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第10話 GURIのSNS


 食事をゆっくり取って、その後部屋へ戻るが、おそらくまだ、兄は風呂から上がっていなかった。


 早いところ、シャワーを浴びたかったが、さすがに、風呂に乱入するわけにも行かないので、部屋でごろんと床に転がった。


(あー……、本当は、今日手に入れてきたお宝を吟味してぇんだよ……)


 サティシャ受けR18本を三十冊あまり。

 早く読みたい。しかし、今、確認をすれば朝まで現実世界に戻れる自信はない。やはり、先に風呂を使うのが、正しいのだ。


「そうだ……さっきのコスの人……写真とか上げてるかも知れねぇな……」

 大雅は、もらった名刺を取りだした。QRコードが付いているのでスマートフォンで読み取る。最近は、QRコードを付けてくれるサークルが多いので、助かっている。


 程なく、SNSが立ち上がった。一応、大雅もアカウントは作ってあるSNSだ。だが、大雅自身は、何も発信するものがないので、閲覧する為のアカウントになっている。


 GURIの最新の投稿は、


『今日は、声を掛けてくれた方、ありがとうございます。

 楽しくコスできました。』


 というコメントと共に、ポーズを取ったサティシャの写真が貼られている。


(とりあえずコレはスクショするとして)


「すげー再現度だ……、四巻の表紙のポーズ……っ……」

 良いねの数も数万を超えていたし、コメントも凄い。同じように、感涙にむせび泣いている人で溢れているのだろうと思ったら、飛び込んできたのは、違う文言だった。


『加工ヤバ』


 ひゅっ、と息が詰まる。まじまじとGURIの写真を見たが、加工の痕跡はないだろう。勿論、大雅は、画像の加工について、詳しいわけではなかったが……。在ったとしても、色の調整くらいなのではないか。


「……ってか、俺は見てンだよっ!! GURIが、滅茶苦茶、挿絵そのまんまだったってのを!!!」


 一目見て、原作小説を思い出したのだ。挿絵がそのまま具現化して、歩いているような感覚だった。中身は、割と違うので、やっと、生身の人間としてそこに存在していることに納得がいったという程度だ。なので、この美しさが、加工で作られたモノではないということを、大雅は知っている。


『GURIちゃん、なんか男に絡まれてなかった? 大丈夫?』

『なんか警備員来たってヤツ……GURIちゃんだったの?』

『GURIちゃん怪我したって噂だけど……』

『心配……』


 コメントがあまりにも多すぎて追えない。


(まあ……、割と、見かけと違って、GURIは根性座ってそうなヤツだったから……)


 多分、大丈夫だとは思うが……。

 とはいいつつ、心配にはなる。


 しかし、男に絡まれていた件も、誰かに見られていたのだろう。勿論、あの会場は、人が多いから、誰にも見られないで済むと言うことはないだろうが……。とりあえず、現場の写真などを撮影されて、拡散されたら嫌だなと思う。それで、家のものにバレるのだけは御免蒙りたい。


『なんかヤクザみたいな男に絡まれてたましたよね。大丈夫ですか?』


 そういうコメントを見つけて、悲しくなってしまった。


 どう見てもヤクザだなあと、ため息しか出ない。

 ふと、新しいポストが在るようなので表示してみる。すると、表示されたのは、また、サティシャコスの写真だった。


『たしかに、絡まれましたが親切な人に助けていただいたので、問題ないです。

 怪我もしてないですから、この話は、これで終わりにして下さい。』


「おっ……も、もしかして、これ、この『親切な人』って俺か……っ?」

 だとしたら、嬉しい。それ以外に、表現がなかったのかも知れないが……。


 とりあえず、飛び上がって小躍りするほど嬉しいので、スクショして、大切に永久保存することにする。コメントは、まだ、荒れてはいなさそうだった。それにホッとしつつ、タバコを取りだして、火を付ける。


 タバコを片手に、過去のGURIのコスプレ画像を見ることにした。


 ここ最近は、『天雨』のサティシャのコスが多い。どれもこれも、クオリティが高くて、原作そのままだ。コスプレの会場で撮影しているモノもあるが、特別な場所で撮影しているものもあった。


 西洋の屋敷のような部屋では、ベッドに横たわったり、ベッドにもたれかかったり、床に這いつくばるような画像は肩より上の写真で、衣装か乱れている。化粧のせいかも知れないが、頬が上気していて、色っぽい。思わず、ドキッとして、灰が落ちそうになって、慌てて灰皿をたぐり寄せる。


「わっ……さ、さすが……BL作品……」


 サティシャの恋人、剣士のララシュトとの絡みのある画像などもある。

 ララシュトに抱き寄せられるサティシャ。誘うように、ララシュトにしがみ付くサティシャ。ベッドに押し倒されているような、シーン……。


「うわ……」

 マジか、と思うと同時に、「これ、売ってくんねェかなあ……」と思っていたら、どうやら、画集を販売しているらしい。


 販売先は、イベントではなく、通販サイトだった。


「くっ……通販サイトか……」

 大雅は、クレジットカードを持たされているが、しっかり一円単位で何に使ったか、チェックされる。


 なので、画集を買ったのが、家にバレる可能性が高い。


 同人誌の分は、現金で持っている分で購入しているので、足が付かない。オタ活にはクレジットカードをはじめとする各種決済は必須かも知れないが、まだまだ、現金で持たないと駄目な所も多い。それが、大雅には有り難い。現金の流れを押さえることは不可能だからだ。


「なにか、方法があるかも知れねぇ……」

 必死に、購入方法を探していると、プリペイド式のクレジットカードというものを発見した。どうやら、あらかじめ、空のクレジットカードにお金をチャージしておけば、クレジットカードとして使えるというモノだ。コレならば、未成年でも、クレジットカードを持つことが出来るだろうし、使いすぎなくて済む。


 思わず、「コレだっ!!」と叫んで、大雅は、拳を握りしめていた。



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