狩りをするといっても、どこで何を狩ればいいのだろう。
私たちが今いるのは荒野で、魚が取れそうな池も、動物が取れそうな森も見当たらない。魔物すらいない荒野で何を狩るのか。希望が見当たらず天を仰ぐと、そこには大きな鳥が飛んでいた。
「いいな~自由で。君がうらやましいよ」
大きな翼でどこへだって飛んで行ける。つまらない争いや競争とは関係なく。
あの鳥がうらやましい……鳥!? 動物や魚はいなくても鳥ならいるじゃないか! 魔界産のとびきりでかいのが!
「リュシェ!魔法であの鳥を打ち落とすんだ!」
「⁉食べ物じゃないかー!」
ご飯にありつける希望を見出したのか、さっきまでリュシェから出ていた謎の黒いオーラは消え、理性が返ってきた。
私を食べなくて済むように頑張って倒してほしい。
「
呪文と同時にリュシェの手から出た魔力の弾丸は数十メートル先で鳥に届かずに消えた。あの鳥はどれだけ高いところを飛んでいるのだろうか。
「メシ。マホウ……トドカナイ……マリョク……タリナイ」
希望と一緒に理性も消えてしまった。
「魔力なら私のをあげる。だから、ちゃんと当てなさいよ!」
「いいのか?せっかく回復した分がなくなるよ?」
希望を見出したのかリュシェの理性がまた戻ってきた。頼むからどっかいかないでくれ。
「食べたらどうせ回復するんだし、あんたに食われるくらいなら、魔力なんていくらでもあげるわよ!」
「俺はヒトなんて食べないぞ」
理性のある時はそりゃあ食べないだろう。だけど、さっきのオーラといい、言葉遣いといい何をしでかすかわからない。
「わかったから、早く打って!」
リュシェの肩に手を置き、魔力の流れに集中する。
私の中の魔力を……リュシェに……
「
再びリュシェの手のひらから魔弾が放たれる。
私の魔力も使って全力で魔弾を維持し続けるリュシェ。リュシェが維持できるように魔力を送り続ける私。二人の努力は何とか実り、鳥に命中した。
「あたったぜ!」
「それにしても高いところを飛んでたわね」
落ちてくる鳥を待っていると、空が急に暗くなった。何かと思って空を見上げると、オークの5倍くらいの大きさの鳥が落ちてきていた。
「リュシェ……あれ……」
「ん?なんだ……よ……」
私に言われて空を見上げたリュシェも絶句する。
というか、驚いている場合じゃないのでは? 急いで逃げないと押しつぶされる。
「
影の外に引力を発生させる魔法の球体を出す。対象は私とリュシェだけなので、鳥と一緒に引き寄せられる心配はない。
最大出力の引力に引っ張られ、何とか影の外に脱出する。
ドオオオオン!!!
轟音と強風、そして砂埃を巻き起こしながら鳥の死体が降ってきた。
あまりにも大きく、二人では食べきれない量のソレを見てつい笑ってしまった。私につられてリュシェも笑い出す。
さてと、何を作ろうか。