沙悟浄は足の震えを必死に抑え、踏ん張り、降妖宝杖を振るうが
「それ右。次は上だ」
「クックック、当たらぬのう」
「だあああああっ!」
沙悟浄はただ叫びながら武器を振るった。
それに、言葉を考え発することで押さえつけた恐怖心が名を持ち、再び沙悟浄の動きを止めてしまう、そんな気がしたからだ。
何も考えず、ひたすらに武器を振るう。
それしか恐怖心を抑える方法がなかった。
「さて、遊びはここまでだ」
「──なっ?!」
それまでニヤニヤとしていた
「悟浄!」
孫悟空と猪八戒が叫んだ。
「ぐぅっ!」
ゴォオオオオン!!
重く冷たい音があたりに響き渡る。
沙悟浄は歯を食いしばり、渾身の力を込めて降妖宝杖の柄で魔槌を受け止めた。
凄まじい重力感に、沙悟浄は膝をついた。
押し潰してくる魔槌を、沙悟浄は歯を食いしばってその圧に耐える。
「おおおおおおお!」
「があああああっ!」
それを見ていた孫悟空と猪八戒は焦った。
沙悟浄が動けるのになぜ自分たちは動けずにいるんだ、と。
(あいつのほうが俺様より後に仲間になったのに……なんであいつが動けて俺様が動けねえんだ!クソ、ビビるな俺様!)
孫悟空は震える手に力を込め、如意金箍棒を強く握った。
手のひらにジワリとした汗の感覚。
尻尾はいまだに恐怖心から下がったまま。
(それに俺様はなぜあんな気持ちの悪い奴を怖がってるんだ……見たこともないのに、わけわからねえ!)
猪八戒もまた、釘鈀を握る手に力を込め、体の震えを止めようとしていた。
(情けねえ……准胝ちゃんも見ているってのに、オレは……)
体の震えを止めることができても、その目が
敵の姿を見ることができなければ、攻撃することもできない。
(オレが怖いもの、あんな知らないものなんか怖いはずないのに……今まで怖かったことといえば……)
二人は必死に自分の経験から怖かったことを思い出していた。
「そうだ、俺様にはあんなキモいのよりももっと怖いものがある!あんなの全然怖くねえ!」
「オレだって!うぉおおおおお、悟浄ちゃんから離れろ、マーラァァァァ!!」
二人は一息に
だが。
「せいっ!」
「わっ!」
「チッ!」
猪八戒は慌てて避け、孫悟空は舌打ちして回避する。
「無駄なことと知りながら向かってくるとは、なんとも
沙悟浄を押しつぶそうとする腕の力は弱まっていない。
弟子たちの苦しむ声は玄奘にも届いていた。
(沙和尚に何が?!悟空、八戒?!)
さすがに、弟子たちの危機に玄奘の呪文を唱える声が弱まる。
それを
「さあ目を開け!その目で見よ!余の姿を!」
(私が目を開くことで皆が助かるのなら……)
「だめです!お師匠様!」
「
孫悟空と准胝観音が叫び静止する。
たが遅かった。
玄奘は目を開き、
「見たな?!余を見たなコンチャン!ははは!」
「おし……しょうさま……!」
沙悟浄が呻いた。
沙悟浄の声に玄奘が振り向く。
そして玄奘は再び
目が合うと、ニタリと