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妄想英雄《イマジナリー・ヒーロー》
妄想英雄《イマジナリー・ヒーロー》
月亭脱兎
SF宇宙
2025年02月28日
公開日
2.9万字
連載中
——この星を救うため、黒翼を広げて降り立った謎の存在。 その名は——妄想英雄《イマジナリー・ヒーロー》。 突如、空を裂いて現れた“仮面の男”に、支配者《オーバーマインド》の将軍が声を荒げる。 「妄想が現実になるだと……!? そんなご都合主義、通用するはずがない!」 ——けれど、俺は静かに笑った。 「……俺の中二病歴を、ナメんなよ?」 これは、教室の隅で嘲笑されていた“中二病ぼっち”が、 妄想だけを武器に、神に等しい存在へ牙を剥く—— 世界の“設定”を塗り替える、最強の反逆譚。

プロローグ 思考停止という支配

 教室の窓から見える空は、いつだって灰色の光を放っていた。


 巨大な球体の要塞ネオ・オムニスフィアが、まるで月のようについて回る。


 現在の地球の為政者こと支配者オーバーマインドのシンボルだ。


 この世界では、思考停止が美徳とされた。


 放課後の教室で、級友たちはスマホを眺めていた。彼らは、ニュースアプリに表示された、


 【今日の精神エネルギー量:管理区域23-β、成長率89%】


 という見出しを見ても、眉一つ動かさない。

 ただ「へえ」「すごいね」と呟くばかりだ。


 この数字が何を意味しているのか深く考えようともせず、まるで感情を失った人形のようだった。


 俺は机に突っ伏しながら、小さく呟いた。


「くだらねぇ……」


 教室のスピーカーから、朝の放送が流れてくる。


 いつもの「忠誠ポイントのお知らせ」だ。


「本日の課題:支配者オーバーマインドへの感謝をSNSに投稿。ポイント2倍キャンペーン実施中!」──ふざけんなよ。


 スマホを握る級友たちの指が、まるで機械みたいにカタカタ動く。誰も文句ひとつ言わない。まるで、頭の中が空っぽのロボットだ。


 窓の外では、監視ドローンがブーンって不気味な音を立てて校庭を旋回してる。


 銀色のボディに赤い光がチカチカ光って、まるで俺たちを睨んでるみたいだ。

 ドローンはご丁寧に毎日、朝7時と昼12時にピッタリ現れる。


 まるで「逆らうなよ」って脅してるみたいに。


 昨日、コンビニで買った弁当のパッケージにも、「支配者オーバーマインド監修済み」のマークがデカデカと印刷されてた。


 噂じゃ、弁当の中のチップが俺たちの生活習慣を記録してるらしい。

 俺たちは家畜かよ。

 なのにだ、むしろ健康に良いからとかいって誰もそんなこと気にしてねぇ。


 街中の電光掲示板には、「服従のなかにある幸福」「無意識という平和」なんてスローガンが24時間流れ続けてる。


 大手メディアも、企業も、まるで支配者オーバーマインドの飼い犬みたいに忠実に、奴らのプロパガンダを垂れ流す。


 この世界、全部が灰色だ。


 空も、人も、未来も。誰も疑問を持たねぇ。誰も戦おうとしねぇ。


 けど、俺は違う。


 俺は、こんなクソくらえな世界を終わらせる、


 具体的な策を、何年も何年も『妄想』し続けているからな。



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