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ep.16 魔界②

 狩りをするといっても、どこで何を狩ればいいのだろう。


 私たちが今いるのは荒野で、魚が取れそうな池も、動物が取れそうな森も見当たらない。魔物すらいない荒野で何を狩るのか。希望が見当たらず天を仰ぐと、そこには大きな鳥が飛んでいた。


「いいな~自由で。君がうらやましいよ」


 大きな翼でどこへだって飛んで行ける。つまらない争いや競争とは関係なく。

 あの鳥がうらやましい……鳥!? 動物や魚はいなくても鳥ならいるじゃないか! 魔界産のとびきりでかいのが!


「リュシェ!魔法であの鳥を打ち落とすんだ!」


「⁉食べ物じゃないかー!」


 ご飯にありつける希望を見出したのか、さっきまでリュシェから出ていた謎の黒いオーラは消え、理性が返ってきた。

 私を食べなくて済むように頑張って倒してほしい。


魔弾マジック・バレット!」


 呪文と同時にリュシェの手から出た魔力の弾丸は数十メートル先で鳥に届かずに消えた。あの鳥はどれだけ高いところを飛んでいるのだろうか。


「メシ。マホウ……トドカナイ……マリョク……タリナイ」


 希望と一緒に理性も消えてしまった。


「魔力なら私のをあげる。だから、ちゃんと当てなさいよ!」


「いいのか?せっかく回復した分がなくなるよ?」


 希望を見出したのかリュシェの理性がまた戻ってきた。頼むからどっかいかないでくれ。


「食べたらどうせ回復するんだし、あんたに食われるくらいなら、魔力なんていくらでもあげるわよ!」


「俺はヒトなんて食べないぞ」


 理性のある時はそりゃあ食べないだろう。だけど、さっきのオーラといい、言葉遣いといい何をしでかすかわからない。


「わかったから、早く打って!」


 リュシェの肩に手を置き、魔力の流れに集中する。

 私の中の魔力を……リュシェに……


魔弾マジック・バレット!」


 再びリュシェの手のひらから魔弾が放たれる。

 私の魔力も使って全力で魔弾を維持し続けるリュシェ。リュシェが維持できるように魔力を送り続ける私。二人の努力は何とか実り、鳥に命中した。


「あたったぜ!」


「それにしても高いところを飛んでたわね」


 落ちてくる鳥を待っていると、空が急に暗くなった。何かと思って空を見上げると、オークの5倍くらいの大きさの鳥が落ちてきていた。


「リュシェ……あれ……」


「ん?なんだ……よ……」


 私に言われて空を見上げたリュシェも絶句する。

 というか、驚いている場合じゃないのでは? 急いで逃げないと押しつぶされる。


引き寄せる魔法アトラクト!」


 影の外に引力を発生させる魔法の球体を出す。対象は私とリュシェだけなので、鳥と一緒に引き寄せられる心配はない。

 最大出力の引力に引っ張られ、何とか影の外に脱出する。


 ドオオオオン!!!


 轟音と強風、そして砂埃を巻き起こしながら鳥の死体が降ってきた。

 あまりにも大きく、二人では食べきれない量のソレを見てつい笑ってしまった。私につられてリュシェも笑い出す。


 さてと、何を作ろうか。

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