玄奘は無表情のまま、錫杖を地に突いた。
シャン、と涼やかな音が波紋のように広がった。
玄奘は淡々と呪文を唱え、錫杖をついていく。
玄奘が突く錫杖に反応して、波紋のように広がる光は切れ目なくあたりに広がっていく。
「ぐっ、なんだ、これは……!」
その光は
玄奘の反応は、
普通であれば
(こいつ……?!)
玄奘の目は
(な、なんだコイツ)
(この余を圧倒するだと……?)
玄奘の呪文を唱える声がだんだんと早まり、錫杖をつく音も拍子の速度を上げる。
錫杖から出る浄化の光も次第に強くなり、
「人間如きに、この余が……?!」
(そんなわけがない。おかしい。人の身で余の魅了が効かぬものがいるはずがない。いるとすれば──……!まさか!)
「まさか貴様……!」
「ようやく気づいたか」
正確には「玄奘の中に入ったもの」が。
そして次の瞬間、その玄奘の体がまばゆい光を放った。
その光が触れた瞬間、観音菩薩たちの金縛りが解けた。
「あれ、なんか怖くない……
普賢菩薩が准胝観音にいうと、准胝観音は不敵な笑みをうかべ、頷いた。
「ああ、やはりいらしてくださったか……!」
准胝観音が視線を向けると、観音菩薩も察した様子で、姉に返答するように頷く。
「勝てる。勝てますよ、
普賢菩薩は浮かれて呉鉤剣を握りしめて言った。
「ああ、あとは機を待つばかり」
准胝観音は迅る普賢菩薩を静止し、
「──っこの光はやはり……!」
観音菩薩たちもまた、その場に座し、合掌した。
「釈迦……貴様か!」
苦々しげにいう
「おまえがくるのならばこちらも私が出ねばなるまい」
そう言って釈迦如来は錫杖を置くと、おもむろに坐禅を組み、左手を膝の上に置き、右手の指先を床に向けた。
釈迦如来が悟りを開いた時、
「
「ぐっ!」
釈迦の淡々とした命令に、まばゆい光が波状の光線となって発された。
その光の波は凄まじい勢いで
だがその光は
「ここにきたのがお前の運の尽きよ。ああ、悪魔に運などないか。ふふ、──
「おのれ、おのれ釈迦め──ッ!!!」
笑みを消した釈迦如来がさらに力をこめると、
腕を全て失い、身を守る術をなくした
「悟空、
観音菩薩が叫んだ。
「核?つっても、そんなのどこに……」
崩れかけた
人ならば心の臓だろうが、
その時、何かを見つけたらしい猪八戒が沙悟浄の肩を叩きどこかを指差した。
沙悟浄も理解したのか、猪八戒に頷き返す。
「オレたちが
「おう!」
猪八戒と沙悟浄は示し合わせて
釈迦如来の放つ後光のおかげか、先ほどまであった恐怖心は消え、身動きも軽い。
その時、崩れ去ったはずの
そして、再生した腕が二人を捉えた。
「ここまできて、消されてたまるか!」
「往生際が悪いですよ、
「だからこその
「ですがここは仙郷。あなたのいるべき場所ではありませんよ」
「綺麗事を!ここも余の支配のうちとすれば良いだけよ!」
「……」
「おのれ釈迦ぁあああ!!」
丹田は力の源にもなる場所だと言われている。
猪八戒が見つけた
猪八戒と沙悟浄の武器では貫けられなかったその核は、
「悟空!」
猪八戒と沙悟浄が叫ぶ。
「おう!」
孫悟空は威勢よく返事をすると、如意金箍棒を振りかぶり、