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黒幕は……?

 マリーの婚約が内定した頃、ついに元第一皇子の浮気劇の事件の全貌が明らかになった。

 元第一皇子も皇后も悪いところはもちろんあったが、裏切られ、操られていた面も判明したのだった。





「貴女、私の相談役なのに……裏切っていたのね?」


「なんのことでしょう?」


「家臣が全て話してくれたわ」


「そうなんですね。でも、証拠は何もありませんよ?」


「あと、貴女の身辺調査の結果が判明したわ」


「身辺調査……?」


「あの子の腹違いの姉なのね?」


「今更わかったんですね。私を相談役となさったときの身辺調査はザルじゃないですか!」


 開き直った相談役に対して、皇后陛下は怒りに震える。


「貴女のせいで、オズを皇位継承者から外すことになったし、マリーは傷つけるし……」


「皇后陛下のせいじゃないんですか? 私の案を実行したのは貴女じゃないですか?」


「もちろん私は悪いわよ! 貴女のあんな案に乗るなんて、どうかしていたわ!」


 相談役は精神に精通していた。皇后や家臣、はたまた元第一皇子まで、洗脳をしていたのだった。


 相談役の腹違いの妹は、皇帝陛下の浮気相手だった。初めて好きになった皇帝ひとに振られて、好きだった人から国外追放を言い渡された妹。一度も会ったことはないけど、二度と会えなくなった妹を想い、皇后をコントロールして復讐するつもりだったのだ。例え、上手くいかなくても、相談役の手法なら魔力的な証拠は一切残らない予定だった。


「貴女の妹と、貴女。ずっと手紙のやり取りをしていたのね? バレないように、魔法を避けてわざわざ鳥を使って、ね」


「そこまで調べ上げたんですか?」


「いえ。貴女の妹が“ついに復讐できたよ、お姉ちゃんに任せて”という一文に不安を覚えて、連絡してきたそうよ」


「え、そんな……」


「“私のために道を踏み外した姉に、罪を償って欲しいとお伝えください”って手紙なら受け取っているわ? ご覧になるかしら」


 そう言って皇后が差し出した一枚の紙を読み、相談役は崩れ落ちる。



“皇后陛下 姉妹でご迷惑をおかけしてしまい、誠に申し訳ございません。私にも愛する人ができ、貴女の気持ちを考えると反省する毎日でございます”



「私宛にも、初めて直接の謝罪があったのよ」

 皇后は、ぽそりとそう呟き、その声は誰の耳に届くこともなく消えていった。皇后の苦しみに一つの区切りがついたようでもあった。




 皇后と元第一皇子の犯した間違いは、覆すことはできない。しかし、人々を操っていた相談役は、こうして、黒幕として刑に服することとなったのだった。

 家臣は、帝国転覆罪となりうる余罪など、他にも山のように罪が明らかとなったため、そのまま処刑されることとなった。

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