ゴオオオオオオオオオン!!!
人を起こす点では最良かもしれないけれど、気分は最悪の目覚まし時計に起こされた。私はもちろん、リュシェも目覚まし時計など持っているはずもなく、朝っぱらから戦闘態勢に入る羽目になった。
けれど、洞窟には魔物や魔族はいなかったのでナイフを片手に洞窟の外の様子を見に行く。
「――
洞窟の外ではリュシェが魔法の練習をしていた。爆音の正体はわかったので一安心だが、洞窟の外ではいつ襲われるかわからないのでまだナイフはしまわない。
「――デトネ……ノアじゃないか!起きたんなら一言言えよ!」
呪文もあと少しなのに、私に気づいたとたん話しかけてくる。最後までやり切ればいいのに、雑だな。朝から練習してて少し尊敬してたのに、台無しだよ……!
わかった。私が昨日無性にリュシェに突っかかりたくなった理由。弟に似てるんだ。生真面目だけど、どこか雑で、優しい弟に。正義感が強いところも似ている。
「なに笑ってっるんだよ。なにかいいことでもあったのか?」
「別に……」
確かにうれしいことはあったけど、こんなこと教えられるか。弟と似てたから突っかかりたくなってしまったなんて恥ずかしすぎる。
「おいおい、つれないな~。教えてくれたっていいじゃないか」
「ダメ!あんただけは絶っっっっ対ダメ!」
「まあいいや。さてと、朝飯だーーー!」
こういうところも弟と似て……急に叫ばれて背筋が伸びてしまった。
「耳元でそんな大きい声出さないでよ!」
「背筋が伸びてよかったじゃねえか!猫みたいだったぞ」
リュシェはそう言ってケラケラ笑いだした。元幻魔騎士団の一員だから少し怖かったけれど、リュシェ自体は気さくでいい人なんだろう。弟と似てるんだから当然か。
「ところで、食料何か持ってるの?今日は気分がいいから、なんか作ってあげるわ」
「食べ物は持ってないぞ。ノアこそ何か持ってないのか?」
ん?何も持ってないの?朝ご飯って何を食べるつもりなのだろう。それに、私が持ってたら一緒に食べようとしてるのか?
「私も何も持ってないわよ。それに、仮に持ってたとしても何もあげないわよ!」
「魔力があれば死なないといっても、腹が減っては戦ができないぞ!なにか食べさせてくれよ~」
「その通りだけど、ないものはないのよ!」
空腹感は邪魔だけど、魔力さえあれば死なないからいいじゃない。魔力は休んだら勝手に回復する。私はお腹が空いていても大丈夫だけど、リュシェは大丈夫じゃなさそうだ。数日間も飲まず食わずだったから仕方ないっちゃ仕方ないけど。
「ニク……ヤサイ……クダモノ……イキモノ……」
何かにとりつかれたみたいに食べ物をつぶやき始めた。てか、生き物だったら何でもいいの!?最悪の場合は私が暴走したリュシェに食われるのか……
「……狩りに行くわよ!」
「……エ?」
「朝食のために一狩り行くわよ!」