調味料は一通り持っているので簡単なものなら何でも作れるはずだ。
ポーチから調味料セットを取り出すと、リュシェが怒り出した。
「食べ物持っているじゃないか! わざわざ鳥を殺す必要ないじゃないか!」
「これは調味料よ! 食べ物の代わりにはならないわ!」
塩や酢だけで口に入れたって何の味もしない。いや、味はするけど食べれるようなものじゃないだろう。
「腹に入ればなんだって同じなんだよ!」
そうだった。こいつはそんな奴だった。だけど……
「
「それも……そうか」
勝った。勝ったぞ!
いや、でも、勝って当たり前か。口喧嘩でこの
「ところで、火属性の魔法ってどれくらい使える?」
料理道具は持っていないので、丸焼きしか選択肢がなかった。
ナイフで下処理をしながらリュシェに聞く。
私は魔法は大の苦手で、固有魔法の
「固有魔法じゃないのなら全部使えるぜ。だけど、魔力がもうほとんどない」
さすが
「魔力なら私があげるから。鳥を焼いてくれない?」
「そーゆうことなら任せろ! 完璧に焼いてやるよ!」
元気だな。どこからその元気が湧いてくるのだろうか。
肩に手をやり、リュシェに魔力を流す。
「くれぐれも丸焦げにしな――」
「
魔力を渡したとたんにリュシェは魔法を使った。しかも一般魔法の中で一番強いのを。
一応注意しようとしたけれど、どうやら遅かったらしい。
黒煙を熱風が飛ばしたのち、視界に入ったのは丸焦げの鳥だった。
「……リュシェ? 何やってるの?」
「え……? あ……丸焼きだろ……?」
魔力を渡す前に注意しておくべきだった。そんなわけないと思っていても、こいつに常識は通じない。
「あんたは目の前の焦げてるの食べなさいよ」
「なっ! そんなひどいよ」
「自業自得よ」
私は焦げ切ってない部分を探して食べよう。全部焦げてたとしても、ましな部分はあるはずだ。
鳥(の形をした物)の形に添って歩いていると、予想通りましな部分が見つかった。
この鳥はとても大きかったから、反対側までは熱が伝わり切らなかったのだろう。いい感じに焼けていて、とてもおいしそうだ。
食べる部分に少し塩を振りかける。手を合わせて、
「いっただっきまーす♪」