花音が荷物を肩にかけ類を抱っこしたまま見送ってくれるのを車のルームミラーで確認した。
重いだろうに、見えなくなるまで見送ってくれる花音に、なぜか胸をつかまれた。今日、1日で花音がどんなに良い子なのかがわかった。あんな良い子はそういない。それなのに新のヤツ‥‥‥‥!!
昨日の時点で花音は、新の元彼女である事。類君は新の子である確率が高い事。2人を取り戻したい事それに協力してほしい事は新から伝えられいて協力するつもりだった。
ただ、花音の話を聞いたら新を3発ぐらい殴りたくなって、新の会社に車を走らせていた。
花音が話してくれた事は全て本当だと確信している。だって花音が嘘を言う必要がないからだ。
今日まで誰にも話せずに1人抱えて類君を育ててきたんだろなと考えると新への怒りはより増してくる。3発では気がすまないな‥‥‥‥。そんな思いが巡っていると新の会社がみえてきた。会社がどんどん大きく見えるようになるのと比例して怒りもどんどん大きくなっていく。新の会社の駐車場に入り車をとめる。ハンドルを握ったまま大きく1回、深呼吸をする。このまま怒りを表に出したままだと受け付けを突破できないだろうから、いつもの笑顔に戻るように最大限の努力をした。何とか自然な笑顔が出たので車を降りる。怒りに身を任せて思いっきりドアを閉めてしまい、さっきの深呼吸からの笑顔が台無しになったが、受け付けは作った張り付いたような笑顔で突破できた。
一階まで誠也が迎えに来るとの事で一階の受け付けで待たされる。
「よっ!お疲れ!報告にわざわざ寄ってくれたん?」
手をあげて誠也が近づいてくる。
「あー。新を3発殴りにきた。」右手に拳を作り誠也に見せながら言う。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥。何か聞き出せたんやな??」意味深に聞いてくる。質問には敢えて答えなかった。
「とりあえず、新の部屋に連れて行ってくれ。」
「わかった。」誠也が真剣な顔で答える。
2人で無言でエレベーターに乗り、そのまま副社長室に入る。
殴られるなんて思ってもいない新が椅子から立ち上がり手をあげて「今日は急に悪かったな。助かった、ありがとな。」っと言いながら近づいてくる。
副社長様の顔は殴れないので腹をボスっと一発殴る。
「ウッ‥‥‥。お前!!」腹を押さえながらコッチを睨む。でも、なぜ殴られたか察している様子だ。
「誰かが花音にした事で俺は何もしてない。」
わかり切った事を言う新にまた、腹が立つ。
「あぁ。わかってる。」新を睨みつける。
「はぁ?わかってるなら殴るなよ。」
ボスっともう一発、腹を殴る。
「オェっ」新が咳込む。
「お前、分かってなさすぎやろ!」
新は何も言わずに睨んでくる。
「何もしてない。なぜ何もしてやらなかったんだ??」
「‥‥‥‥‥‥。」新は悔しさを噛み締めているような表情で何も言わずに項垂れている。
本当は、もう一発殴りたかったが新の表情を見て最後の一発が殴れなかった。
「はぁ~。もういいわ。本当はあと一発殴りたかったけど‥‥‥‥」っと言うと新が顔あげて睨んでくる。
「花音ちゃんの分と類君の分と耀君の分。あっ!あと一発じゃない。あと2発やったわ。」ニコリと笑って言うと‥‥‥‥
「はぁァァァ?」って新がニヤつきながらソファーに座る。
「俺の分も殴りたい。」ニヤッと、笑い新を見る。
「あっ。俺の分も一発殴らせて!」っと誠也も参加してくる。
「辞めてくれ。2発で効いてる。十分わかってる。」下を向いたまま新が答える。
俺も誠也も新と向かう合う形でソファーに座る。