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第20話 動物園②

車の中は類の好きな幼児番組の歌がかかって、みんなで歌って楽しく、あっという間に動物園に着いた。類も道中が楽しかったらしく、降りる時に少しイヤイヤとしたが「動物園」って言葉に反応してくれて泣かずに降りてくれた。はぁーひとまずは、よかったぁ。


入口のパネル前で飯塚さんがニッコリ笑って言う。「写真撮りましょう。」

「あっ。はい。」写真‥‥‥‥もしかしたら新さんがみるのでは!‥‥‥‥‥だったら私が写るのはマズイ。

「類だけでも良いですか?」急いで言う。

「いいですよ。」スマホを類に向けて飯塚さんが言う。急いで類だけをパネルの穴が空いている所から顔を出せるように立たせる。類が飽きないようにカメラに向くように飯塚さんが気を引いてくださる。

カシャン

「良い写真。見て下さい。」飯塚さんが近づいてスマホの画面をみせてくれる。動物園の顔出しパネルに上手に顔を入れてニコニコわらったかわいいキリンになった類が写っていた。

「わぁー。かわいい。」思わず漏れる。


カシャン


「フフフ。類君がかわいいって言ってる花音さんがかわいいです。」飯塚さんがニッコリ笑う。

「えっ!もうーからかうのは、やめてくださいよ。でも、ありがとうございます。」かわいいなんて両親の事故以来、言われてなくて照れてしまう。

ほんの数秒、下を向いたやさきに類が走り出す。

「あっ。類!!待って。」

すぐに、類に追いつき咄嗟に手を繋ぐ。急に手を繋がれた事がお気に召せなかったのか‥‥‥

「イヤャャャャャー。」行き交う人達にキレイなイナバウアーを披露する。

やってしまったー。後悔しても遅い。ここから大声になると覚悟してたら‥‥‥‥‥‥‥‥‥。アレ??泣き声が止まった。

飯塚さんがしゃがんで類と話しくれている。

いつも話を聞こうとするけど‥‥‥「イヤぁァァァ。」ってなるのに‥‥‥‥今日は、ちゃんと「うん。うん。」って頷いて聞いてる。

すごぉーい。さすがプロ!って感心していると類がトコトコと目の前まで歩いてくる。

「はちってごめんしゃい。」まだ少し目に涙をためながら一生懸命、伝えてくれる。

私は、すぐに類の前にしゃがんで類の両手をやさしく握る。

「ううん。ママも急に手を捕まえてごめんね。」類の目を見て伝える。すると、繋いでた右手だけを外し

「いっしょ」っとニッコリ笑い、指を自分と私を交互にさす。

「フフフ。本当だね。2人ともごめん、いっしょだね。」


カシャン


その後も、飯塚さんのサポートで類は何度かイヤイヤを発動しそうになるが何とか耐える事ができお昼ご飯の時間になった。


飯塚さんが腕時計を見て聞いてくれる。

「花音さん、お昼はどうしますか?」

飯塚さんお弁当を食べてくれるかな?せっかく持ってきたしー聞いてみようと思い切って聞いてみた。

「あ‥‥‥‥。迷惑だったらアレなんですけど、3人分のお弁当を作ってきたんですけど、外でシートを敷いて食べるのはどうですか??」

「えっ!!良いんですか?」飯塚さんは思いのほか喜んでくれた!!

「良かった。たいした物は入ってないんですけど‥‥。」あまりに喜んでくれたので普通のお弁当だから恥ずかしい。


「わぁー。うれしいです。」

持ってきたレジャーシートを広げて3人で座る。

お弁当を広げる。

カシャ

飯塚さんがお弁当の写真を撮るのでビックリする。

「えっ!」

「あっ。すいません。美味しそうでおもわず撮っちゃいました。ダメでした??」

「全然大丈夫です。でも、たいした物が入ってないから恥ずかしぃ。」

「フフフ。美味しそうです。」飯塚さんは褒め上手みたいでフフフっと私も笑う。

「いったらきまぁーす。なっとうは??」あー納豆大好きマン。ご飯食べるまで一波乱あるかもしれないとドキドキで類に伝える。

「お弁当になっとうはないよ。」

「なっとうがいいー。」

流石にお弁当に納豆は入れないよー。

ここでも、飯塚さんが上手に誘導してくれて本格的なイヤイヤにならなくてすんだ。

「ありがとうございます。本当に助かりました。」

「プロですから!!」っと飯塚さんがキリッとしたドヤ顔するので笑ってしまう。

「アハハ。そうですよね。」

「花音さんは、もっと強く出て良いと思いますよ。周りの人に迷惑をかけるっと思うから‥‥‥変に焦りと弱さが出てるを類君に見抜かれてるのかもしれないね。ないものはないという事をはっきり伝えて、代替案を提示すれば類君はお利口だから理解できると思いますよ。」私の心理を見透かされチクッと小さく痛かった。

「代替え案ですか?」

「はい。さっきは、動物さん達が納豆の臭いキライだから、動物園では納豆を食べるのを我慢できる?そのかわりに、お家で夜に納豆ご飯たべようね。

って言ったら「あい。」って言ってたよ。類君は話せばわかる気がする。説明する時は本格的にイヤイヤってなる前に!!本格的にイヤイヤってなったら落ち着くまで何を言っても入っていかないからね。

「ほぉぉ。勉強になります。ちゃんと説明しても聞いてくれないって思い込んでいました。早めのタイミングですね。やってみます。」初めての育児で相談できる人もいなく、わからない事だらけ。今日だけで、かなり勉強になった。

「うん。気負わずね。まず、花音さんが落ち着いてです。」

「はい。」私が落ち着くか‥‥‥‥‥わかった気がする。


お昼を食べて、しばらくすると類が眠たくなり抱っこをせがむようになったので家に帰るために車に乗せてもらうことにした。

車に乗ると類はすぐに寝てしまった。類が寝た後は飯塚さんとのおしゃべりタイムになった。


「飯塚さんのおかげで楽しいお出かけになりました。ありがとうございました。イロイロ勉強にもなりました。」

「いえいえ。花音さんは頑張りすぎないようにして下さいね。困ったらいつでも相談して下さいね。」っと赤信号で止まった時に名刺を差し出される。

「‥‥‥良いんですか?」

「もちろん。」

「ありがとうございます。心強いです。」

「フフフ。そう言ってもらえるとうれしいよ。」

「花音さん‥‥‥‥ちょっと聞いて良い?イヤなら答えないで、いいからね。」飯塚さんが、ちょと真剣なトーンになったのを感じた。

「はい。」

「類君のお父さんは??」

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。」あー。父親の事か‥‥‥‥。

「あっ。ごめん。さっきのはナシで!」飯塚さんが慌てて言う。

「いや。大丈夫です。何て言えば良いのかな‥‥と考えてたんですけど、類の父親とは妊娠が発覚する前に振られたんです。」

「えっ!」すごくビックリしたように言う。

「それも、私の両親が事故で亡くなって2時間もしないうちに彼のお母様が病院に来られて言われたんです。両親が亡くなったあなたに興味がない。連絡も会いにも来るな。関わらないで‥‥って息子が言ってると‥‥‥‥‥。」

「なにそれ??」

「信じられなかったです。でも真実です。その後に妊娠に気づいたんです。」重くならないように出来る限り明るく言う。

「そうなんだね。よく頑張ったね。えらいよ。」

「ありがとうございます。誰にも話せなかったので‥‥‥聞いてもらえてよかった。」

「誰にも??」

「はい。弟の光希も事故のショックで記憶が抜け落ちてしまったので‥‥‥‥類の父親の記憶はないんです。なぜか‥‥‥‥。事故の記憶だけが抜け落ちてるって病院の先生の話なんですけどね。」

「そうなんだね。記憶が抜け落ちてるって‥‥見えないね。テレビで見る耀君は明るくて元気な少年だね。」

「はい。私達親子を養うために光希はテレビの仕事をしてるんです。申し訳ないな‥‥‥って思ってます。」

数秒の考える間があり、飯塚さんが口を開く。「う‥‥‥‥ん。申し訳ないと思ってると、頑張ってる耀君にもっと申し訳ないと思うよ僕はね‥‥‥。」

「えっ。」

「今は、ありがとうで良いんじゃないかな?耀君も花音さんと類君に助けられいる所があるよ。きっと!だからお互い、ありがとうで良いと思うよ俺はね。」前を向いて運転してくれているけど横顔で微笑んでくれているのがわかる。

「‥‥‥‥‥。そうですね。そんな風に考えられなかった。けど‥‥‥‥うん。確かにそうですね。」

「うん。はぁーい。着いたよ!!」飯塚さんが車を止める。

「ありがとうございます。」車を降りて類の方にまわる。

飯塚さんが類を車から降ろしてくれたので類を受け取る。

「類君を部屋まで連れて行こうか?」心配そうに飯塚さんが言う。

「ありがとうございます。大丈夫です。慣れてるんで全然大丈夫です。」

類を抱っこして肩に荷物を掛ける

「本当に大丈夫?」

「大丈夫です。今日は本当にありがとうございました。助かりました。」

「いえいえ。何かあってもなくても連絡して。」

「フフフ。なくても連絡して良いんですね。」

「花音さんが誰かと話したい時は連絡して。待ってるね。」

「はい。」

「じゃー。行くねー。」飯塚さんが車に乗り込み車が発進する。

車が見えなくなるまで見送った。






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