「どうした、その程度か?大したことないな」
「血を吹き出し鱗をひび割らせながら何を言う!」
(ああそうだ、もっと怒れ、恨め、
「悟浄、もうやめろ!おちつけ!」
孫悟空が沙悟浄を
だが沙悟浄は孫悟空を振り解き、降妖宝杖を薙ぎ、突き、斬る。
「邪魔をするな!みろ悟空、もうすぐこいつを消し去れる!!はははは!!」
ひび割れた
その表情は
「崑崙は、天界は俺が守ってきたんだ!捲簾として、こいつはたおさねばならない!」
「お前、もう捲簾大将じゃなくなっただろ!」
「ああそうだ!だが玉皇大帝への忠誠は消えぬ!それに、敬愛するお師匠さまの目に、こいつを、このおぞましいこいつの姿を映させるわけにはいかない!!」
違うか?!ともうほぼ絶叫しながら沙悟浄はしがみつく孫悟空に構わず降妖宝杖を振り回す。
(いやお前も充分おぞましいわ!)
孫悟空は血まみれの沙悟浄にそんなことを思いつつも口に出さず、沙悟浄を何とか止めようとする。
だがあまりに激しいその動き、何度つかみかかってもに振り解かれ、突き飛ばされてしまう。
「っくそ、いい加減にしろ!」
孫悟空は沙悟浄の懐に入り込むと、その胸ぐらを掴み、ぐいと引き寄せた。
「お前言っただろ!
「──っ!」
孫悟空の言葉に沙悟浄の動きが止まった。
むせかえるような瘴気と、動物や人のそれとは違う強烈な臭い。
戻しそうになるほどの
「玉龍!」
孫悟空は一息で玉龍の名を叫ぶ。
彼ならば孫悟空の意図を汲み取れるだろう。
「如意宝珠よ、ゴジョーとハッカイオジさんを正気に戻して!
玉龍は如意宝珠を掲げ、願いを込めて呪文を唱えた。
八爪金龍から教わった、如意宝珠の力を高める呪文だ。
玉龍の如意宝珠は金色の光を放ち、猪八戒と沙悟浄を包んだ。
猪八戒の虚な目に光が戻り、沙悟浄の表情もいつもの冷静なそれに戻った。
「お、俺は……」
「
「ああ……すまない、俺としたことが」
孫悟空に気をつけろと言った自身が惑わされ、沙悟浄は情けなくなった。
「いつまで乗っているのだ貴様ら、
血溜まりに倒れていた
「おっと!」
急に弾かれた孫悟空と沙悟浄は、駆けてきた猪八戒に抱き止められた。
「二人とも大丈夫か?すまなかったな、なんかオレもおかしくなっていたみたいで」
「全くだぜ!お前ら二人とも狂ったかと思ったんだからな」
「悟空、お前は平気なのか?」
「平気なもんか!昔じいちゃんからもらってたお守りがなかったらオレも狂ってたかもしれねえ」
そう言って孫悟空は胸元を押さえた。
そこにお守りがあるのだろう。猪八戒と沙悟浄は、ほっとして顔を見合わせた。
「三人とも、如意宝珠の守りで瘴気に惑わされないようにしたよ!でもこれはあまり長く持たないから、早く仕留めてよね!」
玉龍が叫ぶ。
「仕留めるだと?」
玉龍の言葉に
「ヒッ!」
「ははははは!」
そして
「この
「何笑ってんだよテメェ!」
孫悟空の問いに
そして黄色に赤の目を細め、クツクツと心底おかしそうに笑いを堪えながら口を開いた。
「もう遅い!全て遅いんだよ!!貴様らの恐怖、怒り、嘆き、
そう言って
ひび割れた
「ぐっ!」
玉龍の結界のおかげでまた操られることはないが、見ていて気持ちのいいものではない。