ショックを受けてる場合じゃない。まずは、花音が思ってるだろう誤解を解くのが先決だ。
「花音。」もう一度、名前を呼ぶ。少し間があって「はい。」っと小さい声だったが返事が聞こえた。花音の声だ。それだけで、目に涙が溜まってきてるのがわかる。
「大丈夫。君から類を奪ったりしない。絶対にしない。約束する。」
花音の目を見て話す。
「‥‥‥‥‥‥。だったら‥‥‥どうして?」
花音が類を抱きかかえて言う。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。」
説明したいが‥‥‥‥何て言えば良いのか言葉が出てこない。何か言わないと‥‥‥‥花音が去っていくかもしれない。焦れば焦るほど言葉が出ない。そのかわりに目から涙が流れる。
花音が俺の涙を見てビックリしているのがわかる。
「‥‥‥‥あら‥たさん‥?」
花音が俺の名前を呼んだ。もう、呼ばれる事はないと思っていたのに‥‥‥‥‥‥。そう思うと涙は止まらない。
「‥‥‥‥花音。お願いがある。俺の話を聞いて欲しい。」
「‥‥‥‥‥‥。」時間にして数分だったが俺には数時間にも思えた。
「はなし‥‥‥‥ですか?」
「あぁ。ゆっくり話せる店を予約してある。勿論、類も一緒に。類を奪ったり今の生活を壊したりはしない。約束する。だから‥‥‥‥お願いします。」頭を下げる。
頭を下げる行動に花音は驚き焦られせてしまった。
「えっ。新さん。顔を上げて下さい。困ります。」
それでも、俺は頭を下げたままだった。
「分かりました。行きます。」
「卑怯な事をしてごめん。それでも花音に話を聞いて欲しい。」
「‥‥‥‥‥‥。分かりました。ただ、光希が14時には帰ってくるので、それまでには私達も家にいないといけないです」
「わかった。必ずそれまでには家に送るよ。」
涙を手で拭ってから、類に話かける。
「こんにちは。類!」
類は花音の胸に顔を押し付けて俺を見ない。
それでも、間近で見る類に、また目に涙がこみ上げてくる。
ゆっくり類の後頭部を撫ぜる。
「車を近くに停めているから俺の車で行こう。良い?」
「‥‥‥類のチャイルドシートはついてないですよね??」
右手を自分の額に当てて空をみる。
「チャイルドシートか‥‥‥‥全然‥‥気がつかなかった。ごめん。」
「いいえ。タクシー呼びましょうか?」
「タクシーはチャイルドシートはいらないのか??」
「はい。義務付けはないのですか安心のために、いつもチャイルドシートがついてるタクシーを利用してます。」
「へぇー。そんなタクシーがあるのか。タクシー呼んで欲しい。お願いする。」
「はい。」
花音がタクシー会社に電話してる間に誠也にメッセージを送る。今から3人で紫陽花に向かうから店に連絡を入れて欲しい事と、チャイルドシートが付いていないからタクシーで向かうこと、俺の車にチャイルドシートをつけて紫陽花の駐車場に停めておいて欲しいとを伝える。
誠也からすぐに「了解」っと返信がきた。これで帰りは送れるな。