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第26話 再会③

タクシーの中では3人とも緊張していたのもあるし、類と花音が後部座席で俺が助手席に座ったのもあるし‥‥‥で会話らしい会話はなかった。

花音が口を開いたのは、俺が運転手に行き先を「紫陽花」っと告げた時に「えっ‥‥‥‥」っと驚いた声を出した時。

それから、「どうした?」と聞くと「あ‥‥‥私と類の服装がこんなんですけど‥‥‥大丈夫でしょうか??」

っと言った時。

その後に「特別室だから、入り口も一般とは別で誰にも会わないようになってるから大丈夫だ。」っと俺が答えた後に「そうなんですね。」って言った時の3回だけだった。

イヤイヤ期の類も母親の緊張を汲み取っているのか大人しく座っていた。

俺は‥‥‥何をどう説明したらわかってもらえるのか考えるが‥‥‥‥結局、店に着いても答えはでなかった。


部屋に通されると料亭紫陽花では見たことない子供のオモチャが準備されていた。

「女将。お気遣いありがとうございます。」

っと俺が伝えると花音も「息子の好きそうなオモチャばかりです。ありがとうございます。」っと頭をさげる。

「とんでもございません。ご子息はアレルギーはございますか??」

「ありません。何でも食べます。」

「承知いたしました。ご準備致します。」


「うわぁ。あぶねぇー!」

咄嗟に類の頭を支える。

類はオモチャで遊びたいからか‥‥‥‥花音の抱っこから、降ろせーっといわんばかりに、見事なイナバウワーを見せた。初めてみた俺は落ちるっと思い支えたが‥‥‥‥いつもの事なのか花音は落ち着いて類を降ろし類の両手を握って目を見て「類。降りたい時は、お口で『降りたいよ。』って知らせてね。さっきみたいに、ひっくり返ると‥‥‥頭から落ちちゃって頭から血が出ちゃうよ。イタイよ。分かった?」

っと、優しく諭すが‥‥‥‥‥‥‥

『イ〜ヤ〜。イヤイヤイヤイヤイヤイヤ。』っと類が足をバタバタしだした。

おぉーコレが魔のイヤイヤ期か!!っと感心していたが、パッと花音を見ると焦りと後悔で泣きそうになっているのに気づき花音に「大丈夫だ。ここは離れになっているから他の客はいない。」っと伝える。

大きく息を吐き、分かりやすく花音は安心する。その様子に、毎日、毎日、周りに気を使いながら魔のイヤイヤ期と1人で闘っているんだなと申し訳なさと、やるせない想いのような何とも言えない感情が芽生えた。

怪獣のようにイヤイヤ言ってる類に近づいて話してみる。

「類。オモチャで遊ぼうか?」

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。」

「類は何のオモチャが好きだ?パ‥‥‥‥俺は車が好きだな。」

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥。るいも‥‥‥‥くぅるまぁ‥‥‥‥‥。」

「一緒だな。」類の頭を撫ぜてオモチャに誘導した。

「すいません。」花音が小さい声で言う。

「全然‥‥‥。大丈夫だ。キレイなイナバウワーだったな。」笑って花音を見ると‥‥‥少しだけ口角があがった。再会して初めて表情が緩んだ。

少しだけ空気がかわった今がチャンスだ。


「花音。全て言い訳になってしまうが‥‥‥‥‥俺は‥‥‥3年前に義理の母から、いきなり海外出張を命じられた。その後に、花音が好きな人がいるから婚約を破棄にしてほしい。好きな人と結婚するから2度と会いたくない。っと言いに来たと聞かされた。その時は義理母の策だと気づかずに花音を恨んでいたよ。花音は1人で類を産んで育ててくれてたのに‥‥‥‥‥俺は‥‥俺は‥‥‥ごめん。謝って許される事じゃないと分かってる‥‥‥‥けど、ごめん。」頭を下げると目から涙がボタボタこぼれ落ちた。

パタパタパタパタと類が駆け寄ってくる。

しまった‥‥‥‥恐がらせたか??涙を止めて顔をあげて類に笑いかけないと‥‥‥っと思っても涙は止まらないクッソー。

すると‥‥‥下げた頭を小さい小さい手に撫ぜられた。

「パパ、イタイイタイ?だいじょうぶ?」類が俺の顔を覗き込む。ビックリして涙が止まった。パパ?花音の方に視線を向けた。



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