」
苦しみと思考で魔羅は完全に油断していた。
いつのまにか近づいていた普賢菩薩に気づかなかった魔羅は、すんでのところで
チリ、と音がして、その剣は
「っ、この……!」
追いかけようとしたが、今度は准胝観音が放った炎の矢が雨のように降り注ぎ、身動きが取れなくなる。
「准胝の
普賢菩薩が観音菩薩に言うと、観音菩薩は苦虫を噛み潰したような顔をした。
「
観音菩薩を挟んで反対側にいる文殊菩薩も
「サクッと奮いましょー!」
普賢菩薩は呉鉤剣を構え直し、再び
「問題はどうやって元始天尊から
「うが……がああ、あああああっ!」
観音菩薩が言ったと同時に、半狂乱の
宝貝がそれぞれの手元に突然戻り、その衝撃に文殊菩薩と観音菩薩が尻餅をつく。
「ひぇっ、嘘っ!!」
自由の身になった
体躯はそんなに大きくないはずなのに、纏うその気配は普賢菩薩自身の何倍にも感じる。
まるで蛇に睨まれたカエルのように、普賢菩薩は動けなくなった。
そんな気迫をまざまざと浴びせられ、普賢菩薩は気を失いそうになっていた。
「普賢!」
「間に合わない!」
文殊菩薩と観音菩薩は、慌てて体勢を整えもう一度宝貝を放とうとするが、普賢菩薩と
「妾が行く!」
准胝観音が跳躍し、普賢菩薩を庇おうと両者の間に出る。
「まずは二匹……!」
躍り出た准胝観音に手を伸ばしながらニタリと
准胝観音は全ての腕を戦闘体制に構えた。
「うぉおおおおおお!」
自身を奮い立たせるため、准胝観音は腹の底から吼えた。
准胝観音も
全ての悪意、悪しきものの王である
平然と対峙できるのはおそらく釈迦如来くらいだろう。
「
突然、鎮元大仙の唱える声が聞こえたと思ったら、准胝観音と普賢菩薩は何かに包まれ
「どこへ行った!」
獲物を見失った
「うがあああああっ!」
そして咆哮し、再び瘴気を撒き散らした。
今度は黒大蛇が三体現れた。
「