結局みんなで相談して、『グリルドサーモンクロワッサン』で落ち着きそうだ。
みんななかなかセンス良い。
わいわいと、『ズッキーニじゃなくてアスパラでも合いそう』なんて言葉に単価的にアスパラだと厳しくってだとか、『いくらで売るつもり?』なんて言葉にちょっと高いけど大体これくらい、なんて返していたら凛子ちゃんに手招きされた。
バックヤードまで呼ばれて行くと、小声の凛子ちゃんに言われちまった。
「ところで店長? カオル先輩とどうなんすか? なんか二人やけに良い感じに見えるんすけど?」
「いや、まぁ、慌てなくても、とは思ってるけど……」
「ダメっす! 慌てなきゃ!」
「そ、そんなこと言ったって――」
二人できゃいきゃい言ってたら、カオルさんたち三人が何事か話してたのが耳に届いた。
「ところでなんで『ロケット』なんすか?」
「それが店長さん教えてくれないんですよ」
「野々も聞いてたよね。あたしも面接の時に聞いたけど教えてくれなかったのよ」
ロケットベーカリーの由来について。
喜多を見習って密かに考えておいたカバーストーリーをお披露目する時が遂に来たか。
カウンターの天板に手をついて、おほんと
「その、私は小さい頃、パン屋かロケット乗りになりたかったんだ」
私のウソ話しにみんなが、へぇー、と驚きの声。
ふっ、考えといて良かったな、と思ったその時。
ゆっくりと、からーんころーんとドアベルが鳴り、みんながそちらへ視線をやると……
「喜多お兄さん!」
野々花さんが言った通り、現れたのは喜多。思ったより早く戻れたんだな。
「ばっか野郎。嘘つくなよゲンちゃん」
つかつかとカウンターに歩み寄った喜多が、電話の隣りのペン立てから一本のペン――昔
「正解はこれだろうが!」
ぐっ――こいつ、私が名付けたロケットベーカリーの由来に勘付いていたのか……
「くっ――くそっ」
墓場まで持って行こうと思っていたのに暴かれた真実。
「その通りだ……私は
そうさ、昔オマエが欲しがった鉛筆、そこから名付けたんだよ。
ドサリと、崩れ落ちる様に四つん這いになった私に呆れる声が届くものだと思ったがそんな事はなかった。
みんな暖かく笑ってくれたんだ。
そんな中、カオルさんが腰を落として屈み、私の耳元で優しく言った。
「そのネーミング、可愛くってあたしは好きですよ」
……カオルさんがそう言ってくれるならなんでも良いか。私を見詰めて優しく微笑むカオルさん。「可愛い。心から好きだ」
――あ?
あ……、あーっ! しまった!
い、今まで秘めていた……こ――心の声がうっかり……
……いや、それでも初めて恋した私の告白にしては――上出来な方――か。
ぼんっ、と顔を真っ赤に染めたカオルさんが少し躊躇いながらも、いつもの『にへら』で微笑んでくれた。
なんと言ってもカオルさんが嬉しそうに笑ってくれたんだ。それだけで最高じゃないか。